『名もなき毒』/宮部みゆき ○

宮部みゆきさんは、読みたいけど、なかなか取りかかれない作家さんです。というのも、話が複雑に入り組んでたり、登場人物の人物像を捉えるのが相当難しかったり、で・・・。更に言うと、発表作品数もかなり多いですもんねぇ~。私、出来れば同じ著者の作品は制覇して、作品のリンク部分を探してみたりしたい人なので、となるととても踏み込むのに勇気がいるわけなんですよね~(^_^;)。
なんせ、読みたい本リストは長くなるばかり・・・・な遅読人間なものですから・・・あはははは。

『名もなき毒』。それは、実際人体に直接害ある毒素だったり、環境的な汚染だったり、人の心に宿る毒だったりと、様々な「毒」が描かれる。全てを防ぎきることは出来ないけれど、それが出来たら・・・と主人公・杉村は思うのだが。

巨大コンツェルンの総帥の娘(婚外子)を妻に持つ杉村は、そのグループ全体の社内報を担当する部署の記者である。結婚前は児童書の編集者であった彼は、総帥の女婿であることをひけらかさず、胡麻化さず、仕事を全うしている。
その彼のアシスタントである原田には虚言癖があり、トラブルの続発により、解雇される。虚言と妄想の果てに彼女は、編集部に対して中傷誹謗の手紙や嫌がらせ電話などの報復に出る。杉村はその相談に立ち寄った私立探偵・北見のところで祖父を連続青酸カリ殺人事件で亡くした女子高生・美知香と知り合う。美知香の相談に親身に付き合ううち、原田の行動は過激さを増し、とうとう編集部の水に睡眠薬を盛るという事件を引き起こす。
そうこうするうちに美知香の祖父の事件の真犯人が判明し、自首に付き合う杉村だが、突如原田が自宅に乗り込み、娘を人質に取ったため、犯人を連れて自宅へ戻る。なんとか原田を捕らえ、警察に引き渡し、一連の事件を振り返る杉村。その身の回りには様々な毒が渦巻いているのだ、と改めて知る。

ちょっと・・・中途半端だったかな~。後半、色々な毒が出てきすぎた。ハウスシック症候群、睡眠薬、青酸カリ、土壌汚染、そして、人の心の闇に潜む感情的な毒。杉村がそれを解毒するわけではなく、受け入れそして見送るせいかな~。
確かにね、読んでて、毒をすべて受け入れたら、大変なことになっちゃうのは分かる。それぞれの事件も、一応の解決は見られる。だけど・・・人に潜む毒は、際限がない。羨む気持ちと向上心は表裏一体だし、「ひと」は他人に劣等感や優越感を抱くことが日常的だ。毒は消せない。
たぶん宮部さんが描きたかったこととは違うんじゃないかという気がするけど、私はそう思ってしまった。

物語中にいろいろ出てくる「毒」の中で、一番たちが悪そうなのが原田いずみである。でも私は、彼女の焦燥と怒りと苦しさが解らなくもないのだ。もちろん、原田の取った行動は、間違っている。他人に対して「くそぅ、○○め」と思っても行動に出ないというのが、普通なのだ。だけど、解ってしまう。その気持ちをどこへ持って行ったらいいのかという、捌け口を求める気持。私の中にも、それは存在する。
そういう意味でも、ちょっと読後感が悪い・・・。

ちなみに、また、やっちゃいましたよ。シリーズというか繋がる前の話である『誰か』を、読んでません。物語中にやたら出てくる「梶田姉妹事件」はすでに発表されてる作品なんですよね。読んだ方がいいのかなぁ・・・。

(2008.08.01 読了)
名もなき毒
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著者:宮部みゆき出版社:幻冬舎サイズ:単行本ページ数:489p発行年月:2006年08月この著者の新


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この記事へのコメント

2008年08月03日 20:29
水無月・Rさんこんばんは。
こちらの記事で忘れてた内容を思い出しました。原田いずみは悪役なのに、まったく理解できないわけじゃないのが嫌でした。こんなところ、自分にだってあると気づいて少なからず不快になったり。そういう自分自身の毒にも気づいておきなさいよ~ってメッセージが含まれて…たりするんですかね。うーん、わかりません。
2008年08月03日 22:04
麻巳美さん、ありがとうございます(^^)。
そうなんですよ。原田のあの瘴気のような悪意。でもそれは、自分にもある。外へ噴出することはないけれど、自分の中で渦巻いている。
そう気づかされて、ちょっと苦しかったですね。
はッ!そうか、そういうメッセージが!そうかも知れませんね。
藍色
2008年08月04日 04:11
こんばんは。
人の心の奥底に潜むいろんな毒、読み応えがありました。
原田いずみは強烈でしたね~。
自分に置き換えることができるのも、怖い部分でした。

宮部さんの本は、ブログ始める前にだいぶ読んじゃったので、記事が少なくて残念です。
連続物は少なめですが、一冊が長いのがちょっと苦労します。
読み始めると、すぐ終わっちゃいますけどね(汗)。
2008年08月04日 21:31
藍色さん、ありがとうございます(^^)。
「ひと」は、怖ろしいものです。そして、私も「ひと」である。
強烈に毒を吐き散らし、自分の弱い部分を鎧う「ひと」。表に出るか、内に潜むか。その違いだけなのだと見せつけられた思いがします。
宮部さんの作品は、すごいな~と思うのですが、そのすごさゆえ&作品数の多さゆえに、なかなか手が出せません(笑)。

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