『風が強く吹いている』/三浦しをん ◎

これは、すごいっすね。スポーツ音痴でオリンピックも見ず、新聞のスポーツ面は飛ばしてめくる女、水無月・Rが言うんだから、ホントだ。なんせ、ほぼド素人の大学生グループが、無謀にも大学長距離走の頂点ともいえる「箱根駅伝」で頂点を目指そうというのだから。
しかも、スポ根では、ない!
これは、ホントに、すっごく面白いですよ!
例によって、あらすじも書けない、まともな感想も無理、のコースです。

実は、三浦しをんさんの『風が強く吹いている』は、話題になった時に「えぇ~?素人が駅伝に挑戦する話~?スポ根は好みじゃないんだよね~」と全く射程外の作品だったのです。
ですが、『きみはポラリス』を読んだ時に、非常に「しをんさん面白いじゃん」と思いまして、【本のある生活】のJuneさんに「他におススメないですか~?」とお聞きしたところ、この『風が強く吹いている』を教えて頂いたんですね。
(Juneさんの素晴らしいレビューはコチラ。ぜひ皆様お読みくださいませ!)

Juneさんのおススメなら、いけるぞ~、と読み始めてみたらば、もうビックリ。全然スポ根じゃないの。確かに練習はきつい。1年生エース・走(かける)の速さがとてつもない。たった10人の中でさえも、不協和音が響いたりする。だけど、違うんだ。綿密に描かれる練習や試合のきつさは、何故か夢のように過ぎてゆく。
それは、「走る」という事が、とても純粋に描かれてるからなのかも。作者・三浦しをんさんも走る人なのかしらん、と思うぐらいに。誰もが、それぞれの個性にあった走り方を楽しんでいる。だから、読んでいて、全然辛くない。こういうスポーツ系小説なら、読めるな・・・。

ぼろアパート・竹青荘に暮らす、寛政大学の学生10人。それぞれがきっちりとキャラ立ちしてるから、すごく面白い。箱根駅伝区間エントリー順に、表紙の一言プラス水無月・R的私見で紹介してみる。
1区 王子(漫画命イケメン)
「鬼だよ あんた」
2区 ムサ(日本語上手の国費留学生)
 「黒人が速いというのは偏見です」
3区 ジョータ(双子兄・兄弟間には深慮)
 「モテるんだね?」
4区 ジョージ(双子弟・天真爛漫)
 「モテるんでしょ?」
5区 神童(僻地出身・実務多能)
 「親も喜ぶと思うんだ」
6区 ユキ(司法試験現役合格)
 「やるからには狙う」
7区 ニコチャン(2浪2留)
 「一人じゃ襷はつなげねぇよ」
8区 キング(クイズ王)
 「就職安泰ってホントだな?」
9区 走(純粋な走り)
「すぐに行きます 待っててください」
10区 ハイジ(真の指導者兼監督)
 「君たちに頂点をみせてやる」

この10人のうち、陸上経験者は走・ハイジ・ニコチャンのみ。ジョータ・ジョージ・キングはサッカー、ユキは剣道、神童は山歩きなれ、ムサは人種天性の筋力を持つ。とはいえ、きちんとした走りを身につけているわけではない。王子に至っては、ただの漫画オタク。なのに、ある日清瀬ハイジは「アオタケのメンバーで箱根駅伝を目指す」と言い出す。ある時は強権発動、ある時は巧妙にだまして納得させ、全員をその気にさせるハイジの指導力ってすごいな~。指導しつつ、自分のトレーニングもこなし、監督を招へい(でも大家)し、料理を作って食べさせ。その指導も、いわゆる日本スポーツ界にありがちな軍隊式の強制スタイルではなく、ほめたり論理的に説明したり、非常に受け入れやすい。
その中で個々が、自分に合った走りを見つけ出し、だんだんに自分の力を高めていくところ、清々しかったなあ。

