『まほろ駅前番外地』/三浦しをん ◎

『まほろ駅前多田便利軒』で「失ったものは完全には取り戻せないけれど、形を変えてそっと戻って来る」と結ばれていた物語の、続きです。それとも番外編かな?
イヤ~、ホント私、三浦しをんさんが大好きだなぁ!
読んでる間中、ニヤニヤうぷぷ、ホント色んな意味でアブナイ人になっちゃいましたよ、『まほろ駅前番外地』

相変わらず、居候の行天(ぎょうてん)の突拍子もない行動にひっかきまわされている、便利屋の多田。
そこそこ便利屋稼業も軌道に乗って来てるのだが、いかんせん食い扶持が1人増えたのでトントンかマイナスという感じ。だが、そこはなんとな~くスルーして、日々を過ごしている。
色んな事件は起こるけれど、基本的にまほろ市は平和である。

前作での顧客や、仕事上対立した人物などに加え、多田がうっかり惚れてしまった外食チェーン女社長も出てきたりして、顔ぶれは多彩である。
今回は、多田と行天が中心の物語もあれば、前作の脇役たちがメインを務める物語もあり、なかなかにバラエティが豊かでした。
しっかし、どの物語の中でも行天の扱いが酷いのは、自業自得じゃないでしょうかね(笑)。
だって、この人ホントにめちゃくちゃなんだもん。ダイヤの指輪飲み込んじゃったり、バスの窓を外からガンガン叩いてみたり、塾の先生を脅そうとしたり。多田が一生懸命働いてる横で、ぼけ~っと蟻の観察した末に、常連顧客の老人と言い合いしたりするんだから。
なのに、なんでか憎めないんだよねぇ。
自由な男なんだわ、ホントに。ここまでフリーダムだと、羨ましいとすら思えないけど(笑)。

多田と行天の間には、「ただならなさ」は全くない。文中でも多田は、行天を
~~家族関係でも恋愛関係でも友人関係でもない、強いて言って高校の同級生だったにすぎない相手。~~ (本文より引用)
と評している。
ところでこの文章、順序おかしいと思うのは私だけですかね(笑)?
家族関係の次は、友人じゃなくて恋愛関係なんだ?いいトシした男二人を並べて・・・?!っていう・・・、ねぇ。
さりげな~く、しをんさん風味だなぁ!と感心しちゃうんですよ。そしてもちろん、笑い転げた。「友人より前に恋愛かよ!」って。ここは、ツッコミ入れていいところですよねぇ?!

行天が2つでひと組ものが好き(門松・阿吽の金剛力士像)とか、しょうもないネタも満載で、ぶははは~!と笑えるのに、最後の最後に多田は、祈るように考える。やっぱりそこに、ほろりと来てしまうんですよねぇ。
~~凍えた人間をもう一度よみがえらせる、光と熱はどこにあるのだろう。~~ (本文より引用)
きっと、いつか、多田と行天は色々な物事と時間を経て、それにめぐり合うのだろう。

その為にも、多田と行天はこのままず~っと「多田便利軒」を続けて行くんだろうなぁ。どこかでとんでもない大展開が待ってそうな気もするけど。
時々ルルとハイシーが遊びに来て、曾根田のばあちゃんの見舞いに行き、しょっちゅう岡老人にバスの間引き運転の見張りを依頼され、由良公がいればちょっかいを出し、星とは情報のやり取りや騙しあいをし、多田はいつまでたっても女社長に告白はできず、多分警察にはクリーンならざる怪しげな市民として時々マークされ。
そしてそこはかとな~く、まほろ市の平和の一端を担ってるのかもしれない。

「岡夫人は観察する」が、一番好きな章かな。学生時代の行天を見かけたことのある岡夫人。以前と比べて、多田の表情が豊かになったと、なんとなく微笑んでしまう岡夫人。行天が営業トークをするところを想像しようとして「太陽が地球を飲み込む日を想像する方がたやすい」と思ってしまう岡夫人。多田と行天の喧嘩している風情が気になってしまう岡夫人。普通のおばさん(60歳は超えてるけどおばあちゃんというのも失礼な気がする)なんだけど、目線が優しい。私も、こういう年の取り方をしたいものだ・・・とは思うけど、きっと無理(笑)。

「由良公は運が悪い」も、面白かった。割と常識的で冷静な小学5年生の由良公は、行天に振り回されて、意外な一日を送る。内心で〈なんだよそれ!〉と思いつつも、言っても仕方ない・・・とあきらめちゃうところが、妙に可愛いと思う。うん、コレはあれですよ、トホホな香りですよ。・・・とうとう、小学生にまでトホホ萌えか、水無月・Rよ(^_^;)。
でも、由良公は運はいいと思いますよ~。だって、多田便利軒の2人と出会えたんだから。しかも、物語の最後には行天の小指切断事件にからむ大人のぎごちないやりとりに助け船を出す、なんていう大役もこなしてしまいましたよ!

