『続巷説百物語』/京極夏彦 ◎

うおぉ~!とうとうきちゃったよ、『続巷説百物語』!!
京極夏彦『巷説百物語シリーズ』ですよ。「人のなす罪悪」を、「怪談になぞらえて」必殺仕事人さながらに始末をつける、又市一行の物語です。

そしてもちろん、水無月・Rの大好きな「若き知性派改め天然役者・百介さん」も出てきますよ~。相変らず、いい感じにトボケてます。前作『巷説百物語』では素っ頓狂な好事家、この『続~』の後の『後巷説百物語』では哀愁老人、『巷説~』の更に前の時代の『前巷説百物語』にも、ボケボケな蝋燭問屋の若旦那(端役)として出てきましたが、4作品全部読んで、百介さんの移り変わりが、すごく胸に沁みましたね。

『巷説百物語』では割と、明るく楽しく又市一行の織りなす妖怪譚に参加していた百介さん、『続巷説百物語』では又市一行との溝に気付き、彼岸と此方岸をフラフラと定めぬまま行き来する自分に忸怩たる思いを抱きつつ、それでも思い切ることが出来ないという、やや複雑な胸中にあった。そして、最終章で又市一行と生涯の別れをし、『後巷説百物語』では、「自分が生きていたのは、あの頃だけだった」と哀愁老人になってしまう・・・。だから、今回は百介の苦悩も交えて、妖怪譚のほうはそれなりにスカッと終わるけれど、百介さんの心情的には何だかモヤモヤとしているという、やや悲哀を帯びた物語になってましたね。

「野鉄砲」「狐者異」「飛縁魔」「船幽霊」「死神~或は七人みさき」「老人火」、6篇どれをとっても、又市一行の優れた手腕で、「人のなす罪悪」が「怪談になぞらえて」始末されていく。今回の『続~』では、前作ではただ巻き込まれるだけだった百介が、事件の発端になったり、自主的に踏み込んで行ったりしています。但し、積極的に始末に役立ってるわけではなく、相変らず天然役者なところで活躍してるという感じ・・・。事件にカタがついた後、お約束のように又市に「どういうことなんです」と尋ねるあたり、読者に非常に近いところにいて、親しみを感じますねぇ。

「狐者異」は、『前~』で又市が裏渡世に鞍替えせざるを得なくなった「祇右衛門事件」の最終的な始末物語でしたが、何だかちょっと物足りないかなあ。案外アッサリ、祇右衛門という仕組み牛耳っていた男をやっつけちゃったからかしらん。でも、おぎんさんの遺恨が晴らされて、よかったよかった。

「死神~」と「老人火」は、百介が又市一行と袂を別ってしまった、その哀しい顛末が描かれています。結局彼岸には渡れなかった百介。その後、生涯旅に出ることもなく、百物語も開板せず、生きている実感も得られないまま、老いを迎えることになってしまった。

うう~ん、今回はどうしても、百介さん視点で読んでしまった。まあ、そういう描かれ方をしているのですが。妖怪譚なんかより、人の成す罪悪のほうが、怖ろしい。所詮妖怪などというものは実のところは、まやかしで、理不尽なものを何とか形にするために人間が考え出した、形代のようなものなのだ、と本文中に書かれてるわけではないけれど、そう感じました。逆にそれを利用して、非道な悪事を始末する、又市一行のあざやかなる技、爽快でしたね。
又市さんは、本当に頭がいいんだな~(まあつまりは京極氏がすごいんだけど)。口八丁手八丁、目くらましに煽動、仲間内の能力を最大限に生かし、ありとあらゆる技で、コトの始末をつける、驚くべき手腕

願わくば、「死神~」と「老人火」の間にある、「千代田のお城の大きな鼠退治」の物語も読みたい。どのようにして、その大きな勢力に打ち勝ったのか、治平さんが、どうして死んでしまったのか。御行の又市が八咫の鴉になり、山猫回しのおぎんが黒装束の影になったその経緯。きっと、京極氏ならすごい物語を隠していそうだと思うのだ。今回の「巷説」では百介視点のため、この物語は語られなかったけれど。

~~御行奉為(おんぎょうしたてまつる)---~~ (本文より引用)
又市は、袂を別つことになってなお、百介をいとおしんでいたのではないか。
自分達は、闇の側の人間である。だが、百介は昼間の側の人間。共に旅をし、仕掛けをした数年は、もちろんまっとうな身分の人間を利用するという面もあっただろうが、闇に渡世しあやかしを操る自分達をうつつに繋ぎとめるよすがとして、百介の存在を大事に思っていたのではないか。だからこそ、熾烈な大仕掛けを前に、百介の前から姿を消した・・・。もちろん、コレは、水無月・Rの私見ですが。何か、そうだとすると、トテモ切ないな・・・と思います。切ないけれど、やはり、こうなるより仕方ないという、ね。

現在刊行されている『巷説百物語シリーズ』、とうとう読み終わっちゃいました・・・。何か、うら寂しいなぁ~。

(2007.07.06 読了)

水無月・Rの〈巷説百物語シリーズ〉記事

巷説百物語(続)
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著者:京極夏彦出版社:角川書店/角川グループパブリッサイズ:単行本ページ数:761p発行年月:200


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    Excerpt: 妖怪大芝居の続編。 最後の百介がせつない。。 カリスマのある人って罪。 御行奉為。。 続巷説百物語 (角川文庫)/京極 夏彦 ¥900 Amazon.co.jp Weblog: ちねりん☆粘土とかでミニチュア☆ racked: 2010-01-23 07:37