『聖母』/L・V・S=マゾッホ △

ううむ。なんだか非常に引っかかる作品である。
例によって例のごとく、かなり前の書評で気を惹かれたんだけど・・・ええと、なんでだっけ。(←記憶力弱すぎ。)
訳者あとがきを読むまで、作者L・V・S=マゾッホが、いわゆる「マゾヒズム」の語源になった小説の数々を著した作家だとは全く知らず、ビックリしました~(笑)。
と言っても、訳者によるとこの作品は「マゾヒズム」とは無縁、なのだそうですが。

『聖母』は、ロシアのガリツィア地方のとある農村に起こった、新興宗教の女教祖・マルドナと、彼女を愛し裏切りの果てに十字架にかけられ命を散らした男・ザバディルの物語である。

マルドナは、天性の支配力、魅力、美貌、知力を軽々と駆使し、神の代理人として君臨している。誰もが彼女と知り合えば、魅了され、自ら膝を屈して、崇拝することになる。主人公ザバディルも同じく、彼女の魅力に囚われるのだが、時にその気持ちが揺れ、また時に一人の女として愛し憎み、それでも結局、身も心も捧げてしまう。

思わず、「みんな、目を覚ませ!」と叫びたくなった私は、宗教的熱狂や集団心理に抵抗力が高いのかも知れないな。

聖母は信者たちを断罪する。浮気をした女は信者たちに木の枝で鞭打たれ、聖母の神聖を侮辱したものは寄ってたかって足蹴にされる。それでも、信者たちは聖母・マルドナを信望し、その魅力にひきまわされるのである。

持って生まれた天分を最大限に利用して、ロシアの農村を支配したマルドナ。マルドナを愛し受け入れられても、聖母としてのマルドナまでも自分のものにと欲したザバディルは、それが叶えられないことで、マルドナを裏切る。神聖を取り除けば、ただの痴情のもつれの殺人なのだが、何故か周りはの人間は、自ら出頭して牢にあった彼女を助け出し、逃亡までさせてしまう。

うう~む。帝政末期のロシアの閉塞感から生まれた、信仰なのだろうか。あまりに安易にみんなが魅了されてしまってる気がする。マルドナの才能の一つでも欠けたら、物語にはならなかっただろうに。それだけに、どうしても私にはマルドナに生身の感触がしないのだ。
時代が自がえば、「魔女」扱いされたのではないだろうか。

ところで、「マゾヒズム」には無縁とありましたが、所々でその片鱗はあるような気がします。信者が罪人を鞭打つところとか、ザバディルが「どんな苦しみも与えて下さい」と懇願するところとか、その苦しみをマルドナから与えられることに、秘かに且つ無上の喜びを感じているところなんか、まさにマゾヒズムなのではないでしょうかね。うう~む、ノーマルな小市民としては、全く理解が出来ないデスよ・・・(あんまり理解したくないしな~)。

ちなみに、カロンという浅ましいまでに大食の男が出てくるのだけれど、すっごくイライラさせられました。マルドナの宗教に帰依してる人間は、あんな男でも許容できるのかしらん。とにかく食い意地が張っていて、しかもそれを隠そうと上っ面なことばかり言いつつ、目は食べ物をしっかりチェック。食べるためには蝙蝠のごとくあちこちにいい顔をして見せる。もし私が現実で、そんな奴に食べ物を請われたら、蹴りを入れてやることでしょう(-_-)!。

(2008.09.25 読了)
聖母
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著者:レオポルト・フォン・ザッヘル・マゾッホ/藤川芳朗出版社:中央公論新社サイズ:単行本ページ数:2


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