『厭犬伝』/弘也英明 ○

人の骸から生えてくる「汚木(よごれぎ)」。それを基に作った「仏(ほとけ)」同士を戦わせる「合(あわせ)」という遊興のある、異世界の物語、『厭犬伝』
弘也英明さんのデビュー作にして、第19回日本ファンタジーノベル大賞・受賞作。

主人公・厭太郎は、職務の際に死なせてしまった咎人の娘・犬千代から、合による仇討を挑まれる。通常なら認められないような仇討なのに、東都の役人はおろか王族まで巻き込んで、逃げられぬ状況に。厭太郎と犬千代の命をかけた合の裏側に仕組まれた、皇木(すめらぎ)族の魂胆とは?

とまあ、こんなお話です。部分部分は面白かったんですけどね~。全体的になんか足りない感じが・・・。まあ、デビュー作ということなので、この雰囲気を発展させて行ってくれるといいなぁ、と思います。(←うわっ偉そう~)

人の骸から汚木が生えて、それを加工して人形を作り、それを戦わせる遊興。戦わせるには依姫(よりひめ)が必要だったり、戦いで破壊され動かなくなった仏に緑玉を食ませると元通りに戻ってまた戦えるようになったり、となかなかダークファンタジー調な設定である。ならばもっとダークに走っても良かったような・・・。

女に見まごう程の美貌の厭太郎だが、東都の警護をつかさどる岳稜警(がくりょうけい)の中でも強靭さにおいては右に出るものがない。幼い頃、士族の娘でありながら山に暮らしていた母を皇木族に殺され、その際男性の証を切り落とされている。都を浮浪した末に、叔父である東都警の幹部・水森柾兼に拾われて、岳稜警となった。

仏師の娘・犬千代も愛らしい外見ながら、依姫としての才能も、仏を操るその手腕も最高レベル。七路流を継ぐ弟が流派内の勢力争いから外されそうになり、その後押しの力を借りるために皇木族の申し出に乗って、厭太郎を父の仇として合による仇討をすることに。

皇木族のアカド邑のウムジは、厭太郎によって奪われた穢された祭事用の仏のために、厭太郎を特殊な方法で殺そうとし、そのために犬千代を利用する。

厭太郎の幼馴染の遊女・笹乃や、犬千代に勝つために仏を操る技術を上げようと訪れた村の合の達人・鵜市や臆心の力を借り、仏の躁術、合の戦略を磨いてゆく。気まぐれで気短な戦い方しかできなかった厭太郎は、犬千代や他の躁者との大戦や対策会議で少しずつ成長してゆく。

色々と、世界観というか設定が簡単なようで、難しい。説明が足りない気がする。犬千代や厭太郎の心情や成長の過程も、やや安易に過ぎるきらいがあったし。笹乃もあっさり殺されちゃうし。
私としては、この世界観でもっといろいろな物語を読んでみたい気がするな。厭太郎の母が皇木族に何をしたのかとか、東都の王族のこととか、都民には隠されている皇木族の謎に包まれた生態とか、東都より昔からある西都のこととか。

面白かったけど、何だか物足りない・・・。このまま分からなくてもいいやと思うような感じがしない・・・。うう~む。

(2008.04.04 読了)
厭犬伝
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著者:弘也英明出版社:新潮社サイズ:単行本ページ数:278p発行年月:2007年11月この著者の新着


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この記事へのコメント

エビノート
2008年04月05日 21:06
こんばんは~。
合の場面が多くって、もうちょっと突っ込んで描いてほしいと思う部分で物足りない感じはしましたよね~。
水無月・Rさんはもっとダークな感じもOKなんですね。私は細かい描写を想像しないように読んでました~うげげっっとなっちゃいそうで(^_^;)
2008年04月05日 22:27
エビノートさん、ありがとうございます(^^)。
グチャッとしたグロさはちょっと・・・ですが、汚木のイメージは乾燥してるので、何とかいける感じです。
仏には元になった人間の怨恨を含んでいる、というのがダークですね。怨念が強ければ強いほど、仏としては強いのかも・・・。

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