『花宵道中』/宮木あや子 ◎

『花宵道中』は、第5回「女による女のためのR-18文学賞」大賞と読者賞を同時受賞したという、色々な意味で「水無月・Rなんかが読んじゃって良いのだろうか」という戸惑いが発生してしまい、つい手を出し損ねていた作品です。
でも、読んでみて結果は、読んでよかったわ~(^^)です。
しっかし、これがデビュー作とは、怖ろしいものです、宮木あや子さん。

R-18な部分については、コメントは差し控えさせていただきます・・・(^_^;)。
どっちかっと言うと、文章の美しさ、江戸吉原の風景や、そこを行き交う人々の猥雑さ・華麗な虚しさ、登場人物たちの哀れなまでに真っ直ぐな心意気など、そういう部分に惹かれた。

江戸吉原は山田屋の遊女・朝霧は、ふとしたことで知り合った上方の男・半次郎に惹かれる。座敷で再会した時には、馴染みの客・吉田屋におもちゃにされ、羞恥にさらされる。その後、半次郎は吉田屋を殺害し、江戸を逃亡。それから月日がたち、朝霧の元に半次郎は花魁道中の装束を持って現れ、朧月夜に照らされて朝霧はたった一人の道中を演じ、数日後に半次郎は追手につかまり、縛り首になる。そして、朝霧はそれを追っておはぐろどぶに身を投げ、命を絶つ。

第1章の朝霧の物語「花宵道中」から、朝霧の妹株遊女・八津の更に妹株でまだ新造の茜の物語「薄羽蜉蝣」、朝霧の姉遊女で京の島原遊郭から移ってきた・霧里とその弟・東雲の物語「青花牡丹」、八津とその妹株遊女・三津の物語「十六夜時雨」、三津を想う山田屋の看板遊女・緑の物語「雪紐観音」
どれもが、悲しい恋の物語である。遊女と言う身分であるが故に、真に思う相手と添い遂げることは叶わない。それが職であるから、客に躰を開かなくてはならない、苦渋。どんなに教養や芸を極めても、それは売り物でしかない。それでも、彼女達は手を抜くことなく、「仕事」に徹する。その悲壮なまでの姿は、哀れなどと言ってはいけないぐらい、気高い。

途中、全部の人間関係をからめ過ぎでは?という部分もあったけれど、朝霧を中心に、そこから様々に広がる物語の繋がりに、どんどんと惹き込まれた。愛しい人を想う心の強さが、痛々しい。自分の中に一本のスジを通して、背筋を正して道中をする遊女たち。道中は出来なくても自分を卑下せず、きりりと前を見つめて自らを全うする、強さ。
誰もが、悲しい境遇を背負いつつ、それを押し隠して、宵の吉原を彩る華となる。

文章から浮かび上がる、遊女たちの美しさと、その真実。細やかに描かれる、女たちの心情。なかなかに良い感じです。他の作品も読んでみたいなぁ。
M市図書館には宮木さんの作品が実はこの1冊しかないので、リクエストをかけようと思っております。

(2008.09.20 読了)
花宵道中
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著者:宮木あや子出版社:新潮社サイズ:単行本ページ数:251p発行年月:2007年02月この著者の新


