『蟹塚縁起』/梨木香歩 ○ (絵本)

梨木香歩さんの絵本『蟹塚縁起』です。絵は木内達朗さん。
絵本ではありますが、暗い色調の中に、一筋の明かりがさすような絵で、お子様向けという感じではありません。
物語は、蟹の恩返しのような、前世因縁譚のような、日本昔話系です。
物語と絵がよく調和していて、重苦しさの中に安らぐような感覚が。

農作を生業とする男・とうきちは、名主の息子が無残にいじめていた蟹たちを救う。その夜、「押し掛け嫁でございます」と蟹たちが現れるが、「おれはだいじょうぶだ」と蟹たちを帰す。その夜更け、蟹たちは大挙して名主の家に押し寄せる。後を追ったとうきちは刀を掘り出し自分の非業の死を思い出し、蟹が前世での自分の配下の武士と気づき、かつての激しい恨みを断ち切り、許し、昇華させる。その時、蟹たちは蛍となって、月へと飛び立ってゆく。
とうきちと名主の息子は、蟹塚を作って刀を納め、蟹たち(過去の恨み)を供養する。

旅の六部(りくぶ:法華経を納めるため霊地を巡礼する僧)の「・・・あなたがその恨みを手放なさぬ限り・・・」に示唆される、とうきちの穏やかな人柄の奥底にある、情の激しさ。静けさの中にある怒涛の感情をもった、とうきちの前世。梨木さんの物語と木内さんの絵がお互いに共鳴し合って、とても印象的な1冊になっていると思います。

暗闇の中に射してくる満月の明るさ。より陰影が深くなり、この世ならざる風景になってゆく世界。仄暗い黄色みを帯びた月光に照らされる、静かながら、に不穏さを孕む情景。蟹がホタルになるシーンだけが青白い光を放っている。絵の光の色合いが象徴的だ、と感じました。

連綿と続く恨みや憎しみを超えて、人を許すこと。
そして、次に出会った時は、思いきり腹を抱えて笑いあえる楽しいことをしよう、と言える、穏やかな心を持てること。
人は、前世の因縁を超えることができる。
静かで、激しくて、それでいて優しい、良い絵本でした。

(2009.04.01 読了)

蟹塚縁起
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著者:梨木香歩/木内達朗出版社:理論社サイズ:単行本ページ数:1冊(ペ発行年月:2003年02月この


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