『ヘルマフロディテの体温』/小島てるみ △

ううむぅ~。雰囲気は、悪くないんだけど・・・。
どうも、合わなかったですな・・・。表紙の絵が『ドグラ・マグラ』っぽくて雰囲気出てたし、『ダ・ヴィンチ』の広告を見たときは、これはいいかも?と思ってたんだけどなぁ。性別の問題に絡むと、非常に難しいよね・・・。
私は性別に関する問題には、拒否感はないつもりだったんですが、やっぱ古い人間で小市民すぎるのかなぁ・・・。

これがデビュー作の小島てるみさん。同時発表のもう一作
『最後のプルチネッラ』を読んでいない以上、どういう作家さんであるという決めつけは良くないと思うのですが、あとがきで「境界を云々」と書いてらしたので、性別とかの境界についての物語を書く方なんでしょうか・・・。
『ヘルマフロディテの体温』は、ナポリの医学生・シルビオが母の性転換をしたゼータ教授の為に、ひいては自分の為に、女装者=〈フェミニエロ〉の物語を創作してゆき、その過程で癒されていく物語である。

・・・と、言いたいところなんだが、主眼はシルビオ(実は彼自身も女装者)が〈フェミニエロ〉の物語を創作するその過程ではなく、〈フェミニエロ〉の起源、発展過程、そして現代に至る歴史を、神話時代から現代に至るまで描く、創作物語そのものにあるような気がする。
シルビオの現実である「美しかった母がある日失踪し、突然男として帰ってきた」、「母の性転換手術をした教授に師事しなければいけない」、「母を憎んでいるのに自分も性倒錯者になりつつあるのでは。そして何故そうなのか全く分からない」という苦悩の物語でもあるのだが。

シルビオの創作する〈フェミニエロの起源〉や〈フェミニエロに関する歴史〉の物語は、ギリシャ神話やキリスト教などの、裏側というか別角度から推察した物語になっている。正史には載らないだろう倒錯した、覆いかくされたものという形で、ゼータ教授に提供される、彼の物語は、幻想的だ。
だけど・・・何か足りない。いや、これはホント、個人の好みなんだけどね。

もう少し、グロテスクさ或いは仄暗いタブーのようなものがあったら、よかったのかな~と思う。幻想感があるんだけど、それが足りず、妙な現実味がある気がして。いっそのこと、ダークファンタジーの世界に突入しちゃったら、いいのかもしれません、私的には。猥雑な街、自由なナポリの物語は、面白かったもの。

私自身は、先ほども書いたが、トランスセクシャルやインターセクシャルなどには、偏見はないつもりではある。ただ・・・「普段(気持ちや感覚)は男」である体は女性の人や、「普段(気持ちや感覚)は女」であってもやはり体が男性である人と一緒にお風呂に入れるかというと・・・謝るしかないと思う。
恋心を告げられても、困るような気もする(←それは有り得ないと思うぞ)。
ただ、それを「気持ち悪い」と一蹴するのだけは、したくないと思っている。
出来れば、色々と話をしたい。聞いて、理解したいと思う。境界にある人々をただ闇雲に忌むことは、したくない。2000人に一人の割合で、ヘルマフロディテは生まれてくるのだから。

(2009.05.31 読了)

ヘルマフロディテの体温
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著者:小島てるみ出版社:ランダムハウス講談社サイズ:単行本ページ数:215p発行年月:2008年04


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この記事へのコメント

2009年06月02日 09:08
おお!やっぱり水無月・Rさんのお読みになるものは私と被るなぁ(笑) 以前私もこれ、読みました。 腐女子が入っている私としてはけっこういい感じだったんですが;; ちないみに、中村明日美子という漫画家の作品はこんな雰囲気で、でもすごく泣けます、素敵です、美しいです!
2009年06月02日 22:15
空蝉さん、ありがとうございます(^^)。
うう・・・かぶるのはとっても嬉しいんですが、自分の「感覚のみで勢い書きな文章」が非常に悲しくなります・・・。
空蝉さんが、記事を書いてらっしゃるのは知っていたのですが、今回ちょっと否定的だったのでトラックバックに迷ったのです・・・。
させて頂いちゃいましたけど(^_^;)。
多分幻想系は、どんどん突き詰めて行く方が好きなようです。あはは。

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  • 『ヘルマフロディテの体温』 by 小島てるみ

    Excerpt: ナポリという名は誰もが知る有名な地でありながら、その歴史も町並みも今そこに生きる人々さえも、観光案内にのっているうわべでしか私たちは知らない。陽気な街、活気のある観光地・・・。しかしどうだろう.. Weblog: ■空蝉草紙■ racked: 2009-06-02 09:06