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この記事へのコメント

2008年09月25日 08:38
こんにちは、お久しぶりです。仕事が忙しく本が読めない・・・けれど水無月Rさんの書評を指標に少しでも追いつかねば!(笑)花宵道中、いいですよね!というか宮木作品はどれも逸品!オススメですよ。花魁そのものが魅力あるのかもしれませんが;;
2008年09月25日 22:30
空蝉さん、こんばんは(^^)。
いやいや、私なんかを指標にしてはなりませぬぞ(^_^;)。
ヘタレが好きだ~!とか、萌え萌えだ~!とか、なんでこの本リスト入りしたんだっけ~?とか、無礼講な記事ばっかりですから・・・(-_-;)。
宮木さんの描く世界が、気になりだしました。とても美しいのに、女たちの背負うものは暗く陰惨。けれども、彼女たちはその自尊心でその世界を支え、乗り越えて行く。
さてさて、M市図書館に購入リクエストを出しに行かなくては♪
2008年10月16日 21:25
水無月・Rさんこんばんは。
コメントいただいてたのに遅くなってすみません……
今のところ読んだ宮木さん作品で一番好きだったのはこの「花宵道中」かもしれません。でもそのほかの作品もどれも雰囲気があっていいですよーM市図書館がリクエストにこたえてくれるよう、陰ながら応援しております!
2008年10月16日 21:32
麻巳美さん、こんばんは~(^^)。
いえいえ、お気になさらず。
M市図書館、購入リクエストは一人1冊ずつしか受けてくれないので、他にリクエストをかけてるので今順番待ち中なのです・・・。むむう~。
他の作品もすごく楽しみです~。
エビノート
2009年01月09日 20:26
こんばんは。
切ないだけじゃなく、遊女たちの誇りにも心打たれる作品でしたね。他の遊女になびいた元客に対する啖呵とかしびれました~。
宮木さんの本、実は自分で購入しているのに、図書館にリクエストしちゃいます。他の人にも読んでほしいなぁ~と思うから。最近はリクエストしなくても購入してくれてるみたいで、嬉しいです。
2009年01月09日 22:58
エビノートさん、こんばんは(^^)。
遊女というとどうしても、売られてきた女の悲しさみたいな部分が描かれることが多いようですが、この作品は誇り高く生きていく姿が描かれていて、とても好感が持てます。
おお、エビノートさん素晴らしい!
そうですよね、リクエストしないで目に付いた本を選ぶ人も多いですもんね♪
たかこ
2009年11月05日 10:42
初宮木さんがこの本でした。
図書館で「セレモニー黒真珠」も一緒に借りてきました。
このせつなさ、気高さ、遊女=エロいという偏見があった私にとっては衝撃でした。
それにしてもデビュー作でこれ、完成度高いですね。
他の作品も楽しみです。
2009年11月06日 23:04
たかこさん、ありがとうございます(^^)。
宮木さんは、凄いですよ~!
情感の高い、美しい物語・・・。R-18文学大賞だからって、エロいなんて思っちゃいけないですな。とても素晴らしかったです。
でも、『セレモニー黒真珠』は・・・(笑)。
ぜひ読んでくださいね♪
2010年02月01日 12:45
ホントにこれがデビュー作!?と疑いたくなりました(笑)凄いですね~。
遊女達の切なく、悲しい恋物語に胸を締め付けられ、彼女たちの強さに心を胸を打たれました。
素晴らしい作品をおススメいただいてありがとうございました!これから他の作品も読みまくります!
2010年02月01日 22:44
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
お好みに合ったようで、私も嬉しいです♪
これがお好きなら、ほかの作品もきっとお心に響くと思いますよ!
遊女というと、苦界の悲しさばかりが目につきますが、強い心を持って凛として生きる美しさが描かれていて、本当に素晴らしかったです。
香桑
2011年09月15日 10:25
みなさんが読んでいなかったら、私もこの本を読んでいなかったと思います。
R-18というくくりがないほうが、この本の魅力が割引されずにすむような気もします。
「花宵道中」のロンマンチックさにきゅーんと掴まれ、あとはぐいぐいという感じでした。一番好きなのは八津かなぁ。女性のための素敵な小説だったと思います。
2011年09月15日 16:41
香桑さん、ありがとうございます(^^)。
なんというか、本当に素敵な物語でしたよね!
凛とした彼女たちの姿、ままならない恋心、それでも背筋を正して歩いて行く姿。素晴らしかったです。
だけど、本当にこれがデビュー作なんですから、恐ろしい作家さんです♪

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