『きつねのはなし』/森見登美彦 ○

これは・・・判断が難しいな~。たぶんね、この物語を最初に読んだら、森見登美彦さんにはハマらなかったような気がします。私的には、愛と笑いとツッコミ処にあふれる、モリミーワールドが好きなので・・・。
良くも悪くも京都な物語、って印象ですねぇ。魑魅魍魎・・・しかもダークなほうで。

『きつねのはなし』には「きつねのはなし」「果実の中の龍」「魔」「水神」の4篇が収められています。微妙にパラレルなんではないでしょうか。骨董屋の「芳蓮堂」(ナツメさん)、怪しげな屋敷のきつね面男・天城、妙に胴の長い鼬のような妖物「魔」。その他あちこちで登場する人やモノや場所や設定がリンク。けれど、少しずつ何かが違う。それが、居心地の悪い感じを醸し出して・・・。

ですが、意外というか驚くべきことに「怖さ」はないのです。私は怖くはなかった。ひたひたと忍び寄る「異界」は怖いけれど、この4篇は「一見さんお断り」な世界のような気がするのです。京都はそういう土地柄、という既成概念からかもしれないんですが。単なる一読者は、この微妙に歪んだ世界に引っ張り込まれることはない。物語の背景(千年の長きにわたる「都」としての在り方・その妖性)にシンパシーを感じることが出来なかった私は、この作品の世界の外側から見ることしかできないような気がしました。入ることは出来ないから、怖くない、ということです。けど、ちょっと疎外感だな~。

物語の根底に流れる「京都」という土地の情念の深さ。人と妖物が混在するその世界は、余所者を遮断している。私は遮断される側。だが・・・遮断されるからこそわかることもある。この物語は、広がりつつ閉じている。その閉鎖された世界にうごめくのは、「モノノケ」か「ヒト」か?
長く存在し続けたものには、意志や力が宿るという。もしかしたら都市にも、湖や疎水や川などの地形にも、何かが宿っているのではないか。
清澄なものではなく「魔」のような生臭い、何かが。その存在に気づけるのは、京都(京都という土地の持つ歴史や怨念や感覚など)の波長ににシンクロ出来る人だけなのかもしれない。

怖くはないし、美しい世界を描いているわけでもなく、かといっておぞまし過ぎる世界でもなく。なんだか引っかかるけど、それが何かを突き詰めることは難しくて。そんな茫洋とした、物語でした。
・・・ッて!全然、レビューになってないんですけど・・・(T_T)。ムズカシイです、この作品は。

ちなみに。
「水神」の樋口家は『夜は短し歩けよ乙女』に出てきた「天狗」の樋口さんの流れでしょうか?それともパラレルかしらん?微妙に気になってます。

(2008.05.17 読了)

きつねのはなし
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著者:森見登美彦出版社:新潮社サイズ:単行本ページ数:268p発行年月:2006年10月この著者の新


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この記事へのコメント

香桑
2008年05月19日 00:14
こんばんは~。
そういえば、同じ「樋口」さんでしたね。すっかり失念しておりました。今、読み返してみましたけれども、一族の中の一人だったりしたら面白いですね。龍の力を借りて天狗になったのか、天狗だから龍を封じることもできたのか……。想像が膨らみます。
2008年05月19日 08:59
香桑さん、ありがとうございます(^^)。
同じ「樋口」さんだけど、違う感じもします・・・だからパラレルなのかな~と思ったりもしたのですが・・・。
あ、そうか!龍の力と天狗の力。そういう「妖」の力つながり!うわぁ~、変な妄想に走れそう(笑)。
2008年05月19日 11:03
こんにちは。
「京都」という都の閉鎖性みたいなものが描かれているようで、こういう暗いというかジトーっとした重い感じが好きでした。

