『サファイア』/湊かなえ ○

宝石の名を持つ短編が七つ集まった短編集、『サファイア』
湊かなえさん、初の短編集ってことでいいのでしょうか。
湊さんらしい、読後にどす黒さが残る物語もあれば、ほのぼのとするもの、怪訝な気持ちになるもの、苦しみの後に光がさすもの…と、色々なバリエーションがあり、楽しめました。まあ…ちょっと心が重くなるようなものもありましたが(^_^;)。

「真珠」
妙な女の話を聞く男。女は「ムーンラビット社」のサニタリー用品の素晴らしさを語るが。
「ルビー」
隣にできた老人介護施設に暮らす老人が、母に赤いブローチを贈った。
「ダイヤモンド」
雀の恩返し?
「猫目石」
隣人の飼い猫を助けた家族。隣人が告げる家族の秘密。
「ムーンストーン」
過ちを犯した女性。彼女が中学生時代に得た友達。
「サファイア」
恋人を失った女性が、その理由を探そうとする。
「ガーネット」
「サファイア」の続き。彼女を救ったのは、物語と、そこから引き寄せられた、真実。

「ルビー」は、いつもの湊さんとはちょっと違って、ほのぼのとする終わり方で、私は一番好きでした。
「ダイヤモンド」の雀女は、存在したんですかね。ファンタジーだとすると、あのラストは湊さんらしい落とし方だと思うんですが、男の妄想(自己憐憫からの)だったとすると、もっと湊さんらしいと言えるかも。
「ムーンストーン」は、騙されましたね~。だけど、つながりが弱いというか話がバラバラ感があって、もうちょっと膨らませてここで終わりじゃなくて、裁判のことまで話を広げて二人の友情を描いてくれた方がいいな~って、物足りない気がしました。

「サファイア」で暗澹たる気持ちになった後、更に「ガーネット」で登場人物が続いて、ちょっとうわぁ~って思ったんですよね、実は。なんというか、もう主人公の血を吐くような苦しさ、追い詰められていく過程、うわ~、湊節だな~辛いな~痛いな~、って読み進めていったら、最後に浮上する。全てが救われたわけではないけれど、主人公がこれから物語を書き続けていく、前を向いて生きていく、というラストを迎えることが出来て、良かったと思う。
あえてこの本のタイトルを「サファイア」にしたあたり、さすが湊さんだなぁ!って感心したの、私だけかしら。

ところで「ガーネット」の冒頭、これって湊さんがデビュー作『告白』を出した時の、経験だったりするんでしょうか。確かに、問題作でしたけど、こんな批判の仕方、一方的で酷いなぁと思います。

そういえば、七つの宝石のうち、「猫目石」だけが宝石じゃなくて、本物の猫の話でした。
あれ?と思う気持ちと捻りが効いてていいという気持ち、3:7ぐらいですね~。どうせなら宝石で揃えた方が良かった気もするし、でも猫の存在と隣人の陰湿さとそして家族が呼び寄せた結末、というドロドロっとした感じは、宝石よりもベランダで光ってる猫の目そのものの方が、ぞわぞわ来る気がする。
湊さんらしい、ブラックな物語ですね。
家族の方は、これからも平穏無事に暮らしていくんだろうなぁ・・・、怖い怖い。

いろんな湊さんを読めて、面白かったです。
でもやっぱり湊さんなら、ドロドロで、被害者意識が肥大化してて、些細な悪意が廻り廻る物語、読みたいかな(^_^;)。

(2012.11.08 読了)

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湊かなえ 角川春樹事務所発行年月:2012年04月 ページ数:281p サイズ:単行本 ISBN:9


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この記事へのコメント

2012年11月13日 12:42
「宝石」というテーマでしたが、バラエティに富んだ短編集でしたね~。湊作品を堪能したなぁと思いました。
「ルビー」は湊さんには珍しく(笑)ほのぼのラストでしたね。でも、こういうのも好きだし、いいなぁと思いました。
私は「サファイア」「ガーネット」の連作が特に好きでした。
2012年11月13日 15:17
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
バリエーション豊かに、いろいろな物語が読めましたね。
ほのぼのもいいし、黒~い物語もいいし、短編もお上手ですね~。
で・も、やっぱりガッツリ長編で黒い黒い物語の方が、私的には好みです(笑)
yoco
2016年04月12日 20:55
こんばんは~^^
猫目石、思わぬラストにぞわぞわしました。
「家族」を切り取るうまさはさすが湊さんですね。外から見る家族と内から見る家族ではまたまるで違っておもしろいし、家族という共同体って改めて考えるとなんだか不思議な気さえしてきます。
確かに「サファイア」をタイトルにするのは秀逸ですよね。たぶん他のどの宝石でもここまで読了後に心にしっくりこなかった気がします。
2016年04月12日 22:02
yocoさん、ありがとうございます(^^)。
ぞわぞわしましたよねぇ、猫目石(^_^;)。
さすが、湊さんです♪
それぞれの宝石によって広がる物語が、印象的で、ちょっと怖かったりほっとしたり、いろいろと楽しめました。

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