『チルドレン』/伊坂幸太郎 ◎

私、今年は伊坂幸太郎をたくさん読みたいぞ~と考えておりまする。てな訳で、『チルドレン』です。
最近『魔王』『ゴールデンスランバー』など、ちょっと政治色というか安易に流される危険性を問う物語を読んできてたので、この物語にはホッと癒されました。

主人公は・・・、筋の通っていそうな屁理屈を真剣にこねる男・陣内なのかな?といっても5章ある物語の語り手は陣内ではなく、陣内の周囲の人間が陣内が関わってくる物語を語るのですが。
伊坂作品には、よく出てきますよね、こういうタイプ。間違ってないんだけど、微妙に屁理屈な、唯我独尊、わが道を行くぜ!みたいな感じの。その周りの人たちがその唯我独尊な人を、憎めないと思ってるあたりが、とってもいい感じですよね。

「バンク」
語り手は、陣内の友人・鴨居。陣内の大学生時代。
銀行強盗に巻き込まれた陣内・鴨居・盲目の永瀬。その強盗事件は、銀行員たち共謀の狂言だったのではないか?
「チルドレン」
語り手は、陣内の職場の後輩・武藤。陣内は家庭裁判所調査員。
武藤の担当する非行少年とその父と称する人物の奇妙な言動。陣内の予言に振り回される武藤。
「レトリーバー」
語り手は、「バンク」で知り合った永瀬の彼女・優子。陣内は学生で家裁調査員の受験勉強中。
失恋した陣内のために、時間は止まったのか?事件の現場に偶然居合わせてしまった、陣内・永瀬・優子。
「チルドレンⅡ」
語り手は、また武藤。陣内は家庭裁判所の調査員・少年事件担当のままだが、武藤は家事事件担当へ転属。
武藤の担当する離婚調停と陣内の担当する試験監察中の少年の関係とは?
「イン」
語り手は、永瀬。陣内は大学生らしい(バイト中)。
陣内がデパートの屋上でバイトしていると聞き、バンドをやってると思って訪ねる永瀬と優子。そこで陣内がやらかした意外なこととは。

う~~ん。あらすじと語り手と時間の流れだけ書いてみましたが、この物語の面白さを全然表現できてないな~。
5つの短編が非常にうまく絡み合って、1つの長編になってる感じですね。この辺の構成のうまさが、とても伊坂さんらしい。破天荒で独自の正義基準をもつ陣内の奔放さと、それに戸惑ったり振り回されたりしつつも、陣内とよい絆を築いてゆく登場人物たち。読んでて爽快な気分になりましたね。

銀行強盗の人質になってるのに「ギターを弾かせろ」とねじ込んでみたり、芥川の『侏儒の言葉』に「トイレの落書き名言」の小冊子を作って挟んでおいて武藤に「担当少年に渡せ」と言ってみたり、「俺の失恋のために世界が止まってる」と言ってそれを証明しようとしたり、担当少年の父をバンドに誘い込んだり、着ぐるみバイト中に逆切れして辞めたあと、もう一度その頭をかぶって自分の父親を殴りにいったり。
なんつー、ハチャメチャさだ!こういう人が、現実にお友達だったら…・面白いかな?それとも困るかな?微妙ですねぇ~。物語として読む分には非常に爽快で、思わず「グッジョブ!」と言いたくなっちゃいますけどね。
こういう人が「家裁調査官」なんて堅そうな職業、似合わないかと思いきや、逆に上手くやっている。

陣内だけじゃなくて、みんな魅力的。特に盲目の青年・永瀬はいい。見えないからこそ、その他の感覚を駆使して、物語のミステリー部分のなぞ解きをしたり。永瀬の彼女・優子が、永瀬の盲導犬・ベスに対抗心を抱いているのも面白い。割と常識人の鴨居が、陣内に対して甘かったり、複雑な気持ちを抱いてたり。武藤も陣内を先輩として頼りつつ、「この人は変な人すぎる」という認識も持ってたりする。

ちょっと、登場人物たちに都合がよすぎる展開な感じもあるけど、サッパリした読み心地でほっこりと笑えるところがいい。時々「いや陣内、それはないだろ!」とツッコミを入れつつ、楽しみました。
陣内の名言はいくつもあるけど、一番響いたのは、
~~そもそも、大人が恰好良ければ、子供はぐれねえんだよ~~ (本文より引用)
ですね。確かに、そうだな~。私ももうちょっと恰好良い大人にならねば…。

(2008.05.21 読了)
チルドレン
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講談社文庫 著者:伊坂幸太郎出版社:講談社サイズ:文庫ページ数:347p発行年月:2007年05月こ


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この記事へのコメント

やぎっちょ
2008年05月22日 17:25
水無月・Rさんこんにちは♪
この本は伊坂さん初読でした。ゴールデンスランバー読んだあとに読むと、少しさっぱり感があるんでしょうか。そんな気がしました。
やぎっちょは初読だったのでカルチャーショック大でした★
2008年05月22日 17:55
水無月・Rさんこんにちは^^
わたしもやぎっちょさんと同じく、これで伊坂さんに入りました。とても好きな作品で、これと「ゴールデンスランバー」のどっちかが伊坂作品のマイベスト1かも、ってくらい。

こういうちょっと破天荒なキャラのほうが、案外固い仕事にぴったりハマるらしいですよ。現実世界でも。わたしはしょせん小市民ですので、陣内にはひたすらうっとり…です^^
エビノート
2008年05月22日 20:54
やっぱり陣内ですよね~。むちゃくちゃやなぁ~と思いつつ、次はどんなことをやってくれるのか楽しみにしてたり。
万人のお手本にはならないのかも知れないけれど、陣内のこと、カッコイイなと思っちゃいました。
2008年05月22日 22:45
>やぎっちょさん。
確かに「魔王」とかとは、別系統な感じがしますね。
でも、物語の展開のうまさとか、登場人物たちの絆の強さとか、そういう伊坂さんらしい所は共通してるように思います。
軽快で、気持のよい作品でした。

>麻巳美さん。
揺るがない自分をもってる陣内は、恰好いいですよね。独自基準で動くから、小市民はびっくりしちゃうんですけど(笑)。
私は『ラッシュライフ』か『死神の精度』かな・・でもこの作品もいいな~。

>エビノートさん。
陣内の傾向がわかってくると、「次はどういう風にかかわってくるのか」と楽しくなっちゃいますよね。
しかも予想をはるかに上回る、ハチャメチャぶり(^_^;)。
私も陣内は、カッコイイと思います。
2008年05月23日 14:54
こんにちは。
陣内のとっぴな発言や行動に、最初は「なんとまぁ☆」と思いつつ読んだんですが、途中から次は?とワクワクというか楽しみになってしまいました♪
また活躍?する陣内に会いたいですね~。
2008年05月23日 22:16
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
あの独自目線の正義は、スカッとしますよね~。
友達としては判断が微妙ですが、物語の登場人物としては、わくわくしちゃいますよね。是非是非、もっと活躍して欲しいですね。
june
2008年05月27日 15:58
私も水無月・Rさんの抜き出した陣内のセリフ、すごく印象に残ってるし好きです。
名セリフですよね!
陣内が友達だったら・・好きなキャラなんですけど、やっぱり微妙です。というより、思い切って私が陣内のようになれたら!って思います。彼の思考回路には憧れます。
2008年05月27日 22:24
juneさん、ありがとうございます(^^)。
おお、juneさんが陣内化しますか?!
確かに、あの思考回路はカッコいいですもんね。いろんな意味で潔ぎいいですよ♪

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