『チーム・バチスタの栄光』/海堂尊 ◎

『螺鈿迷宮』で面白さに目覚めてしまった、海堂尊作品、2つ目です。
第4回「このミステリーがすごい!」大賞の、満場一致で大賞即決、そりゃそーですわ。単行本にする際、多少加筆修正はあったと思うんですけどね、とてつもなく、面白い。面白くて、面白くて、一気読みしてしまいました!既刊シリーズが、あと2冊あるんですよねぇ~。嬉しいな~、楽しみだなぁ~!

『チーム・バチスタの栄光』は、桜宮市にある、東城大学医学部付属病院を舞台にした、医療ミステリー。と言っても、読者は「医療」に関する専門知識は必要ありませんでした。よかった~。水無月・R、無教養だから・・・。

心臓手術の1種、バチスタ手術の世界的第1人者である天才外科医・桐生が率いる、「チーム・バチスタ」。連続し続ける、成功。だが、とある時点を境に、術中死が3件続く。危惧した桐生は、病院長・高階に調査を依頼。高階は「不定愁訴外来」の田口医師に調査を任命する。田口は「チーム・バチスタ」の面々に聞き取り調査をし、バチスタ手術にも門外漢の視線で検証するため、立ち会う。手術は成功する。
が、桐生の依頼により、次に立ち会った手術で、術中死は起こる。桐生らチーム・バチスタの手術の手際には、なんら不自然さが感じられず、異常事態に厚生省の官僚「火喰い鳥」の白鳥が呼び寄せられ、白鳥と田口のコンビ調査が始まる。「ロジカル・モンスター(論理怪獣)」の白鳥とともに田口は再度聞き取り調査を開始。白鳥が加わった調査は、対象に泣かれるは殴られるは仮説は叩き潰されるはの大騒ぎの末、様々な真実が暴き出される。そして白鳥は、段々核心に近づいていく。
しかし、白鳥不在中に、緊急バチスタ手術が。現場に飛び込んだ田口だが、手術を止めることは出来ず、再び術中死が起こる。遅れて現れた白鳥により、Ai(死亡時画像病理診断)が提案され、その結果、チームメンバーの故意による殺人であることが判明。
手術中のスタッフによる殺人が表沙汰になり、東城大学医学部付属病院は大揺れに揺れ、記者会見では田口が大活躍の末、鮮やかな手腕で病院長の引責辞任を止め、リスクマネジメントの改善向上を宣言。

こう書くと、まるで田口がキレ者の新進気鋭の医者のようだ。けど、全然違う。学部内の権力闘争から身を引き、「不定愁訴外来」別名「愚痴外来」という、各部署から回って来る不定愁訴患者の話を聞く、という閑職につくような男なのだ。ただし、田口は「話を聞く」という能力に優れていて、その能力をいかんなく発揮した末に、不定愁訴外来は病院内に不動の地位を得ているのだけれど。

「話を聞く」能力(パッシヴ・フェーズ)の田口と対極にあるのが、攻撃的聞き取り(アクティヴ・フェーズ)の白鳥。頭はイイはずなんだけど、とにかく目的のためには手段(発言内容)を選ばないという暴挙ぶりで、聴き取り対象はもちろんく、読者たる私も翻弄されてしまった。
その白鳥の言う「アクティヴ・フェーズの極意」の中で一番印象的だったのが、「極意その3:要件が終了したら長居は禁物」あ、これ、実生活で絶対役に立つ。
水無月・Rのようなグータラ主婦にすら役に立つ、極意だ…(笑)。
子供を叱る時も、ダンナと喧嘩する時も、無意味なPTA付き合いから逃げる時にも、この極意は重要そうだ。ただし、使い方を誤ると、とんでもないことになりそうだな。

犯人はすぐに分かる、という方も多いようですが、白鳥が指さすまで全然、わかりませんでした。そのあとの犯人が田口にする告白で、動機が明らかになるんですが、病んでますよ、この人。しかも心を病んでるのに正確無比な技術力で殺人を実行し、その結果チームが右往左往する様子を、楽しむという…恐ろしいなぁ。

