『ガラシャ』/宮木あや子 △

あう~。なんだろう。
宮木あや子さんといえば、ままならぬ想い、閉塞した世界にある孤独・・・といった狂おしさを描く作品が多いのですが、今回はどうもその辺が足りない。かといって『セレモニー黒真珠』のような、コメディ路線では全くなく・・・。
ちょっと私的には、何だか普通の物語(響くものが足りない・・・)『ガラシャ』でありました。

細川ガラシャといえば、織田信長を殺害した明智光秀の娘であり、織田・豊臣・徳川という世の変遷を泳ぎきった細川忠興の妻。戦国の世に人質となることを良しとせず、とはいえ己が信じる「キリシタンの教え」では自害は禁じられており、家臣の手を借りて命を散らしたという、美貌の悲劇の女人である・・・という認識でした。
・・・まあ、概要はそうなんですが、どうもこの物語、主人公は〈玉子:ガラシャ〉ではなく玉子の侍女の〈糸(洗礼名:マリア)〉のように感じるんですよねぇ、私。

「光秀」
将軍・義昭の元を離れ、信長に仕えた光秀だったが、巡り巡って信長を討つ次第となった。
「玉子」
細川忠興の妻となった、光秀の娘・玉子。光秀の謀反により、離縁の代わりに山深い味土野の地に隔離される。死産の赤子を抱いて雪の野を彷徨ったとき、命を救ってくれた男がいた。
「マリア」
玉子の侍女で、忠興の従妹である糸は、キリシタンである。忠興の嫉妬から部屋に監禁も同然に見張られている玉子を、天主堂の修道士の力を借りて、洗礼を与えた。
「幽斎」
玉子の舅・幽斎は細川家存続のために、将軍家を始めとして織田・豊臣・徳川と次々と主を変えてきた。人に興味を持つことがなく過ごしてきた彼が、唯一こだわって気に掛けてきたのが光秀であった。

あ~、あらすじが上手く書けない・・・。
アレですね~、多分、私がちっとも主人公・玉子に共感できないから・・・ですね。
侍女の糸の方が、断然、納得がいくんですよ。

確かに、玉子は不幸で不運だったと思う。
父が謀反人となり、夫はその父を助けず、保身のために自分を山奥へ幽閉し。その山奥で生まれた子は死産。出会った運命の恋も実らず呼び戻されると、夫は側女を持っており、嫉妬させよう関心を向けさせようと手酷い仕打ちを繰り返す。洗礼を受け、やっと心の平安を得たものの、屋敷は敵方に囲まれる。人質となるを良しとせず、自害(ただし実際に手を下すのは家臣)をしようとする。
波乱万丈ではあるのだけれど、玉子は、通り一遍の苦悩しかしてない気がするんですよね。
まあ、哀しい現実になってしまう夢ばかり見てしまう、という体質というか能力はちょっと普通じゃないけど。

逆に、糸は敬愛する聖母・マリア様にそっくりな主・玉子を慕い崇め、大切に思って、一心に仕える。味土野の暮らしでは玉子を支え、土地の者とも仲良くやり、大阪に呼び戻された後は見張りをかいくぐって天主堂へ行き来し、時には嫉妬に狂った忠興の前に立ちはだかり手を刺し貫かれ、秀吉の呼び出しに懐剣を携えた玉子を押しとどめた上に逆に退場の時にその懐剣を落して秀吉を牽制し、そして最後には玉子の為に、彼女を自由にする為に行動する。

最後の「幽斎」の章が良かった。幽斎の養子であるが故の家存続への保身への強い執着、そんな男が唯一こだわった、清冽な男である光秀。その娘を息子の嫁にもらい受け、彼女を生かしたのは欺瞞だったのだろうかと振り返り、そして彼女が異教に縋った味土野の地を老体をおして訪れる。
光秀との思い出をたどりながら、苦労しながら山道を歩いた末に辿り着いたその地の祈りの小屋で、彼はひとりの女童とであう。女童に手を引かれて村へと歩く彼は、美しい景色や風に触れ、思わず足を止める。その時「――藤孝。」と、かつての友の声を聞いたように思う。
老境に至って、自然の美しさや思い出に触れた幽斎を残して、物語は終わる。
余韻の残る、静かで美しい終わり方が、よかった。
出会った女童は多分、彼女の子供なのだろうけど、そういうことはどうでもいい感じがした。

