『悪魔の薔薇』/タニス・リー ◎

現代のシェヘラザード姫、タニス・リーの幻想怪奇短編集ですよ!
素晴らしいですね~、『悪魔の薔薇』
仄暗い世界に揺らめく、人とも獣とも妖魔ともつかぬ「もの」達。闇に浮かぶ、かぼそい金銀の操り糸。人の心の裏側をえぐる、繊細な描写。
ダークファンタジーの真骨頂とは、このことですよ!
(あ~あ、とうとうタニス・リーにも悶えるようになってしまったか、水無月・Rよ。)

水無月・Rは、ダーク・ファンタジーが好きです。ダーク・ファンタジーは耽美で隠微で華麗で繊細で美しい。高校生になるまで、「普通の清く明るく美しいファンタジー」は読んだことがあったんですが、ダーク・ファンタジーはタニス・リーが初めてだったのです。で、読んで、強く衝撃を受けましたね~。「世の中に、こんな強烈な物語があったのか・・・!!」と。
ここのところ、タニス・リーはヤングアダルト系な作品を読むことが多かったので、少し物足りなかったんですが、この作品は、素晴らしいですよ。耽美で隠微でグロテスクなんだけど、決して醜悪なドロドロした部分がない。透きとおる暗闇に張りつめた弦の奏でる、不可思議な音楽。人の心の迷いを誘い、抉り出される真実は、本当のことなのか。タニス・リーの紡ぎ出す世界に流れる空気は、粘液状に人の身にも心にも纏わりつき、滴る。

・・・うわっ、やたら感傷的な文章になっちゃってるよ、私。でも、タニス・リーのダーク・ファンタジーを読むと、どうしてもその華麗にして意味深な文体に影響を受けてしまうのですよ(^_^;)。

ヴァンパイアの姫に仕え死を迎える年老いた従者が、新しい従者を探し出し、姫に引き合わせる。老従者の視点で描かれた、出会いと別離。いかに、彼女を愛していたことか。(「別離」)。
雪に閉ざされた町で出会い、関係を持った男女。男は女を棄て、都市へと去る。「悪魔の薔薇」という病気を彼女に残して。(「悪魔の薔薇」)
パラレル世界のパリで、3人の若き芸術家が出会う美しき死神。~~彼女を探してはならない。いたるところに潜んでいるのだから。~~ (本文より引用)(「彼女は三(死の女神)」)
美しき乙女は、国を人を穢す忌まわしき悪人を暗殺した。乙女が殺したのは都市を救い人民を愛しんだ聖者。それもまた真実。誰もが自分なりの真実を見る。が、どれも誤りでどれも真実。物事には多面的な真実がある。(「美女は野獣」)
真実恋しい人を知られぬために、他の人の名を出した乙女。その他人が自分の所業により死に至ってのち、彼女の愛は死者に傾く。(「魔女のふたりの恋人」)
領主を惑わした魔術の女は、はたして悪女だったのか。物事には漂りがあり、片方の側面しか見ていなかった領主の側近の後悔。(「黄金変成」)
愚かで短絡な長男・ずるがしこい次男、心広く愛情あふれる三男の兄弟が巻き込まれた、魔術のわな。末息子が強大な力を持った魔術師を打ち倒して、呪縛を解く。(「愚者、悪者、やさしい賢者」)
どんな魔術をもってしても、破ることのできない、女呪者の鏡の魔術。町中の男たちが、逆らえず捕われる。ある日現れた男が、彼女の術を破る。それは、愛であった。(「蜃気楼と女呪者」)
青い壺の中には7000人もの魂が込められている。生きることに倦んだ大魔術師がそれを手に入れ、役立てようとし、ふと気がつく。この世界に入ってみようと。(「青い壺の幽霊」)

どれも耽美で幻想的で、美しい物語でした。中でも「美女は野獣」と「蜃気楼と女呪者」が良かったな~。耽美で、愛に満ちていて、だけど全ては表裏一体。自分に見蕩れるも、忌み嫌うも紙一重。
ファンタジーを描きながら、「ひと」の矛盾や多面的な部分、曖昧さに流される澱んだ処を露わにする、その文章に抉られまくりでしたね。抉られるけれど、読むのを止めることは出来ない。読んだことを後悔はしない。そんな、強い物語でした。

(2007.11.21 読了)
悪魔の薔薇
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奇想コレクション 著者:タニス・リー/中村融出版社:河出書房新社サイズ:全集・双書ページ数:369p


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