『ストーリー・セラー』/有川浩 ◎

この原稿を書くために、物語を思い出すだけで、涙ぐむ。
とてもじゃないが、まともな文章は書けそうにない。
一晩おいてみたけれど、無駄な足掻きなのはわかっている。 
私にとって、最高の作家さんである有川浩さんの作品なのだから。
作家である「彼女」が描く『ストーリー・セラー』
~~「―― どこまでが、本当なんですか?」
   「どこまでだと思います?」~~
    (本文より引用)
「彼女」に逆夢の訪れんことを、「彼女」の期待以上の逆夢の訪れんことを。
ただの一読者として、願う。

うわあもう駄目だ、全然思考がまとまらない。
前半部分「Side:A」は、雑誌『Story Seller』(小説新潮2008年5月号別冊)に掲載された、「ストーリー・セラー」で、水無月・Rは既読である。
当時も「滂沱の涙」という言葉を身をもって体験し、今回も既読だからって読み飛ばすことはできず、またもや涙の大量生産。もちろん予測はついていたので、家で、誰もいない時を見計らっての読書である。

そして後半「Side:B」に入るや、「Side:A」は作中作であることが分かる。でも、全然「騙された!」とか思わない。ひたすら、物語を追っていく。「彼女」の後悔から始まる、この物語を。
太字の「覆れ」の連続を、読み切ることは出来なかった。同じ文字の繰り返しが面倒だったのではない、と思う。あまり強いその意志に、息が出来なくなりそうな呪力を感じて、4行読んだところで、挫けてしまった。

「Side:B」が終わり、あとがきの部分に入った。と思っていた。
担当者と作家の会話で、物語と作家の現状とが照らし合わされていく。
どこまでが本当なのか。
この作家が逆夢を起こしに行くなら、私は願うだけだと思った。事実でも、作中作でも、更にその中の創作であっても、本来の作者である有川さんのためではなく、私のために。
逆夢が、起こればいい。とてつもない、逆夢が。

ううむ・・・感傷的だな~、相変わらず。
何かねぇ、「この部分について書きたい」とか「私はこう思ったんですよぅ!」とか・・・出て来ない。
有川さんの作品と出会えてよかった。
有川さんの作品を読み続けて行きたい。
こんなにぴったりくる作家さんは、今までいなかった。
有川さんにとっては、私はただの一読者だけどそれでいい、私にとっては特別な作家さんだから・・・。

何かそんなことばっかり、ぐるぐる考えちゃって。
「どこまでが本当だったのか」は、知りたいような、知りたくないような。
でもいい。どちらでも。
ただ、私は作中の「彼女」に逆夢が起こればいい、と願う。

雑誌掲載時の「ストーリー・セラー」のときも、有川さんから旦那様へのラブレターだなぁ、って思ったんですが、単行本になってより一層「素敵なご夫婦だなぁ」と、ポーッとしてしまいますね。
作中のことすべてが、旦那様だというわけではないのでしょうけど、お互いを大切に、尊重して、本当に本当に、必要としてるんだなぁって。なかなか、こういうご夫婦はいないんじゃないかと思います。(ウチも割と夫婦仲はいい方だと思いますが、有川さんちにはとても及びません(笑)
有川さんが描く恋愛ものが素敵なのは、旦那様を愛していて、旦那様に愛されてるからだと思う。甘ったるくまとわりつく恋愛じゃなくて、ちゃんと自分の足場を踏みしめてて、そのうえで全力で相手を想う関係。
何げない一言で新たな発想を与えてくれ、作家活動を全面的にバックアップしてくれて、一番の読者であり一番の理解者で協力者である、有川さんの旦那様。きっとその人は、そうあることを本当に心から喜んで誇りに思っている。
そして、そのことを堂々と物語にのせている有川さんも、旦那様と共に生きていることを心から喜んでいるのだと思う。
だから私は、一読者として願う。
いつまでも、有川さんご夫妻が仲睦まじく、楽しく暮らして下さることを。そして、そこから有川さんの物語が生まれて、我々読者にも届けられ続けることを。
有川さん、そして旦那様。これからも、どうぞ、よろしくお願いします。

さて、私、本は図書館で借りて読む派なんですが、この作品は最初から買う気でいて、本屋さんに行って表紙を見たときに、「買うことにして良かった」と思いました。白い表紙に青いリボンがかかっている、美しい贈り物の装丁。表紙を外した本体も、〈StorySeller〉とデザインされた包装紙を模している。
物語を売って逆夢を起こすための、読者への特別なプレゼント。
受け取りました。ありがとう。
物語を売ることに誇りを持っている作家さんだから出来る装丁、だと思います。

