『富士山』/田口ランディ ○

田口ランディは、例によって書評に惹かれての初読みです。『富士山』に関わる4つの短編、読みやすかったです。著者は、あとがきで ~~とてもとても長い年月、日本人の心に希望を与え続けてくれた富士山。~~ (あとがきより引用) と述べています。確かに富士山って、存在感がある。別に富嶽信仰はないけど、何となく新幹線で通る時、見てしまう富士山。

<あらすじ>
富士山麓にある新興宗教団体から救出され、現実に馴染めないままコンビニでバイトを続ける青年。コンビに強盗に叩きのめされ、富士山を思い出す。物質であって物質でない、富士山を眺めながら、弱い者同士寄り添うように生きていたいと思う。 ――「青い峰」
富士山の樹海で一夜を過ごすという冒険に出た中学生達。そこで自殺者に出会い、救おうとするが抵抗され、死なれてしまった。樹海の奥から、以前自殺を見守った同級生が呼んでいる、と一人が駆け出す。行き着いた先に見えたのは、夜明けの光だった。「生きろ・・・」と。 ――「樹海」
富士山裾野のとある市にゴミ屋敷がある。其処に住むのはジャミラだ。環境課職員の僕はカウンセラーと共に、老婆の説得に当たり、ゴミを片付けることを承諾させる。が、ゴミを片付け終えたとき、ジャミラは富士山に帰っていく・・・。人間は捨てられたのだ。 ――「ジャミラ」
産婦人科看護婦の私は、安易に中絶をする17歳の少女に憎しみを覚える。水子供養に行った先で知り合った女性と富士山に登る。富士山でご来光を目にし、命の誕生を再び認識する。~~私達はみんな太陽の子供だ~~ (本文より引用) ――「ひかりの子」

4篇は「富士山」が出てくるということ以外、繋がりがない。ただ、富士山に励まされ、生きろと諭され、パワーを感じる。そんな物語たちでした。富嶽信仰がなくても、何となく気になる、富士山。

微妙に上手く生きていけない主人公達が、富士山に癒され、何とかして生きようと励まされるような物語が、ほのかに優しさを帯びていて、読んでいて気持ちが安らいだ。こういう、楽に読める文章も、いいものですね・・・。

一番気に入ったのは「樹海」かな。前向きに生きたい、と願う身としては、富士山に「生きろ」と励まされてみたい。頑張り過ぎなくていい。ただ、逃げることなく、生きろ、と。

(2007.6.28 読了)

富士山

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  • 【小説感想】富士山(田口ランディ)

    Excerpt: 田口ランディ、なんかかっこいい名前ですね。図書館で借りたい本が見つからず、ボーっと眺めていたらこの名前に惹かれました。インパクトのある表紙にも。さて、始めて読む作家さんですが、中身の方はいかほどでしょ.. Weblog: 映画+小説+家族=MyLife racked: 2009-02-26 00:01