『白い薔薇の淵まで』/中山可穂 ◎

書店で「その本、買わないの」と声をかけてきた女は、作者だった。傘を返すという口実で再会し、女同士の肉体関係をもった二人は、深い愛憎の淵に引きずり込まれた・・・。
中山可穂さんの、自らを削り取って差し出したかのような、痛みと喪失と激しい情感を描いた『白い薔薇の淵まで』。中山さんの作品を読むときは、非常に体力が要ります・・・。

同性同士の愛を描いた作品って、どうしてこんなに昏く激しいのでしょうか・・・。まさに「情念」。愛し合い、お互いを求め合うのに、離れ引き裂かれ、平穏な生活に馴染めず捨て去ってまで、追い求める。
息苦しいまでに感情は高まり、追い詰めあい、嫉妬し、お互いを傷つけ、それでも愛は消えることなく、さらに深まる。

こんな濃い情念の世界には、自分を置くことはできませんね・・・。物語として仮体験するだけで、息も絶え絶えです。私のキャラでは、この世界には存在することすら許されないでしょう・・・(^_^;)。

ニューヨークの書店で、私は「山野辺塁」に再会した。正確には、塁の作品の英訳本に。
私は回想する。塁との出会い、別れ、再会、そして塁を探しに行った東南アジア。再度塁を見失い、塁の作品が手元に送られてくる。塁を求めて、走り出す私。

塁と家族の過去。私の父のガンと父を安心させるための結婚とその崩壊、塁への狂おしいまでの愛憎。塁の私への抑えられない感情。すべてが、静かに激しく、織り上げられていく。頭の中に白い薔薇を咲かせ、花を散らし、白い薔薇のあふれる淵まで堕ちていくことが、彼女たちの宿命だった。

2人の美しい女たちが出会い、お互いを激しく求め合い、愛憎を募らせ、別れ、再会し。
私と塁のお互いを惹き合う引力の激しさに、息苦しくなるほどだった。

物語の最初に「塁が亡くなって10年」とあった。物語が語り終えられた時、まだ塁の生死は明らかにされていなかった。この僅かな時の隙間に、何が起こったのか、非常に気になるのです。物語の終わりには、主人公の私は塁の元へ駆けつけようとしている。このあとに壮絶な、別離があったのではないかと。
それをわざと描かないことで、更に私の10年後の追憶の悲しみが深まるのではないか・・・。最後まで読み終えて、冒頭を思い起こし、その痛みに愕然としました。

(2008.04.23 読了)
白い薔薇の淵まで
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著者:中山可穂出版社:集英社サイズ:単行本ページ数:200p発行年月:2001年02月この著者の新着


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この記事へのコメント

香桑
2008年04月24日 10:36
こんにちは。最後のページから最初のページに戻りたくなる、空白の時間がなんとも見事ですよね。読み返したくなりました。

TBをよろしくお願いします。
2008年04月24日 16:06
こんにちは。
体力いりますよね;;;
この著者の本はこの作品しか読んでないのですが、読んだ時に消耗した体力&気力を思うと他の作品になかなか手が出せないでいます^^;

最初の最後のページ。この間に流れた時を想うと堪らないですね。”胸が締め付けられる”という表現では到底、足りません。。。
2008年04月25日 21:15
香桑さん、ありがとうございます。
あれだけ激しく愛していたものを失った、その痛みから立ち上がるには、どれだけの苦しみがあったのかと思うと・・・。
とく子は、とても強いんだと思います。

すずなさん、ありがとうございます。
中山さんは、ホント体力要ります(笑)。
『ケッヘル』なんか、読んだときあまりの妄執に胃が重くなりましたから・・・(^_^;)。
でも、とてもよい作品でした。もし体力に自信があったら、『ケッヘル』はお勧めです!
香桑
2008年04月27日 01:03
なるほろ。
『ケッヘル』は未読なので、週明けにでも探そうと思います。よい情報をありがとうございます。

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