『逆回りのお散歩』/三崎亜記 ○

相変わらず、水無月・R的「設定ノートを見たい作家さんNo.1」三崎亜記さんです(^_^;)。
三崎さんの描く〈日本と似ているけれど明らかに構成のルールが違う世界〉は、私たち読者にとって不条理で異質な世界。だけど、この世界はこのルールで回っていて、誰もがそれを疑問に思わず、受け入れられている。ふと思う。私たちの世界が、正常だと言えるのかと。
そのせいか、物語は何となく希望の光が見えてくる方向がわかってきたかも…という終わり方をしたのですが、どうにも落ち着かない気持ちです。
タイトルは『逆回りのお散歩』なんていう、ほのぼのした雰囲気があるものなのに、不穏な空気の漂う物語でした。

そういえば現実世界でも、平成の市町村大合併なんてのが、ありましたねぇ。その裏で、こんな攻防戦があったとしたら?
ていうかね、なんで市町村合併が「乗っ取り」になるのか、合併することで乗っ取られたら具体的にどうなるのか、ずっと気になってたんですよねぇ。その部分は取り上げられず、ひたすら陰謀とか誹謗中傷とかネットによる反対運動とか、抽象的なことばかりが前面に出て来る。目に見えない戦争、だけどそれは何のため?真実って何なんだろう。
報道は捻じ曲げられ、とある者たちに都合のいい事実だけが報じられ、報道されないことにより「なかったこと」になってしまう事実もある。

不穏な空気。それぞれにとって都合のいい真実。真実と史実の違い。個人の些細な行動すら、予定調和に組み込まれるとしたら。
誰が、何を目的として、市町村合併を遂行しようとしているのか。そして、それを阻害しようとする者は、何を目指しているのか。
私が感じる疑問には、回答がなされない。なされなくても、作中の人物たちは、気にしていないようなのが、怖い。
そんな疑問を持つことは、異質なのか。私が、異質なのか。ぞわぞわと、迫ってくる不安。落ち着かない気持ち。

ストーリーを紹介するにも、具体的に何を書いたらいいのか私自身がまだ消化しきれておらず、まともなことが書けそうにないので、止めておきます。

この物語の舞台となるA市は、私の知ってるあの地方都市じゃないか?それともあの都市?と、日本のどこにでもありそうな衰退気味の地方都市。とてもリアルに描かれる、その世界で行われる情報戦争や、自治体側と反対派の密かな攻防。もしかすると、私の知っているあの都市のあの合併の裏側にこんな戦いがあったのではと思ってしまう。
だけど、何かがおかしい。私の知っている現実とは、何かのルールが違う。だけど、私の信じるルールって、本当に存在している?そんな不安が忍び寄ってくる。
読んでいるうちに、その不安がどんどん大きくなってくる、その感覚がとても落ち着かなかった。

『となり町戦争』の前夜編、「戦争研修」も収録。
ただ私、あの作品読んだのブログを始める前で…あまり詳しいことは覚えてないんですよねぇ(^_^;)。
戦争≠敵対・殺し合い
戦争=連携・共同事業→目標達成

って・・・、えぇ~?死者が出るのに、それでも「事業」と言い張るんだ?どういう論理?って思ったけど、これもまた三崎さんの作品世界でのルールってことになるんでしょうねぇ。怖ろしい。しかも、誰もがそれを受け入れるんですもんねぇ。
この物語の後、『となり町戦争』は始まり、いつの間にか終わったんですよね。
あるがままに受け入れられていく、理不尽の恐ろしさと、落ち着かなさ。

・・・三崎さんの作品世界は、どこへ向かうのでしょう。

(2013.01.31 読了)

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三崎亜記 集英社発行年月:2012年11月 予約締切日:2012年11月21日 ページ数:220p


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この記事へのコメント

2013年02月06日 15:19
あ~そうそう。読みながら得体のしれない不安が大きくなるような、そんな作品でした。
そして、報道されない事実とか、ネット上のやりとりの不確かさや匿名故の危うさとか、現実でもあり得ること、という怖さがじわじわと沁みてきて、落ち着かない気持ちになりました。
2013年02月06日 21:59
すずなさん、ありがとうございます。
リアルなのに、現実味があるようなないような…という揺らぐ感じが、不安をあおるんでしょうかねぇ。
それでも、三崎さんの描くこの世界の物語を読みたい、と思ってしまうのが、スゴイです。
三崎さんの罠に、きっちりはまってますね(笑)。

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  • 逆回りのお散歩(三崎亜記)

    Excerpt: あいかわらず、三崎ワールド全開な作品。 Weblog: Bookworm racked: 2013-02-06 12:38
  • 行政の操り

    Excerpt: 小説「逆回りのお散歩」を読みました。 著者は 三崎 亜紀 表題作の中編と短編1作からなる構成 市、戦争、行政 ネット、デモ・・・ これらをモチーフに著者らしい、ちょっと不思議な世界で見せていく.. Weblog: 笑う社会人の生活 racked: 2013-05-30 21:52