『世界の終わりの終わり』/佐藤友哉 ○

これは、夢が叶ってしまった青年の、再生の物語。
作者の佐藤友哉さんは、『鏡家サーガ』シリーズを何冊か読んだことがあります。あのシリーズはサイキック風味のバイオレンスな、勢いのよい物語でしたが、『世界の終わりの終わり』は主人公の青年・僕の底辺生活から更にどん底へ、そしてそこからの再生を物語る、苦くそして最後にささやかな救いのある、読了感の心地よい物語でした。

作家を夢見ていた青年が、新人賞を受賞して作家になるが、売れなくて出版社からクビを言い渡され、フリーターとして籠っていた故郷(線路を越えられないトラウマ)を乗り越えて東京に出てきて、けれど東京に出ても作品は書けず、自分の精神的分身と自殺未遂を乗り越えて、再生する。

これは、佐藤友哉さんの実体験なのかしらん。結構壮絶だと思うんですよね。
出版社の新人賞を取って数冊長編小説を出したはいいけど、売れなくて赤字、クビを言い渡され、フリーターを続けながら、小説を書いていた青年。ラジオのノイズにのって現れる、脳内妹と自らの影。このままでは終わってしまう、東京へ出て復讐小説を書くのだと、妹の事故死からトラウマになって越えられなかった線路を何とか乗り越えて上京した。(第1章「世界の終わり」)
上京したはいいが、東京では自分は擦り減るばかり。上京するなり出会った宗教っぽい団体かぶれの少女と同棲するが、やはり小説は書けないままその少女に自殺されてしまい、酒とタバコに溺れる自堕落な生活を送るようになる。(第2章「世界の終わりの終わり」)
小説を書くこともなく、貯金も尽きかけ、逃げるよう北海道へ戻る。残してきたはずの脳内妹が出現。「お兄ちゃん再生計画」を発動するが、筋が通らない。筋が通らないと不満を持つ自分は、物書きとしての整合性を求めているからなのか・・・。そして、「もういい、終わった」と世界の終わりを見て追い詰められた僕は、首つり自殺に走る。苦しみ。脳内妹自分の影と「作家にならなかった自分」との逆襲と応援。そう。応援。それに気付き、僕は再生した。小説をまた書き始め、編集者との打ち合わせに走る。「世界の終わりの終わり」は、「はじまり」なのだ。(第3章「「世界の終わり」の終わり」)

夢が叶って、そしてその夢が終わり。
もがき苦しむ青年の姿が、実にリアルだ。その青年が、脳内妹や自らの影などの別人格に頼り、惑わされるところなんか、非常に今風だと思う。
グダグダな「今」から訣別するために、トラウマを超えて上京し、だけど都会でも夢は戻ってこない。結構2章から3章は、読んでて苦しかったな。このまま青年が、堕ちるだけだったら救いはないし、そんな風になりそうだったから。
ベタではあるけど、自分の中の別の存在たちに励まされ、何とか光をつかむ。とてもほっとした。このまま堕ちて堕ちて、狂ってしまうのではないかと、「夢は叶ってしまったら終わり」だなんて辛すぎるし、未来がなさすぎる。絶望のまま終わる物語は苦手だから。

自分の中からの応援。外からの応援。それを素直に感じて、前向きに生き始めた主人公、ささやかだけれど、夢のためにもう一度努力する、その姿勢が良い。これから幾多の山や壁にぶつかるだろうけど、彼はきっと大丈夫。そう思えた。だって、世界はぐるっと回って、またはじまったのだから。

(2008.04.17 読了)

世界の終わりの終わり
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著者:佐藤友哉出版社:角川書店/角川グループパブリッサイズ:単行本ページ数:292p発行年月:200


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