『終末のフール』/伊坂幸太郎 ◎

「8年後に小惑星が地球に衝突し、地球は滅亡する」ことが確定してから5年・・・。当初の混乱が収まった、仙台市郊外の団地の人々の優しい日常を描く物語。それぞれのつらい混乱期と、今の穏やかな日々。それでも、3年後に地球は終わる。地球の行く末には希望がないが、何故か人々の「あと3年」は暖かい喜びに包まれている。

今月、読了冊数が少ないのに、何故か伊坂幸太郎作品が3冊目です。今回も仙台市が舞台ですが、いつものリンクし合う世界という訳にはいきません。なんせ、あと3年で滅亡してしまいますから・・・。

各章のタイトルが「○○の○ール」に統一されています。内容に即してる上に「うふふ♪」となってしまうような、巧い使い方。さすが、伊坂さんですね!「天体のヨール」はかなり笑えました(ある意味苦しい?でもきっとわざとですね。私はこういうの好きです)。
もちろん作品タイトルの『終末のフール』は、全体をまとめる意味合いがこもってます。章のタイトルとしては、お父さんの口癖「馬鹿」を引っ掛けてるんだけど、全体のタイトルとしては「終末」を迎えることを何となくながら認めている「愚者(道化者)」なのかな~、と。愚者というのは、逆説的な意味で賢者だ・・・あれ?なんかよくわかんなくなりました。そんな意味合いもあるような、ないような・・・(^_^;)。

一番気に入ったのは、「演劇のオール」かな。都会で演劇を志していた女性が仙台に帰ってきて、身寄りが自殺した老人の孫・家族が事故死した少女の姉・母親が戻ってこない兄妹の母親・同じマンションに住む男の恋人・廃屋に繋がれた犬の飼い主を演じつつ、生活している。彼女は「地球滅亡宣言」以来、「舞台で演じているうちに共演者が次々といなくなる」という夢をよく見ていた。ある日そのバラバラに存在していた、演技対象の人々が、偶然や必然に導かれ、一つ所に集まる。
~~もうこうなったら、いっそのこと、みんなでここに住んじゃえばいいんじゃないの~~ (本文より引用)
と提案しようと彼女は思う。
すごく、暖かい話だと思うのだ。世界はもうすぐ終わるけど、みんな孤独だったんだけど。だけど、集まって、新しい家族になったらいいじゃないか、って言うのが、すごく暖かいと。こういう暖かさは、良いと思う。
そしてラストに、彼女が演劇を志す原因となった俳優が「え、嘘?小惑星?マジで?」とインタビューに答えるシーンには、しっかり笑わせていただきました。読者の私も「のけぞり」ましたよ!(笑)

「鋼鉄のウール」も良かったな~。地球の滅亡が確定してても、淡々と「それで、自分は自分を許せるのか?」とキックボクシングを続ける苗場さんと会長、そして「ぼく」。淡々としてて、素敵だ~!
「冬眠のガール」も良かった。たとえ3年後に地球が滅亡したって、「運命の出会い」はあるんだよね!たとえ世の中によく?あるシチュエーションの男女逆バージョンでも(笑)。すごく微笑ましかったです。

もし私が、「あと8年で地球は滅びます」って言われたら、どうするかな~。泡喰って救いを求めて右往左往しそうな気もするし、案外「あと8年か~、どうせ逃げようもないしな~」とそのままの日常を過ごしそうな気もする。あ、でも多分、読む本と食料の確保だけはキッチリしようとすると思うけど。家族一緒なら、多分いつもと変わらない生活になりそうだな。世話する家族がいるって、ホント習慣として染みついちゃうんだよね~、あはははは。

世界は終末を迎えているというのに、なんだか暖かい気持ちになった物語でした。

(2008.01.31 読了)

終末のフール
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著者:伊坂幸太郎出版社:集英社サイズ:単行本ページ数:301p発行年月:2006年03月この著者の新


