『【新釈】走れメロス 他四篇』/森見登美彦 ◎

森見登美彦さんが、京都を舞台に日本近代文学を翻案?!そこに描かれるのは「腐れ大学生」なのか。「魑魅魍魎」なのか?!
・・・いや、サスペンスじゃないから。どっちかて言うと、コメディですから。
しっかし、見事に翻案してますね。日本近代文学っちゅーと真面目で固ぁ~いイメージですが、きっちりモリミーワールド。愛と笑いにあふれています。ツッコミどころ満載。水無月・R、感服いたしましたですよ。

『【新釈】走れメロス 他四篇』は、下記の5つの物語を森見さん流に、焼きなおした物語です。
中島敦 『山月記』
芥川龍之介 『藪の中』
太宰治 『走れメロス』
坂口安吾 『桜の森の満開の下』
森鴎外 『百物語』
この5編が、森見さんの筆にかかれば、こんなに変貌する。モリミーワールドだな~。
天狗、大学祭、詭弁論部、パンツ番長、腐れ大学生・・・。京大の学生さんのイメージ(はんなりとインテリ)がガラガラと崩壊・・・。いいのか、それで・・・。

あとがきで森見さんも「書いてて一番楽しかった」とのことですが、確かに「走れメロス」が一番おバカ全開で、ツッコミどころ満載で、読んでて楽しかった。あれですよね。『夜は短し歩けよ乙女』のときの学園祭の話でしたよね。路上に転がる達磨とか、「象の尻」とか。思わず巨大な鯉を背負った黒髪の乙女を捜してしまいましたよ(笑)。

主人公・芽野は詭弁論部の部室奪回のため、図書館警察長官のもとに乗り込む。長官は「部室奪回および廃部の危機脱出のために、学園祭のステージで「青きドナウ」をバックに桃色ブリーフで踊れ」と言い出す。芽野は「姉の結婚式に出ねば。代わりに親友の芹名を身代わりにおいていく」と、悠々とその場を去る。そこから芽野の大逃亡が開始される。芽野のウソを知り怒り狂った長官の魔の手から、芽野は逃れることができるのか。芽野と芹名の深く厚い友情(信頼もなく助け合いもない)は、余人にははかり知れぬ。こういう友情の形もあるのか。
芹名・芽野・長官の3人が「青きドナウ」をバックに桃色ブリーフで踊り狂うという、おぞましくも情けな~い、トホホなシーンで物語は終わる・・・。いや~、もうどうでもいいね(笑)。

気になったのは、須磨さんの猫炒飯。すっごく危険な香りがするような気が・・・というのは、私だけ?いや・・きっと隠し味が鰹節とかなんだよね?そうだよね?誰かそうと言って~!相当美味しいらしいので、ちょっと食べてみたい気も。でもやっぱりちょっとコワイ・・・・(笑)。

元ネタである文豪たちの作品、実は『山月記』と『走れメロス』しか読んだことないんですよね。なので、残りの3作品は、そのうち読もうと思っています。ただし、いつになることやら(笑)。

『山月記』は、確か高校の現国の教科書に載ってましたね。実は私、この話結構好きでした。膨れ上がる自尊心に押しつぶされて、虎になった李徴。非凡に憧れた平凡な高校生だった私は、気が狂うまでの矜持というものに、ひどく心を揺さぶられたものです。で、その物語が・・・京大の学生が演じると・・・これかい・・・。ううむ。モリミーワールドだね(笑)。

「百物語」に森見さんご自身かと思われる「森見君」が出てきます。
~~自分は大学生活というものを大方舞台袖から眺めて暮らしてきたのだという気がした。~~ (本文より引用)
とあります。だからこそ、腐れ大学生が闊歩し、魑魅魍魎が大活躍な物語が描けるんだろうな~と思いましたね。客観性というより、横から見てるからこそ全体像もつかめ、笑いどころのツボもしっかり読み取れる、という感じでしょうか。
その森見君が見たのは、「鹿島さん」だったのかな。そうだったかもしれないし、そうじゃなかったかもしれない。森見君がそう思ったのならそうだし、ほかの人は気付かないままの事態が進行するのも、幽霊話じみてていい。
あと、この話には前の4つの物語の登場人物たちが一堂に会しています。それぞれ相当キャラが立ってるので、物語はちゃんと進むのか少々心配になりましたが、杞憂でした。お互い主張しつつも譲り合い、出しゃばらず、「鹿島さん」の不気味さを浮き彫りにしてましたね~。

(2008.04.26 読了)

〈新釈〉走れメロス
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他四篇 著者:森見登美彦出版社:祥伝社サイズ:単行本ページ数:219p発行年月:2007年03月この


