『カルプス・アルピス』/嶽本野ばら ◎

ヤンキーちゃんとロリータちゃんで有名な?嶽本野ばらさんです。『下妻物語』は面白かったな 。『ハピネス』も。
なので、今回もロリータチックなお話を想像しておりました。
そしたら、全然違いました。でも、美しい文章は全く予想を裏切ることなく、物語を綴ってくれました。

田仲容子さんという画家の作品からインスパイアされて、6編の物語をつむぐ。あとがきによると、続き物になることは、全くの予想外だったそうです。嶽本氏の友人であった田仲容子さんは、残念ながら既にこの世にありません。田仲さんについての詳しくは、この作品のあとがきに記されていますし、物語そのものとは別のお話ですので、私はそれについては書かないことにします。

『カルプス・アルピス』は、友人の代理でプールの監視員のアルバイトをすることになった「僕」が、見事なフォームでクロールを続ける女性と出会ったことから始まる。なんと、彼女は記憶喪失。長く片思いをしていた女性に失恋してしまっていた僕は、彼女の助けになりたい、彼女の存在に救われたいと、ともに在ろうと願う。

彼女の助けになりたい、いや彼女の存在の確かさが自分を救ってくれる、と今までは世の中と上手く折り合いがつけられず、勝負に出ることの出来なかった僕が、一歩を踏み出そうとするところで、彼女の自殺未遂、自分自身の記憶喪失、と物語は大きく展開し始める。

幻想的な蒼いコヨーテとの「魂について」の会話、「友人」が実は「僕の作り出した別人格」と判るところ、あっと驚く部分も多いのだけれど、物語が数奇ではありながらも奇抜に走ることなく、心の弱かった僕が彼女との出会って、彼女を愛し自分を取り戻す、その過程が丁寧に描かれていて、とても心穏やかに読めました。

体は滅んでも、命はなくなっても、魂は残る。魂は支えあうもう一つの魂に出会ったとき、美しく発光し始める。そのことに僕と彼女が気付いたところで、物語は終わる。

「魂」や「命」の定義についてはそれぞれ考え方が違うので、嶽本氏の物語の中の説は、水無月・R的には疑問の余地があったのですが、それでも物語の美しさや穏やかな優しさがとてもよく伝わってきて、読み終えた時、とても嬉しい気持ちになりました。

最後に、今まで田仲容子さんと言う画家の事は、全く知りませんでしたが、巻頭に目次を兼ねたカラーページで6作品全部が紹介されており、印象的な色の使い方などが、とても素敵だと思いました。「蒼」は水無月・Rの好きな色です
それと、シンプルな装丁も気に入りました。一面澄みきった蒼に、タイトルと著者名が白抜きで1行。美しいなぁ・・・こういうの、好きですね。

(2007.6.15 読了)
カルプス・アルピス
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著者:嶽本野ばら出版社:小学館サイズ:単行本ページ数:131p発行年月:2003年11月この著者の新


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