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この記事へのコメント

june
2008年02月01日 23:21
そうなんです。終末を迎えているというのに、暖かな気持になりました。
こんな世界を描きながらも、どこか軽やかでとぼけていて、でもどこか芯が通っていて伊坂さんの作品は、やっぱり好きです。

こういうお話を読むと、自分だったら・・ってつい考えちゃいますよね。とりあえず家族と一緒にいたいなとは思うんですが、苗場さんのようにかっこよく過ごしたいとも思います。でも、生き方を変えるも何も、今のままがそもそもまずい気もするんですけどね・・。
エビノート
2008年02月02日 00:06
深刻な状況なのに、あたたかいものが伝わってくる内容でしたね。そして、何気なく過ごしている日々の大切さや素晴らしさも感じられたような気がします。
世界が終わるとしても、この作品の登場人物のように日々を過ごせたら良いなぁ~と思いました。現実にそうなったら、パニックを起こして、早々に退場しちゃいそうだけど。
藍色
2008年02月02日 01:37
不思議な暖かさが感じられる物語でしたね。
8年前から5年経ち、あと3年という設定が、バリエーション豊かなドラマを編み出した、と思います。
自分だったらって考えると、たぶんそのまま迎えちゃいそうです。
まみみ
2008年02月02日 08:58
こんにちは。
読んで2年経つわけですが、「演劇のオール」をすっぽり忘れている自分に驚きました。その他は結構覚えてるんですけどね……たまたま知人から本を頂いたので、また読みなおしたいです。
2008年02月02日 13:55
こんにちは。
皆さんも書かれていますが、地球滅亡が迫ってきてるというのに、なんだか暖かさを感じるお話でしたね。
人はどんな状況であっても、希望を持てるんだ、幸せを感じられる生き物なんだと・・・。そう思えるお話でした。
2008年02月02日 22:26
>juneさん、ありがとうございます。
伊坂さんらしい、軽やかで芯の通っている、素敵な物語だったと思います。私は苗場さんみたいに、超越は出来ないかなぁ・・・。でも、すごいとは思います。

>エビノートさん、ありがとうございます。
地球は終っちゃうけど、でもそれまでは日常が続く。一時の狂乱が終わった、それぞれの安定した日々は、優しくさびしく暖かい。それでも、人は淡々とあるいは苦労しつつも、生き続ける。人間って強いんだなって思いました。

>藍色さん、ありがとうございます。
そうですね、地球滅亡のパニックを描いた作品は多いですけど、このひと時の「凪」の状態が、物語をより良くしてたと思います。
2008年02月02日 22:32
>まみみさん、ありがとうございます。
「演劇のオール」は、ラストに是非ツッコミを入れて下さい!「惑星衝突、知らんかったんかい!」と(笑)。

>すずなさん、ありがとうございます。
終末だからこそ、淋しくて暖かくて優しい。そして、人は生き続ける。何かしら「喜び」や「幸せ」を見つけて。そんな、伊坂さんのメッセージが伝わるような、いい作品でしたね。
七生子
2008年02月04日 14:26
こんにちは。TBありがとうございました。

「あと8年」という設定が絶妙ですよね。
一時的な凪の時。
期限つきではあるもの、だからこそ強く前向きに生きる人々の姿に胸が熱くなりました。
もし自分だったら…と考えちゃいますよね。
えっと私だったら、悔いがないようひたすら本を読みまくってる気がします(笑)。

そうそう、そうと小耳に挟んだだけで私は未読ゆえ確認していないんですが、『砂漠』とちょっとだけこの作品、リンクしてるそうです。
(私のブログからTBしたんですが、反映されませんでした。ゴメンなさい)
2008年02月04日 22:29
七生子さん、ありがとうございます(^^)。
あと3年しかないけれど、みんな優しくてうら寂しい。だから、寄り添って生きていく。そんな暖かな気持ちになる、いい作品でしたね。

私も『砂漠』は未読です。心して読みますね!

TBの件、毎度ご迷惑をおかけしてます。すぐに反映できないこともありまして・・・。
でも、今後とも是非、よろしくお願いします!

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