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この記事へのコメント

香桑
2008年04月27日 01:12
こんばんは。水無月・Rさんのレビューを読んで、本を読み直したくなりました。
京都大学にも改革の波が訪れているようですが、腐れっぷりや阿呆っぷりを抱えられる風土の維持は大切な気がします。
その風土があってこその、もりみーワールドですから。笑
藍色
2008年04月27日 03:33
森見さんらしい味わいの楽しい短編集でしたね。
私が読んだのは前三つだけでした。
後ろふたつを読んでなかったので、元ネタを知ってたほうがより楽しめたと思います。
須磨さんの猫炒飯、気になりましたよね。秘訣を教えてほしいです(笑)。
2008年04月27日 11:23
こんにちは。
メロスがめちゃめちゃ面白くって、それ以外はイマイチ;;;だったんですけど。
水無月・Rさんのレビューを読んでいたら、香桑さん同様、読み直したくなりました。次は他の作品も面白く読めるような気がします・・・たぶん(笑)
エビノート
2008年04月27日 21:47
日本近代文学の名作が森見さんの手にかかるとこんな風になっちゃうのか~と楽しく読みました。メロスにはビックリ。全然違う方向に走り出してる~と思いきや、落としどころはやっぱり友情の物語で、これには感心してしまいました。大いに笑わせてもらったという意味でもお気に入りです。
2008年04月27日 22:08
>香桑さん。
やっぱり、国立大学は大学改革の波にもまれてるんですか。
失ってほしくないですね、森見さん描く「腐れ大学生」の気質は。その気質+京都という土地柄、すっごく物語になりますもんね。

>藍色さん。
気になりますよね、猫炒飯(笑)。芽野&芹名も研究したようですが、その秘密は解明されず。でも、何故に猫・・・(^_^;)。

>すずなさん。
確かに、メロスがダントツによかったですもんね~。「あの」学園祭の別の側面で、こんなとんでもなくトホホな友情?物語が展開していたとは・・・。是非に桃色ブリーフ同盟には、倒れるまで踊り続けてほしいですね(BGMが無くなっても!)。

>エビノートさん。
こんな友情は、なかなか築けませんよね。スンバラシイです~!信頼なんかしてないと言いつつ、ねじれた形で信頼している。結構かっこいいな~と思いました。
だけど…やっぱり桃色ブリーフで乱舞はトホホだな・・・(笑)。
2008年04月28日 21:37
こんばんは^^

書評家の藤田香織さんが言われてたんですが、作品を通じてその元ネタの作品にあたりたくなる、そんなお話ってとても素敵だなあと思います。
なんて書いておいて、未だに読めてない作品があるんですけど^^;とりあえず「山月記」の再読からだなー。
2008年04月28日 22:27
まみみさん、ありがとうございます(^^)。
そうですよね!元ネタ読んでから翻案、翻案読んでから元ネタ、どっちも楽しめるんだから素敵ですよね。
ちなみに、本日図書館で「桜の森の満開の下」を発見、早速借りてきました!
最近は現代作家ばかりだったので、スムーズに世界に入り込めるかちょっと不安ですが、楽しみたいと思います。
雪芽
2008年04月30日 20:19
こんばんは、水無月・Rさん!
この本を読むと原作に手を伸ばしたくなりますね。とはいえ、まだなんですが(笑)
「走れメロス」は真逆を描いて、それでもちゃんと友情ものになっている。は~、凄いです。楽しんで書いているのが作品からも伝わってきました。
猫炒飯気になります。秘伝のレシピをこっそり教えて欲しいけれど、ちょっとコワイですね~
2008年04月30日 22:03
雪芽さん、ありがとうございます(^^)。
楽しいお話でしたよね~、特にメロス!
こんな捩じくれた友情、腐れ大学生だからこそですよ~。ああ、愛と笑いとツッコミどころ満載!
森見さんは、やめられません(笑)。
猫炒飯・・・すごく知りたい、でも知りたくない・・・。食べたいけど、原材料とか知るのは、かなり怖いですよね(^_^;)。
2008年05月02日 00:21
こんばんは。ライブ三昧の日々を過ごしておりまして、TBが送れましたm(_ _)m
ごめんなさい。こういう、文学のお遊びは、大好きです。「遊ぶ」って大事なことだと思うんですよね。先行作品を取り込んで、自分のものにしつつ遊んでいくって、ある意味とても日本文学的で、面白い試みだと思います。もっとやってほしいですよ!!
2008年05月02日 22:27
ERIさん、ありがとうございます(^^)。
元の作品を大胆に翻案し、現代によみがえらせるその手腕、びっくりしました。
そうですね、日本文学って、翻案の文化がありますもんね~。とっても楽しかったです♪
たかこ
2009年10月22日 18:18
元の文学作品がこんなふうに!驚きでした。
実は森見さん初心者なので、モリミーワールドがまだわからないのですが、これからどんどんそまりたいと思います。

「走れメロス」が桃色ブリーフに~!きゃ~!すごい新釈ですね(笑)
2009年10月22日 22:39
たかこさん、ありがとうございます(^^)。
モリミーは初めてですか?
ぜひ読んでください。面白すぎて転げますから(笑)。
水無月・Rの大好きなトホホがあちこちで炸裂してます。
京都の腐れ大学生が、愛あるトホホ満載の物語を展開していますよ♪
しかし、桃色ブリーフは・・・どうなんでしょうねぇ(笑)。

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