これからも、きっと「多田便利軒」は、色んな依頼を受け、ときには法律の範囲内から少~しだけ逸脱したり、行天がとんでもない解決方法を提供したり、多田がギリギリ行天の暴走を食い止めたりするんだろうな・・・。楽しそうだなぁ。
こんな便利屋さんがあったら、私も利用してみたいです。だけど、信用に値する便利屋さんを見つけるのは、なかなか大変だと思うのですよねぇ・・・。
笑ったり、しんみりしたりと忙しいこのシリーズ、時々でいいから書き続けて行ってくれないかしらん、しをんさん。

(2010.07.29 読了)

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この記事へのコメント

苗坊
2010年07月31日 20:55
こんばんわ^^TBさせていただきました。
私も岡夫人の話好きです^^微妙に妄想したり、2人が喧嘩しているのをきにしたり。
でも、穏やかで素敵な歳のとり方をしているなぁと思いました^^
多田と行天はどうなるんでしょうね。
行天の最後の行動が気になったので、続編を出して欲しいです。
2010年07月31日 22:52
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
岡夫人、いいですよねぇ。
こんな素敵な年のとりかたが出来たらいいですよね♪
これから先の多田便利軒、どうなるのかとても気になります。
じゅずじ
2010年08月01日 08:15
ますますパワーアップしてましたね、二人とも。
早く、過去をのぞいてみたいものです!
june
2010年08月01日 17:07
水無月・Rさん、こんにちわー。

>「友人より前に恋愛かよ!」って
そこ気づきませんでした。うかつでした^^;
さすがしをんさんですねぇ。

私も「多田便利軒」使ってみたいです。窓ふきとか庭の草取りとか頼んで、お茶でも飲みながら二人を観察しつつ妄想したいものです。
2010年08月01日 22:04
>じゅずじさん、ありがとうございます(^^)。
そうですね、過去も未来も、気になりまくりな多田便利軒です♪

>juneさん、ありがとうございます(^^)。
岡夫人のノリで「あら~、便利屋さん達ったら、今日はどうしたのかしら~」とか観察してみたいですね(笑)。
アフターサービスも万全、ですもんね~♪
あの文章を見た途端「友人と恋愛と順番違うやろう!」とツッコミを入れつつも納得してしまった私、かなりしをんさんに影響されてます(笑)。
2010年08月02日 16:19
こんにちは♪
「友人より前に恋愛かよ!」のツッコミさすがです。全然気づかなかった。読み込みが足りないなあ~・・・・
私は星の話も好きでした。ヤクザなのになんだか可愛いというか真面目というか。ヤクザ好きの三浦さんの愛がこもってる気もします(笑)

インタビューを見る限り続きを書かれるようですよ。三浦さんも「多田は放って置いても大丈夫そうだが行天が心配」と仰っていました。なるべく明るい方へ進んでいくといいですよね!<ちょっと心配・・・
2010年08月02日 22:16
雪女さん、ありがとうございます(^^)。
いやぁ、思わず反応してしまう私も、如何なものかと(笑)。
星良一も、良かったですねぇ(*^^)v。
顔はイイけど怖~いお兄さん、何だけど清海やお母さんなど、女性に対しては弱い感じが、ちょっとトホホを感じます(笑)。

なんと!続編ありそうなんですね!
貴重な情報ありがとうございます~(#^.^#)。
そうですねぇ・・・行天には幸せに・・とまではいかなくても、平穏が訪れるといいですよね。
2010年08月03日 12:55
私も水無月・Rさんが挙げてらっしゃるお話が好きでした。
特に岡夫人のお話は良かったですね~♪こういう夫婦関係っていいなーと思いました。
2010年08月03日 17:43
もっかいお邪魔します(^_^;)

たった今「まほろ駅前多田便利軒」映画化!というニュースを知りまして。思わず報告にきちゃいました。
多田が瑛太で行天が松田龍平ですって!な、なんだかなあ・・・・
コミカライズの方はそう悪くもなかったですが(BLで有名な山田ユギさんが描いてます)実写は個人的にはイマイチ・・・。作者にとっては嬉しいことでしょうけどね~。
2010年08月03日 23:18
>すずなさん、ありがとうございます(^^)。
多田便利軒に、光射さんことを、祈りたいですね。
便利屋稼業の手伝いをすることで、少しずつ行天が「人間らしく」なっていくといいなぁ・・・と思います。
それを助けるのが、岡夫人や由良公やルルたちなのかもしれません。もちろん、ただの存在は一番大きいんだと思いますが、そうなってくれるといいなぁ。

>雪女さん、ありがとうございます(^^)。
ほほう!映画化ですかぁ~。それは嬉しいんですけど、行天が松田龍平・・・。確かに仰天って、無駄にハンサムな設定だから、それもありなのかなぁ。どっちかというと、瑛太の方が行天向きな気も(笑)。
多田は、もうちょっとくたびれてる感のある人の方がいいんじゃないか知らん(^_^;)。

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