ちなみに。
私の好きな色、〈青〉のリボンがかかっていることは、運が良かっただけだとは分かっています。
ですが、私への贈り物だと、脳内補完させていただきました♪
いいんですよ、脳内だけなんだから(笑)。


(2010.09.30 読了)

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この記事へのコメント

すずな
2010年10月02日 12:57
私も感想を書こうとしたら、感情の波に対応できずキーを打つ指が止まってしまいました。かなりの衝撃でしたね。
旦那さまへの愛が溢れる、そして、作家としての矜持やモロモロが溢れる作品でした。
水無月・Rさん同様、私も、有川さんや旦那様のご健康と幸せを祈り、そして、読者として今後もずっと有川作品を手に取れる事を改めて願ったのでした。
2010年10月02日 22:36
すずなさん、ありがとうございます。
作家としての内情をセキララに描きつつ、夫婦愛がホントにあふれてて・・・素晴らしかったですよね!
これからも、有川さんからの贈り物を受け取り続けていきたいですね♪

白い怪鳥
2010年10月03日 00:17
トラックバックありがとうございました。
こちらからもお返ししますね。

>私の好きな色、〈青〉のリボンがかかっていることは、運が良かっただけ

「ブルーリボン」って、アメリカ発祥のインターネット上における言論の自由を守るための反検閲運動のシンボルマークなんですよ。(日本の場合は拉致問題のシンボルですけどね)
「図書館戦争」を書いた作者さんです。
あえて使った・・・・・というのは考えすぎでしょうか?(^^;)
香桑
2010年10月03日 00:46
こんばんは。
素晴らしいプレゼントでした。
創作だとわかっていても泣かずにいられない。
そして、創作だとわかっていても、どちらの夫婦の姿にも気恥ずかしくなりました。
なんかもう、最大級にのろけられた気分です。笑
ほんと、表紙も綺麗でしたね。私もお気に入りです。
2010年10月04日 12:22
白い怪鳥さん、ありがとうございます(^^)。
ブルーリボンにそういう意味があったとは!!
知らなかった~、白い怪鳥さん、博識ですねぇ!
いえ、きっとそうですよ。
有川さん、言論・表現の自由を守りたい、そういう思いを込めて、この装丁にしたんじゃないでしょうか・・・!
(でも脳内補完は訂正しません(笑))
2010年10月04日 12:30
香桑さん、ありがとうございます(^^)。
愛ですよ愛!お互いをいつくしむ、という意味で最強の夫婦の物語でしたね。
ココまで美しい夫婦愛は、なかなかありませんよ♪
夫婦愛もさることながら、作家としての真摯な思いも強く描かれている、まさに「現時点での有川さん最強作品」だと思います。(この最強は随時入れ替わっていくものでもありますね。)
苗坊
2010年10月07日 09:30
こんにちは^^読みました。
全てがそうではないと思いますが、有川さんと旦那様の事もきっと描かれているんですよね。
深い深い2人の愛を感じました。
どこまで本当なのかもの凄く気になるところですが、ずっとずっと、こんな夫婦関係を築いていけたら、素敵ですよね。
もの凄く感動しました。
やっぱり有川さんの作品は素敵ですね。
2010年10月07日 20:51
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
作中の作家夫妻の、お互いを大切に思う美しい愛は、きっと有川さんご夫妻にも通じているんでしょうね!
一番の理解者で、一番の協力者。一番好きな作家。最強コンビなご夫婦だと思います。
お二方からの、素敵なプレゼントを、受け取り続けていきたいですね。
yoco
2015年02月22日 12:26
私もこれ、有川さんから旦那様へのラブレターみたい・・・!て思いました(;▽;)
ほんとにお互い尊重していて、すごく素敵な関係性。。。
こんな身近な応援者、理解者がいてくれたらどれだけ心強いことか。時に重荷となるような人間関係があっても、強くいられるような気がします。
今更ながら読めてよかった1冊でした(;▽;)
2015年02月22日 21:57
yocoさん、ありがとうございます(^^)。
最強のご夫婦の絆ですよねぇ!
作中夫婦然り、有川さんご夫婦然り。
作品を思い出すと、今でも「作中の作家のために、逆夢の起こらんことを」と、強く願ってしまいます。
有川さんの「物語売り」の物語、とても素晴らしかったですね♪

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