走りについての美しい描写も良かったけど、あちこちに見られる笑いが、とてつもなく、素晴らしかった。もう、すんごい、ツボ。双子可愛い~。なんて無邪気なの~。走の入居直後に天井踏みぬいたりして、たまらん。煙幕を張るニコチャン、クイズ大好きのくせに本番は弱い緊張しいのキング、大家の犬・ニラ、八百屋の娘でチーム1年3人から思われてる・葉菜子、もうみんなすごい、いい。あちこちで、笑いのツボ押されまくりで、げらげら笑いながら読んだ。
そして個人的に一番ツボだったのは、誰も一応監督の大家を「監督」と呼ばず、「大家」と呼ぶ事・・・。実際、監督として役に立ってないし~。かつて「日本陸上界の至宝」と呼ばれた人なのに、監督車からの呼び掛けはハイジの伝言、という辺りがすごすぎる・・・。まぁ、それにこだわらず大きく構えてるあたりが、後進を認める器の大きさなのか?!(笑)

もうね、駅伝が始まると、泣きそうになった。みんな、すごいんだもん。冷静にレースを判断し、ハイジのレクチャーがあったとは言えしっかりペースを守り、苦しくてでも全力以上を出して走り抜く、その走りの美しさ、鋭さ。特に復路は、因縁の東体大との競り合い、走の王者六道大への追随、ハイジのラストスパート、と鼻グズグズいわせまくり。ハイジがゴールした時は、私も寛政大のチームメンバーな気持ちになってましたよ。

さわやかなだけのスポーツ小説ではなく、スポ根でもなく、熱血青春小説でもなく、すごくいい。けど、こんな記事じゃ、わからんだろうな~。
ってlことで、読んでみてください。『風が強く吹いている』を。
来年の駅伝は、TVで見てみよう、って気になりますよ、ゼッタイ。

(2007.11.07 読了)
風が強く吹いている
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著者:三浦しをん出版社:新潮社サイズ:単行本ページ数:507p発行年月:2006年09月この著者の新


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この記事へのコメント

やぎっちょ
2007年11月07日 22:47
あ、同感同感です!スポ根ものって全然触手動かされない・・・。順番逆になりましたが水無月・Rさんこんばんは♪
駅伝中はほんと、ずっと泣きそうモードですよね。駅伝も長いが泣きそうモードも長い!あ~良き作品でした★
まみみ
2007年11月08日 00:25
水無月・Rさんこんばんは~~
こういう本は、書評書くのも無粋な感じがします。もうおもしろいから読め!以上!!で止めたいとこでした。
にしてもハイジはすごいですよね。大学4年でその能力……末恐ろしいものを感じました。
この作品、今青年誌で漫画連載されてるようで。それもいつか読みたいなあと思ってます。
2007年11月08日 14:05
こんにちは。
水無月・Rさんの興奮が伝わってくるような記事ですね。でも、そのお気持ち分かります!
笑いあり、涙あり、そして感動あり。最後まで夢中になって貪り読みました。
来年の箱根駅伝はTVの前で観戦しなきゃ!ですね。
june
2007年11月08日 16:18
水無月・Rさん、こんにちわ!
これはまともな感想無理ですよね。読んだ直後ならいざ知らず、一年近く経った今でも思い出すと熱い気持になります。気持ちを共有できてうれしいです。布教した甲斐がありました(笑)。
そして来年の駅伝の前に再読しなくちゃ!です。
エビノート
2007年11月08日 22:16
この本は箱根駅伝が近付くたびに読み返したくなる一冊です!
最初っから最後まで楽しめる内容で、読書の楽しみを味わわせてもらいました。
そして、ほんのちょっとだけ走るの苦手だけど走るのも楽しそう♪なんて思っちゃいましたよ。
2007年11月09日 21:24
>やぎっちょさん。
そうなんですよ、私自身に全く根性がないので、スポ根ってなじまないんです。それが、この素晴らしい物語ですから。感激ですよネ。

