『ヒア・カムズ・ザ・サン』/有川浩 ◎

『小説新潮2011年6月号』に掲載された 「ヒア・カムズ・ザ・サン」と、『Story Power(小説新潮2011年10月号別冊)』に掲載された「ヒア・カムズ・ザ・サンparallel」を合わせて、1冊の単行本化。雑誌掲載から単行本出版まで、ほんの3か月ぐらいですか~。すごいことですよ!
それだけ読者から求められているし、編集部からもGOサインが問題なく出るということで、ホント最近の有川浩さんは、パワーアップしてますねぇ。
有川さんの〈掴んだネタを手繰り寄せて広げる〉式で生まれた2編の物語、『ヒア・カムズ・ザ・サン』、大変興味深く読みました。

真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。
彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。
強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。
ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。
カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。
父は、ハリウッドで映画の仕事をしているという。
しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた……。

この7行の演劇のあらすじから、有川さんが独自の物語を描き出したのが1編目の「ヒア・カムズ・ザ・サン」
2編目の「ヒア・カムズ・ザ・サンparallel」は、演劇をもとに、改めて描かれた物語。ただし、ノベライズではなく、別個の物語であり、まさに演劇や小説の登場人物たちがパラレルワールドで体験した物語、といった設定なのだそうです。
・・・演劇の方も気になっちゃいますよねぇ、こうなると。いやいや、とりあえず、理性はまだ残っておりますよ(笑)。

1つ目の「ヒア・カムズ・ザ・サン」については、雑誌掲載時にレビューを書きましたので、割愛。(でもやっぱり、読むのは、通して読んでしまいましたね~。)
再読して、穏やかな気持ちになれました。いろんな葛藤があり、それぞれの頑なな思いと、それを解きほぐす主人公・真也の優しさと柔軟な強さ。
真摯に生きることで、少しだけ救われて、そして自分の力で明るい方へ踏み出していけるという、希望。
そういうところが、素晴らしかったですね。

で、2編目の「ヒア・カムズ・ザ・サンparallel」
こちらは・・・お父さん、駄目駄目だ・・・(^_^;)。まず、そう思いましたねぇ。子供か…?と、脱力。
でも、いそうですねぇ、こういう人って、ていうか、いる(笑)。
カオルの気持ちが痛いほどわかる。
とはいえ、つい、意地を張って、見栄を張って、どうしようもなくなってしまう、お父さんの気持ちもわかる。何処かで「ごめん、ちょっと話膨らませすぎた」と言えればいいのに、言えなくて、ますます自分で自分を追い詰めるようなことになってしまう。
・・・なんか、ウチの子供の言い訳劇場に似てるような・・・・(^_^;)。

真也は、物や人に宿る想いを感じ取ることが出来て、その能力でカオルの父の現状や気持ちを知って、カオルに「折れてあげて」という。確かにね、気持ち的に大人な方が折れた方が、話がまとまるのは早い。でも、折れた方の気持ちの整理は、どうしたらいいのか。そこをきちんと書いてくれた有川さん、素敵だなぁと思う。

カオルのために、真也はもう一度行動する。「カオルに、本当のことを話してあげてほしい」と。
カオル親子は和解し、カオルの父が帰国する時、真也は「あなたのことを尊敬しています」と告げる。
自分の弱さを認めたその強さを、尊敬している、と。
・・・そうなんですよねぇ。人は、弱い。でも、それを認めて、そのうえで前に進んでいけるなら、その人は、強い。
そんな力強い、終わり方でした。
うん、私も、真摯に生きて、弱さを認めて、前を向いていかないとな、なんて思いました。殊勝すぎかしらん(笑)。

どっちの物語の方が好きか…というと、難しいなぁ。
どちらからも、「前向きに生きていきたい」という希望と勇気をもらったと思う。
ストーリーとしては、「ヒア・カムズ・ザ・サン」の方が、切なくて暖かくて、より好きかな。脚本家・HALの真実も、良かったし。
ああ、でも、「~parallel」の方も、恋愛要素があったしな~。真也が、すごくいい男だもんねぇ~。
甲乙つけがたいわぁ~♪

(2012.02.10 読了)

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有川浩 新潮社発行年月:2011年11月 予約締切日:2011年11月18日 ページ数:194p サ


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この記事へのコメント

苗坊
2012年02月12日 00:22
こんばんは^^
読み終えた直後、私は小説バージョンのほうが良い!と思っていたのですが、時間が空くとどちらも良かったなぁと思います。
どちらの真也もかっこよかったですよね^^
自分の能力のせいできっといろいろ今まで苦労してきているからだろうなと思いました。
弱さを認めるって大事なことですよね。それを忘れずに私も生きていかなければと思いました^^
2012年02月12日 22:52
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
真也は、いいですよねぇ♪
能力があっても悪用せず、逆に辛いこともあっただろうに、とてもまっすぐで、優しい。
こういう人だからこそ、物語を読んでる私たちにも、色々なものを伝えてくれるんだよなぁ、と思いました。
2014年03月25日 12:03
仰るとおり、どちらが良いか甲乙つけがたいですね。それぞれに良さがあって、どちらも優しくって切なくて・・・。何度も読んでるんですが、その度に涙腺が緩んでしまいます。

2014年03月25日 14:47
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
人の強さと弱さ、優しさが染みてくる、とても素敵な物語でしたね。
それぞれに、とても素晴らしかったです。
いつでも、有川作品には「前向いて頑張った歩いていこう」っていう勇気をもらえますね!本当に嬉しいです。

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