『ケッヘル』上/中山可穂 ◎

『ケッヘル』上/中山可穂 ◎
中山可穂2作目です。
水無月・Rは無教養なので、モーツァルトの曲やその背景について大したことは知りません。
しかし、読み始めて少し経ってから、何故かどこかからピアノ重低音の和音(しかも短調)が響いてくるような感覚にとらわれ始め、段々胃が重くなってきました。徐々に迫り来る不安感。
コレは、何?

とある女性と激しい恋愛の末、彼女から逃げるために日本を旅立って3年、フランスのカレーの海に向かって指揮棒を振る男と出会った私・木村伽椰。その男・遠松鍵人の好意で、帰国後の居住地と仕事を得る。
その伽椰の、柳井というモーツァリティアンの客に付き添ってウィーンへ出張するという初仕事の最中、柳井氏は自殺を図る。が、伽椰はその死に不審を覚える。
遠松鍵人の出生とその特異な背景(父はモーツァルト狂の指揮者・母はその信望者であるピアニスト、そして母は半分病みながら鍵人に音楽の英才教育を施す)、母の死と父との出会い。
一旦は母の兄に引き取られるも、その実業家然とした養育に違和感を覚えていた頃、父に誘拐同然に連れ出され、西へ西へとモーツァルトの作品ナンバー『ケッヘル』の番号の列車に乗りながら、父の過去の女のところに転がり込みつつ、父のモーツァルト教育を受け続ける。しかし、病気に犯されていた父は、段々と弱っていき、死を迎える。

『ケッヘル』上巻は、ココで終わっています。伽椰の物語と、鍵人の生い立ちの物語は今のところリンクしませんが、重苦しい予感に満ちたモーツァルトの世界が展開していきます。
思わず、家に何枚かあるクラシックのCDなどをチェックしてモーツァルトの曲を調べました。何曲かありましたが、残念ながら「ケッヘル」のナンバーはわからず。曲のタイトルや物語中で説明される曲調で、物語の背景と言うか雰囲気を多少感じ取ることは出来ましたが。

ちなみに、「ケッヘル」とは、モーツァルトの作品を制作年代順に並べた、作品ナンバーのことだそうです。この「ケッヘル」を読んではじめて知りました。その番号に神の神秘を読み取ろうとした、鍵人の父の狂気、とにかく凄いです。凄まじい迫力を持って、迫ってきます。

中山可穂の初読みが『弱法師』で、そのときも熾烈な愛の物語に息苦しい思いをしたのですが、今回はその上を行く。特に鍵人の生い立ちには、鍵人の父母や鍵人のモーツァルトへの妄執が絡み付いて離れない。狂気の域に達している。下巻に入るのがこわい気持ちもあります。

(2007.6.21 読了)
ケッヘル(上)
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著者:中山可穂出版社:文藝春秋サイズ:単行本ページ数:384p発行年月:2006年06月この著者の新


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なお、この作品は■空蝉草紙■空蝉さんからご紹介いただきました。
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思慮があり、軽快ながらも端正な空蝉さんの文章、とても素晴らしいです。
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この記事へのコメント

2007年06月22日 23:55
あ、あまりにもったいないご紹介を頂き恐縮です;; 私なんぞ水無月さんの膨大な読書量と行き届いた丁寧な文章には及びも付きません。
続いて下巻、書評を楽しみにしています♪
2007年06月23日 00:07
空蝉さん、こんばんは。
コメントありがとうございます!
ただ今、下巻のほうを鋭意?読書中でございます(^^)。
お褒め頂き光栄です。今後も精進しますので、ヨロシクお願いしますね。
miyukichi
2007年06月25日 21:43
 こんばんは♪
 TB&ご訪問、どうもありがとうございました◎
 こちらからも、TBさせていただきました。

 凄まじい迫力、ほんとそうでした。
 圧倒されて、その力がすごくて、
 ページが進む速度も遅くなりがちでした。
 (けっして退屈というのではなく、
  息を止められるような感覚で)

 さて、これから下巻のレビューに向かいますね^^

 http://blog.goo.ne.jp/miyukichi_special
 
2007年06月25日 23:13
みゆきちさん、こんばんは(^^)。
TB&コメント、ありがとうございます!
下巻を読むのがこわいと言いつつ、やっぱり読んでしまい、その息詰まるような文章に緊張しどおしでした。すごい作家さんですよね♪
2007年06月26日 01:42
こんばんは!!TBできてますでしょうか?
ほんと、ドラマチックでしたよね。
芸術の業の深さ・・ガンガン響いてきましたよね。これだけの物語を書いてしまう中山さん・・凄いと思います。最近、あらすじがあまりないような物語が多いなかで、こういう正統派ドラマを読むと興奮しますよね。「嵐が丘」や「ジェーン・エア」のような物語が好きなんですが、この本も翻訳されたりしたら、いいのになと思います。
2007年06月27日 21:40
ERIさん、こんばんは(^^)。
息詰まるような物語、とても緊張感がありますよね。
「芸術の業の深さ」、そうだ、そういうことなんですね!言い表す言葉が思いつかなかったんですが、よい言葉を頂きました!ありがとうございます♪

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