『あやかし草子 ~みやこのおはなし~』/千早茜 ○

『おとぎのかけら ~新釈西洋童話集~』で、甘美で仄暗く、纏わりつくような醜さと美しい世界で私を魅了した千早茜さん。
本作『あやかし草子 ~みやこのおはなし~』では、京の都に現れては人をあちら側へいざなう〈妖異のものども〉と〈人〉が彷徨う物語が描かれていきます。

「鬼の笛」
見事な笛を吹く男に、鬼が嫁を与えるが。
「ムジナ和尚」
涙を理解できないムジナは、和尚として人界に下りる。
「天つ姫」
高貴の姫が、天狗と共に在るということ。
「真向きの龍」
竜の棲む淵で、何度も同じ女が訪れる。
「青竹に庵る」
竹林は常しえにあるから。いつまでも。
「機尋」
座敷童のいるという機屋で、あやかしを開放してきた娘。

千早さんにかかると、妖と人の狭間は揺らめいて交じり合ってしまう。人の世は苦いけれど、妖の世界もまた、淋しさや切なさを持っている。どちらの世界が、より良いのかなど、はかれはしない。

「ムジナ和尚」が一番好きだったかな~。ムジナがいつまでも獣であることを失わないところが良い。生来のまじめさから、最初はいい加減なごまかしだったお経を、他所で学んできてしまうようなところも、面白いなぁと思う。死んだ村人を山の者たちと喰らっていたのに、自分に良くしてくれた娘を喰えなくなってしまい、人の形を保ったまま死んでしまったムジナ和尚は、人を理解できるようになったのだろうか。

「天つ姫」のラストシーンが、とても素敵だ。一度は「年を取らぬ天狗」とずっと共にいることはかなわぬと帝に嫁ぎつつも、宮中に現れた天狗の梁星が自分のために捕らわれたのを救い出し、飛び去り、傷ついて生を終え木になった梁星に寄り添う楓の木になる。人である姫も、妖の心に触れ、妖と共に在りたいと願えば、人から他のものへ転じることが出来る。静かで美しい終わり方だった。

「機尋」は、座敷童となった子を救った娘の優しさが沁みた。彼女とて通常の娘とは違うところがあって、人から侮蔑されることもあるだろうに。
人とあやかしの間は揺らぐ。人の心と妖の心は、違うものであっても寄り添うこともできるのだと。
淋しいけれど、温かい物語たちでした。

(2012.05.13 読了)

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この記事へのコメント

苗坊
2012年05月14日 20:46
こんばんは^^
天つ姫のラストシーン、私も好きです。
妖と人間だからきっと別れの時が来ると思っていたのですが、あんな綺麗なラストシーンになるとは思いませんでした。
どれも幻想的で、素敵な和風のおとぎ話でした。
2012年05月14日 21:25
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
幻想的で、美しいおはなしでしたねぇ!
人の醜さも描いているのに、それを越える美しさと温かさがあったように思います。
2012年05月15日 12:40
全体から漂う雰囲気が堪らなかったです~。切なくって哀しいんだけど、ついつい夢中で読んでしまいました。
ムジナ和尚のキャラがすごく良かったです。最後はとっても切なかったんですけどね。
2012年05月15日 22:09
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
ムジナ和尚は、いいですよねぇ。
獣としての本性を保ちつつも、「和尚」らしくふるまうところとか、なんだか微笑ましい気がしました。
娘を喰えず、人として死んだムジナ和尚、切なかったですね。

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