我々一般患者は、知識や能力が存在しないから、結局医師に全てを委ねてしまうことになる。が、その医師が患者の生のために、最善を尽くしてくれるかどうかわからない(下手すると殺人の意思すらある)としたら、その難から逃げることは出来まい。そんな、恐ろしさを垣間見せてくれた気がする。

だけど、田口の「出世欲のなさ」や「小心者のセンサー」が、物語に安心感を与えてくれる。田口の人間らしさは、水無月・Rのような小市民でも「こういう医師がいるなら、医療現場は、まだ大丈夫」という気持ちを起こさせてくれた。

白鳥と田口の掛け合いも、面白かったしね。このコンビで、次々続くのかしらん。楽しみだわ~。
医学部病院という舞台に立つ医師たち、厚生省の規格外役人という闖入者、みんな頭がいいから、展開についていくアタマのない水無月・Rはただただ、感心するばかりでした。でも、こういう頭脳戦的な面も、好きだったりします。

(2007.08.08 読了)

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著者:海堂尊出版社:宝島社サイズ:単行本ページ数:375p発行年月:2006年02月この著者の新着メ


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この記事へのコメント

2007年08月09日 11:19
こんにちは。
田口・白鳥コンビの掛け合いが楽しかったですね~。
水無月・Rさんの「結局医師に全てを委ねてしまうことになる~」という文章に、大きく頷きながら読みました。「最善を尽くしてくれてるんだ」と信用するしかないんですけど、信用してるからこそ受診してるんですが、改めて考えると怖いことなんですよね・・・。
2007年08月09日 23:30
すずなさん、こんばんは(^^)。
TB&コメント、ありがとうございます。
医療問題の小説を読んだりすると、怖い話が多いですもんね。現実はこんなことはない、そんな目には逢いたくない…と思いながら読んでます・・・。
2007年08月11日 02:07
こんばんは!TBありがとうございます。
これがデビューとは思えないほど面白かった作品でしたよね。医療の現場って・・素人にはわからないことだらけ。増してや、心臓手術なんてね・・それでも、命をゆだねる私達には、やはりお医者さんは頼れる存在であってほしい、って思いますよね・・。
2007年08月11日 22:52
ERIさん、こんばんは(^^)。
TB&コメント、ありがとうございます!
深刻な医療問題、けれどその周りにいる人物は白鳥のようなぶっ飛んだ役人。このギャップがよかったのでしょうね、きっと。
次作が楽しみです!
雪芽
2007年12月10日 23:00
水無月・Rさん、こちらにもお邪魔します。
この本を読んだ時の衝撃を思い出します。
ぐふっ(思わず零れる笑い)、面白い~と何度リピートしながら読んだことか。
巧みな弁舌とはほど遠い身からすると、白鳥のいうのはわかるけど、実践は無理そうです。
怖いことも想像してしまう医療現場、田口先生のような安心できる医師もいてもらわなくては困りますね。
2007年12月10日 23:23
雪芽さん、大歓迎です~!
とにかく、医療小説で笑えるなんて、思ってなかったのでビックリしました。
白鳥の論理怪獣ぶりがすごくて、でもそれに行ききれしながらもついてゆける田口先生もすごいな…と思いました。伊達に人脈渦巻く大学病院の万年講師やってるわけじゃないんですね(笑)。
香桑
2008年11月24日 15:51
こんにちは。
海堂作品の初読みでした。人気があるのがよくわかりました。面白かったです。
精神科と心療内科と神経内科は、重なり合うところもありますが、それぞれべつもの。不定愁訴外来があって特に利益があるのは、整形外科だろうなぁ。そんなことを考えながら、読みました。(^^;;
高階院長の「にやり」が好きです。
2008年11月24日 23:22
香桑さん、ありがとうございます(^^)。
この作品のときは、あまり高階院長に注目してなかったんですが、この後イロイロと大活躍して下さり、水無月・R内要注意人物(いい意味で)になりました(笑)。
どちらにしろ、抜け目なくカッコイイ人ですよね♪

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