『ハッピーエンドにさよならを』/歌野晶午 ○

うっわ~。エグい・・・エグいぞ、歌野さん。何がエグいって、殺人描写とかがエグいんじゃない。物語の構成そのものが、エグい。確かに、これはタイトルの通りだ~。『ハッピーエンドにさよならを』、ってホントそのまんまですよ。
歌野晶午さん、これからはこの路線ですか?だとすると、ちょっと・・引くかも。

装丁からして、不吉。タイヤの取れたパトカー、タイヤに座る子供が2人、薄暗い空。その切り絵を黒縁にし、更にページの切り口まで黒く染めてある。うっわ~、不穏だよ、これは。徐々に煽られる不安感に白文字でタイトル『ハッピーエンドにさよならを』がとどめをさす。
さて気を取り直して、目次を見る。11篇からなる、短編集である。タイトルも・・・そこそこ不穏な感じがするな・・・。

と、読み始めた「おねえちゃん」。う…そう来たか。歌野さんといえば「読者の誤認識を利用して大どんでん返し」という手法で私を魅了してくれる作家さんなのですが、確かにどんでん返しはあるな。そしてそのどんでん返った先が・・・エグい。ひとかけの希望もない。まさに[ハッピーエンドにさよなら]、なのである。

11編全てが、[アンハッピーエンド]というより、[ハッピーエンドにさよなら]、なのである。何か大きな悪意にさらされて、仕方なく堕ちていくのではない。自ら悪い方向へ舵を切ってしまう・・・。暗いし、エグい。人間というものの後ろ暗さが、これでもか~これでもか~、と突き付けられる。だけど、何故か嫌な気持ちにはならなかった。自分の中にある悪い部分、暗い部分が物語に吸い出されたような感じ・・・ううむ、表現が難しいな。そういった暗闇な部分をクローズアップしてデフォルメして描かれてしまったら、自分の暗闇部分はそこまで酷くないかな、などとなんだか中途半端に安心できてしまったのだ。

うっわ~、エグい。何篇か読んで出てきた感想。そのエグさは、何故か濃くなることも薄くなることもなかった。どの物語も、色々な「暗闇」を持ち、それぞれいや~な感じで終わる。物語としての後味の悪さは、とんでもないレベルだ。でも、ありそうかも、こんな話実際にあったような気もする、そんな軽いデジャブを覚え、次々と読み進む。悪意の度合いがねっとりと高いのに、軽く読める・・・これは歌野さんの筆力のすごさなんだろうな。

それぞれ、どれもまさに「うっわ~」な物語で、どれが一番と選ぶのは難しい。一番というか異色なのは「永遠の契り」。これだけは悪意というより過失で終わりを迎えるんだけど。普通の大学生の恋愛の始まりじゃん、と思ったら最後の4行。ブ・・・ブラックな・・・。確かに永遠の契りなのね・・・。怖ッ!

あ、そうだ「玉川上死」のどんでん返しのネタになる「いじめ説」は、私は最初から思い付いてました。逆にそう思わせて違う結末?と思ったので、この章だけは歌野さんに勝った気になれました(←勝ち負けなのか?チガウ!)。
しかし、今時はああいう晒し者系のいじめ、多いらしいですね・・・世も末だよなぁ。やっぱり後味悪いや。

(2008.03.05 読了)

ハッピーエンドにさよならを
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著者:歌野晶午出版社:角川書店/角川グループパブリッサイズ:単行本ページ数:319p発行年月:200


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