『あめふらし』/長野まゆみ ◎

読み始め、あれ・・・?なんか知ってるぞ、市村…と思ったら、やはり『よろづ春夏冬中』の市村兄弟の弟じゃありませんか。あの、ちょっととぼけた、異界モノを引き寄せちゃう体質の。
市村・弟くん、今回も困った?立場に立たされるのですが、相変わらず飄々と流されていきます。私、こういうキャラクター好きだなぁ。妖物に取り囲まれて困ってるのに、なぜか天然ボケ的な運の良さ?悪さ?で、それを抜け出してくるんだけど、実は余計状況は絡まっちゃってる、みたいな。いや、実際こういう人が私のそばにいたら、とても困るんだけど、小説で読んでる分には「なんて哀れな・・・(笑)」で、微苦笑できるので。

タマシイを捕える『あめふらし』・橘河が社長で、蛻(もぬけ)を次々と乗り換えていた仲村が番頭、橘河にタマシイを捕えられた市村がアルバイトという「ウヅマキ商會」は何でも屋のようである。、何でも屋仕事をしながら、彼岸と此岸を行ったり来たり、時間を越えてみたり。とにかく不穏で怪しげな仕事はの数々。橘河や中村は事態を承知しているようなのに、市村(弟)は全然わからないまま仕事に投げ込まれ、おたおたしてるうちに嫁を取らされ(しかもヒトではなさそう)、ヒトならぬものに気絶させられたり、言い寄られたり。

挙句の果てに、市村(弟・岬)は兄が昔拾ったタマシイが蛻に乗り移ったものらしいことが分かり、「市村(弟)、人間じゃなかったんだ~。どおりで、やたら妖物に好まれたり引き回されたりするわけだ。」なんて納得がいきました。さらに、市村(兄・峠)も事故にあった時死にかけ、黒珍(くろうづ)にと契約した黒衣(くろご)になっていることが判明。タマシイに関する同業者でありつつ、お互いを干渉しないあめふらしと黒珍だが、市村の兄が黒衣と知った橘河は、市村(兄)を殺しかけて執着で現れた女のタマシイを捕えて黒珍に差し出すことに。

おかげで、市村(兄)は助かったようですね。
最後から2番目の章「かげろう」で、場面が錯綜するのは、黒珍とあめふらしの攻防戦の結果なのかしら。
ところで、市村(弟)は、人間化した…のかしらん?何も覚えてないということだそうですが。
でも、「かげろう」で橘河が
~~そもそも市村峠が何者なのか、はっきりしたわけではではない。正体不明のままだ。~彼らはただの兄弟ぢゃないんだよ。~~ (本文より引用)
と語っている、ということは、市村兄弟はやっぱりヒトではなく、妖物系?

いや~、とにかく暗喩や象徴があふれかえる物語に、男性同士の愛(BLというには橘河は年が行き過ぎてる・・)が絡んだり、妖物と人間の愛があったり、タマシイを捕えたり隠したりと、読みこなすのが大変でした~。でも、やっぱり長野まゆみの緻密で繊細な美しい文章に惹き込まれ、ゆるゆると異界へ行ってきた、という感じでした。

蛇・蛟(みずち)・雨師(カエル)・蝙蝠など、何となく陰陽で言うと陰側の生き物たちがたくさん出てきます。詳しくは知らないんですが、これらの生き物はいろんな暗喩があるんですよね。おどろおどろしいレベルまではいかないけど、半分ぐらいアチラ側へ足を踏み入れてる感じ、漂ってきますねぇ~。こういう、あえやかな雰囲気、大好きです。

市村兄弟の物語及びウヅマキ商會の物語は、まだまだあるんじゃないかと期待しています。特に市村弟の、妖物に囲まれて途方にくれてる姿、また読んでみたいです。

(2007.07.29 読了)
あめふらし
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著者:長野まゆみ出版社:文藝春秋サイズ:単行本ページ数:217p発行年月:2006年06月この著者の


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  • 『あめふらし』 by 長野まゆみ

    Excerpt: いままでふわふわ~っと、するする~っと読み終えてしまうことが多かった長野氏の作品だったけれど、今回は少し謎めいているところや因果的な作があるのでミステリ調に読めた気がする。 因果・・・というか、あ.. Weblog: ■空蝉草紙■ racked: 2007-08-02 01:13