>まみみさん。
ハイジの指導力、人間を見抜く力、すごいですよね。え?漫画化されてるんですか?単行本になったら買ってみようかな~。ウチのダンナ、漫画なら読むので、「これの原作がすっごく良かったんだよ~」と主張できそうです(^^)。

2007年11月09日 21:25
>すずなさん。
最近、自分の読書スピードが落ちてるな~と思ってたんですが、この本は別でしたね。なんかもう「終わりたくないのに先が気になって一緒に走ってしまった」感がありました。そうですね~、来年は駅伝にかなり感情移入しちゃいそうです。

>juneさん。
本当に、ありがとうございました!
juneさんのおススメがなかったら、きっと通り過ぎてしまった作品でした!こんなすんごい作品を知らないままだったら、すっごくモッタイナイですもん。さあ、今度のお正月は箱根駅伝を見て、みんなで感激しませう!

>エビノートさん。
走(カケル)の走りの美しさ、そして皆の走りの真摯さが、本当にすばらしい作品でしたね。今度の箱根駅伝は今までと違った見方ができると思います♪
2007年11月10日 00:58
三浦しをんさんほど、スポ根から遠い人はいないかも、ですね(笑)それぞれが、自分が今走る意味を見つけていく、その気持ちが、「走る」という行為の中で結晶していくようで、そこが好きでした。もうすぐ箱根の季節。がっつり見るのが、毎年のウチの恒例行事ですが、より一層力がはいりそうです。
miyukichi
2007年11月10日 21:23
 こんばんは♪
 TBどうもありがとうございました。

 これ、私もいろんな人にオススメしまくってます。
 楽しくて笑えて、そして感動して。
 あー、また読みたくなってきました(笑)

 http://blog.goo.ne.jp/miyukichi_special
2007年11月10日 21:56
>ERIさん。
しをんさんは、スポ根から遠いんですか・・・。他の作品が楽しみになってきました。っていうか、結構どっひゃーな方らしいですね・・・(^_^;)。イヤそういうのも悪くない、むしろイケるかも、と思っております(笑)。
>miyukichiさん。
とにかく、すごくいい物語でしたね。真剣に個々の走りを極める10人とその周りの人々、みんな真面目にやってるのになぜか笑いがこみあげてくる、数々のエピソード。しをんさん、素晴しい!何回でも読んで・泣いて・笑えそうです♪
雪芽
2007年11月11日 20:39
こんばんは!
ラストの箱根駅伝の場面はもう文章読んでるっていうより、一緒に走ってるぞって感じるくらい引き込まれました。読む、応援する、泣く、鼻を咬む(笑)、とにかく忙しかった~
楽しいツボもいっぱいでしたね。自信を持ってお薦めできる本て少ないんです。好みあるし。だけどこれは無理にでも読め、読め、読んでくださいと言いたくなる本でした。
2007年11月11日 21:52
雪芽さん、こんばんは。
実は私、実家の父に勧めてしまいました。自分でも市民マラソンに出たりする人なので、結構共感してくれるかも・・・。ただ、小説はほとんど読まない人なので、アマゾンで注文して送りつける予定です(笑)。
たかこ
2010年10月17日 17:41
私も青春小説~?え~、どうなの?ってちょっと思ってました。
けど、すっごく良かったです。
双子のキャラがけっこう良い!(笑)し、話がしっかりしていて、のめりこみますね。
商店街のおばちゃんの気分で応援してました。
2010年10月17日 23:06
たかこさん、ありがとうございます(^^)。
それぞれの走り、素晴らしかったですね!
双子が可愛くて、ぎゃ~ぎゃ~騒ぎました、私(笑)。
みんな真面目にやってるのに、なんでこんなに笑えるんだろう・・・そして最終的には思いっきり泣かされちゃうんでしょうねぇ。
そうですよね、ホント商店街のオバちゃん気分で応援しちゃいますネ。

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