『大人のための怪奇掌編』/倉橋由美子 ◎

倉橋由美子さんは、2005年に没している。
不条理な幻想色の強いファンタジー、シニカルなエロス、ギリシャ神話や日本神道神話など神の実在化など、怖ろしくも美しい、ダークな世界を描いてこれほど綺麗にはまる作家を、私は他に知らない。
背後にある血の匂い、暗黒を秘めた灯り、だが表面は、サラサラとしている。まさに、『大人のための怪奇掌編』である。
倉橋さんが、あちら側へ逝ってしまったのが、とても残念だと思う。もっと倉橋さんの幻想世界に彷徨いたい、あの闇に取り囲まれて竦んでみたいという、その思いは、空回りするばかりである。

第一夜から第二十夜まで、アラビアンナイトのように、語られてゆく怪奇な物語。
それぞれに不思議な雰囲気を持って、読者を闇に誘いこむ。食肉や飲血、故事神話、日常にさりげなく紛れ込む妖、翻案され夢現を彷徨う物語たち。
闇を纏った、人ならぬ美しい妖女に誘われるかのように、物語の流砂に吸い込まれてゆく。
行きつく先は、狂気か。

――― な~んてことをまた、妄想してしまう訳ですよ。(←水無月・Rの妄想癖炸裂)
どの物語も、一筋縄ではいかない怖さがあります。不思議だな~と思ってる間に魔に取り込まれる位なら、案外脱出は簡単。なんでもない物語のはずが、一気に牙をむかれて、ひと飲みにされるのもまた一興。
いつ、何がきっかけかもわからないまま、何故か世界が反転しているのが、一番怖い。不安になる。自分の存在が、あやふやになってくる。

怖いけれど、とても魅力的だ。
闇というのは、斯くも人を惹きつけるものか。
闇は美しく、おぞましい。

(2009.03.02 読了)

大人のための怪奇掌篇
宝島社
倉橋 由美子


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この記事へのコメント

2009年03月19日 12:57
おくればせながらトラバさせて頂きました♪
いやはや、倉橋氏には初挑戦だったのですがかなり昔の方だったんですね。
ホラーでもないしおぞましさや怖さもない、不思議な作品でした。他の作品も読んでみたいですね~オススメございましたら是非、お教えください♪
2009年03月20日 22:28
空蝉さん、ありがとうございます(^^)。
倉橋さんは、初読みでしたか~。
倉橋さんの不条理なファンタジーや神話崩壊の物語は、難しい面もある(水無月・Rにとってはですが)けど、何だかとても心惹かれます。
初期作品によく出てくるLという名の姉的存在が、とても印象的で、私は好きです。

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