樋口さん!私も思い至りませんでした;;;
2008年05月19日 22:00
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
森見さんの物語は「あれはあの人?」的な微妙な重なりがたまにありますよね。
で、樋口さんという名前に目を付けたんですが、実際のところどうでしょう~?
・・・と、つながる部分を妄想し始める私(笑)。
雪芽
2008年05月20日 00:16
こんばんは!
京都という場に歴史が重ねられてきたように、人の情念も幾重にも重なっている。この重さ、仄暗さが好みの作品でした。
樋口さん、そういえばそうですね!読み返してみよう。
2008年05月20日 10:54
お久しぶりです、森見フィーバーですね♪私はもともと民俗学ものとか妖怪ものとか怪しげなものが好きなのでこの作品はかなり好きです。森見さんの作品では結構異色なきもしますが。トラバさせていただきました~。
エビノート
2008年05月20日 19:53
きつねとたぬきじゃ、随分雰囲気が違ってましたね~。でも、どちらも京都ならあり得るかも!という雰囲気が、魅力的でした。
樋口家には全く気付いてませんでした~。わぁ~どうなんだろう?繋がってたら面白いですね。
2008年05月20日 22:09
>雪芽さん。
京都という土地に蓄積される何かが、濃い空気感で漂ってますよね。不気味な感じが何とも言えない・・・。

>空蝉さん。
森見作品、ハマりつつあります(^^)。
「もふもふな毛玉」とか「黒髪の乙女」とか愛と笑い(と妄想?)の満ち溢れる物語が多いですもんね。確かにこの作品は異色ですね。私も嫌いじゃないですが、どうも京都という風土にシンクロできなかったです(悔しい)。

>エビノートさん。
きつねとたぬき・・・(笑)。やっぱり阿呆の血が流れてないんですかね、きつねの方には。
確かに京都の表裏(闇と笑い←光じゃなくて(^_^;))な感じで、比較してみると面白いですね♪
june
2008年05月21日 15:55
私はこのダークな感じ、すごく好きです。でも水無月・Rさんの感じた疎外感というのもすごくわかります!でも、一見さんお断りって疎外されてるんだけど、どうしても覗いてみたいぞ!と思っちゃったんです。憧れと疎外感がないまぜになったような感じでしょうか。暗い喜び?(笑)。
私もこれ、「夜は短し~」とパラレルかなって思いました。出てくる古本屋さんの名前とか・・。
2008年05月21日 21:27
こんばんは。コメントが遅れました。ごめんなさいm(_ _)m
この世界は、見事に閉じてますねえ。
京都は見事に盆地なので、周りを山に囲まれています。そのせいか、京都生まれの友人などは、山に囲まれていないと、落ち着かないと言いますねえ。奈良も盆地ですが、全く空気の質感は京都と違います。「土地」の持つパワーというか、雰囲気は、関西はそれぞれに非常に強い。その雰囲気が、肌で伝わるのが面白いですよね!!
2008年05月21日 21:54
>juneさん。
私もダークなのは、結構好きなんですが、入りたいけど入れない疎外感が、悔しかったです。
モリミー作品をもっと読んだら、あの一見さんお断りな雰囲気にもする~っと紛れこめる・・・といいなぁ、と思っております。
やっぱり『夜は短し~』とリンクする部分ありますよね。

>ERIさん。
土地が持つパワー、侮れませんよね~。たぶん新興都市で『きつねのはなし』が展開するとしたら、全然違うものになったのではないでしょうか。じっとりとした恐怖より、乾燥した殺伐さで、鋭く切りつけてきそうです。
土地の風土というのかな、そういうパワーを持った作品て、面白いです。好きだな~。
たかこ
2010年04月01日 21:54
たしかに、これが初森見作品だったら、あとは続かないと思いました。
今までのあほさ加減があってこそ、妖しさがひきたっているんではないでしょうか。
疎外感、私は感じなくて、すご~く怖かったです(^-^;
2010年04月08日 23:21
たかこさん、ありがとうございます(^^)。
言い方は良くないんですが、〈おまえは呪う価値もないよ〉って言われてる感じがして、私的には怖くなかったです・・・(^_^;)。
こういう作風も悪くないんですが、やっぱり「愛と笑いとツッコミ処満載」なモリミーワールドの方が、私は好きですなぁ。

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