ただな~、ホント、玉子(ガラシャ)には感情移入できなかったな~。それが、残念。

(2011.05.11 読了)

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宮木あや子 新潮社発行年月:2010年11月 予約締切日:2010年11月13日 ページ数:279p


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この記事へのコメント

苗坊
2011年05月16日 10:05
こんにちは^^
宮木さんの作品はこの本が初めてでした。なぜなら私の行きつけの図書館に宮木さんの作品が1冊もなかったからです^^;前から気になってはいたのですが。今勤めている図書館には揃っているので、ちょいちょい読めたらと思います。
で、今回の作品。
私は高評価だった気が・・・と思って自分の記事を読んだら、ガラシャよりも糸のことを結構書いていることに気付きました^^;
やはり陰の主役ですよね。というか主役ですよね。人間味溢れる素敵な女性だったと思います。
日本史はテストで覚えるようなものは嫌いですが、こんなことがあったのか~と読むのは好きなので(矛盾してますが・・・)ガラシャや糸についてをもっと詳しく知りたいなとも思いました。
2011年05月16日 16:19
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
学校で日本史勉強してた頃に、こういう小説を読みたかった!(正史と創作がごっちゃになりそうな気もしますが)
糸の存在あってこその物語だったと思います。

宮木さんの作品は、いいですよ~♪
私が特に好きなのは『雨の塔』です。他の作品ともリンクしてたりしますよ。
宜しければ、是非是非お読みください♪
2011年05月17日 13:43
私も今までの宮木作品に比べると、ちょっと物足りないという印象を受けました。インパクトというとちょっと違うような気もしますが、そういうものが弱かったような。
そして、確かに玉子よりも糸の方が共感できましたね。
2011年05月17日 22:22
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
そうですね~、何だか物足りない感じがしました。
糸の生き方の一途さと強さに、心打たれました。
たかこ
2011年05月28日 14:32
水無月・Rさん こんにちは。
確かに宮木さんらしさがなかったですよね…。ガラシャについてだけ言えば、こんな人だったのか、と新しい見方もできる1冊でしたが…。
今は、宮木さんの苦しくなるような熱い話が読みたくて仕方ありません。
次に期待しましょう !(^^)!
2011年05月28日 21:41
たかこさん、ありがとうございます(^^)。
ちょっと物足りない感じがしました・・・(^_^;)。
歴史上の人物を大胆に描いてるなぁ、という思いはあったんですけどね~。
宮木さんの「ままならぬ想いで焦がれる」物語の方がやっぱり好きかな。是非、次作は、そちらの作風で!と思います。
香桑
2012年02月19日 22:42
こんばんは。みなさんがもやもやしているのを読んでほっとしているところです。
歴史を描こうとすると恋愛が薄くなっちゃうのが、難しいところなんですかね。
私もガラシャより糸のほうに共感しやすかったです。ガラシャはなんだか幼いだけの印象で終わっちゃったなぁ。
確かに、幽斎の章がよかったですね。
2012年02月19日 23:11
香桑さん、ありがとうございます(^^)。
そうなんですよねぇ、どうにもこう、普通というか中途半端というか。
玉子にしろ、忠興にしろ、なんかもうちょっと人として成長できないもんなの?と、思いました…(^_^;)。
逆に人として老成し、ちょっと枯れた感のある幽斎がメインになる章は、ホントよかったです。
yoco
2015年06月11日 23:49
こんばんは~!
感想を読んで、そういえばガラシャには特異な夢を見る体質があったな。。。と思い出しました。なんというか、改めて感じるとすごい能力なんですが、不思議と違和感なくスルーしてしまってました。

幽斎の章、ほんとよかったですよね。幽斎側の想い・・・を知れて、違った方面からも物事を見れて少しやっぱり救われたし、ラストは本当に優しい風が吹いたような読み心地でした。
それにしても宮木さんも本当にいろんな作品を書かれる・・・次はどんな作品に出会うか、楽しみです。
2015年06月13日 23:16
yocoさん、ありがとうございます(^^)。
ガラシャはかわいそうな女人なんですが、自分でそれをどうにかして道を切り開こうという意思があまりない感じがしました。ちょっとそういう部分に共感出来なかったですねぇ。
幽斎の章、一番好きでした。
宮木さんの作品は、ホントいろいろなバリエーションがあって、これから先も楽しみですよね♪

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