『そして名探偵は生まれた』/歌野晶午 ◎

歌野晶午に再びチャレンジ。
『葉桜の季節に君を想うということ』『ジェシカが駆け抜けた7年間について』で、読者の誤認識を利用した物語運びにすっごく感激したので、その後に読んだ『家守』などで、どうしちゃったの、歌野さん?!と残念に感じていたので。
しかしこの『そして名探偵は生まれた』は、水無月・R的に「歌野さん、お帰りなさい!!」な作品になりました~!!

表題「そして名探偵は生まれた」、「生存者、一名」、「館という名の楽園で」の三篇。どれもよかった! 歌野さんらしいどんでん返しが、物語が終わるまで鳴りを潜めてて、最後にドーンと押し寄せてくる。
うぉぉ!そういうことだったのか!えぇ?そう来るのかよ!と。(品のない表現ですみません。)

「そして名探偵は生まれた」
警察に協力し、数々の難事件を鮮やかに解決する名探偵・影浦逸水。そしてその助手(とは名ばかりの世話係)・武邑大空が、ある企業の山荘で密室殺人に出会う。ろくに金にならんとヤル気の無かった影浦が、なぜ途中で急に警察協力をしたのか?そして翌日殺されたのは?助手の武邑が、社長殺人・名探偵殺人の真相を、恩師の意趣返しとばかりに鮮やかに解決。しかし、名探偵殺人の本当の下手人は・・・。おぉ~、来たぞ、最後のどんでん返し!とはいえ、タイトルから考えると、そんなどんでん返しでもないのかな?・・・まあ、水無月・Rはこれはいい、と思ったのであります。物欲・名声欲にまみれた探偵と、その助手の抱く「名探偵像」のギャップから起こった殺人。目の付けどころもすごくいいと思います。

「生存者、一名」
新興宗教の信者が、爆破テロを実行。実行犯4人は、海外脱出の準備を待つために、絶海の孤島へ。ところが、4人を連れてきた教会幹部が、突然姿を消し、取り残されたのは、実行犯4人と幹部のカバン持ち。カバン持ちは「教会は、4人が飢え死にした後で現場を操作して、テロ事件に教会は無関係とする計画だ」と告白。そして、島を出ることのできない5人の共同生活が始まる。が、1人また1人と男たちが死んでゆく。残された女2人の対決。途中で差し挟まれる報道の記述が、物語の結末を指し示すかと言えば、これが誤認識!読者を引っ掛ける、例の手段なんですねぇ~。いやいや。「島にいるのは5人の筈なのに、何で生存者一名なんだ?」と疑問に思いつつ、「あ、これだ!」と思うと次にはひっくり返され。最後に、あ!!と。なるほどねぇ~、うん、歌野さん、お帰りなさい!

「館という名の楽園」
歌野さんはミステリーだから、と絶対本当の殺人事件が起こると思って(←それが誤認識なんじゃん、水無月・R)、いつ誰が殺されるんだろう、とそればっかり気にしながら読んでたら、全然違うストーリーでした。びっくり。ミステリで館と言えば殺人ですよ!的な、勝手な思い込みが、いけないんですな(笑)。けど、ちょっとラストは悲しかったですね。あ、でもね、3つの棟のトリックには、結構早く気づいたんですよ。館の主・冬木氏の語る「館の由来の物語」から、あっそうか、とね。逆に、そのトリックで誰か殺される!と思ってたんですよ~。まだまだ甘いな、水無月・R。冬木氏の妻が、集まった「N大探偵小説研究会」の不可侵のマドンナだったのに、不文律を破って冬木氏が行動に出て、結婚に至ったというのが、きっと動機じゃないのか?と思ってたんだけど…全然そんなことなかったですな・・・。

3編どれも良かったけど、一番良かったのは「生存者、一名」かな。最後の最後まで、騙されてましたから、私。でも、騙されて全然悔しくないです。逆に嬉しいくらい。「歌野さんの本領発揮、帰ってきた歌野さんありがとう!」って感じで。あ、いや、別に歌野さんがどこか行ってたわけじゃないんですけど。水無月・Rの好みな作品を書いてくれてありがとう、って言うような意味ですよ。

(2007.09.02 読了)
そして名探偵は生まれた
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本格推理小説 著者:歌野晶午出版社:祥伝社サイズ:単行本ページ数:346p発行年月:2005年10月


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