『阿蘭陀西鶴』/朝井まかて ◎

井原西鶴。『好色一代男』を筆頭に、『日本永代蔵』『世間胸算用』など、斬新な草子をたくさん描いた戯作者。そういえば、矢数俳諧とかもやってたんだっけ~、ぐらいの茫洋とした知識で読み始めました。
異端で奇天烈を意味する「阿蘭陀(おらんだ)」を自ら冠する男『阿蘭陀西鶴』の半生を、その盲目の娘・おあいの視点で描く。朝井まかてさんの語る、日本初のベストセラー作家とその娘の物語、大変楽しませていただきました!

小さい頃に視力を完全に失ったおあいは、盲目でも生きていけるよう母に家事全般を仕込まれる。その母が亡くなり、弟二人は養子に出され、新進気鋭の俳人である父との生活が始まる。
自分の才に自信のある西鶴は、大胆な言動・人懐こい人たらしな面・喧嘩っ早さ、さまざまな面を持った、魅力的だがちょっと困った男。娘から見れば、いい加減で自分勝手で、はた迷惑な限りだが・・・。
盲目故の生真面目さと思い込みから父を嫌っていたおあいが、役者の辰彌の言葉に促され、少しずつ父の愛情に気づくようになり、一回りも二回りも成長する過程が、丁寧に描かれていました。

最初の頑ななおあいの気持ち、実はわかります。読んでて「西鶴はいい加減というか、自分の興味の方だけ一生懸命で、こういう人家族だったら大変だろうなぁ」って思いましたもん。そりゃ、才能があって、周りもそれをもてはやしてくれて、社交好きで、上手く世の中渡っていけるタイプだから、そんなに心配する必要はないんだろうけど、やっぱりはた迷惑だよなぁ、と。

父娘が暮らす長屋の大晦日、青物屋や酒屋の掛取りが節季払いの回収に来る。二人で掻巻にくるまってそれをやり過ごす、というシーンが最後の方にあります。わかり合った親子の、暖かくちょっと微笑ましい様子が、とてもいい。~~「ご近所の手前もあるしなあ。うちだけ払いを済ませたら義理が悪い」~~(本文より引用)の言葉も笑える。貧乏でも、互いを思いやって心豊かに暮らしているのが伝わる、とてもいいエピソードだと思いましたね。

西鶴が「好色一代男」を出板しようとするも、大阪はおろか京都江戸、どこの板元も引き受けてくれず、西鶴が口八丁で荒砥屋に板元になるよう依頼、荒砥屋も西鶴の熱意と才能を信じて引き受け最終的には大当たりを出す。二匹目のどじょうを狙う板元たちは西鶴の元へ押し寄せてくる。だが、実はすでに2作目は口の堅い板元からすでに出板が決まっている、という話の中で、荒砥屋が「一代男で充分」とあっさり綺麗に身を引いたのが、とても恰好がよく、粋だなぁと思いましたね。
こういう気風の良い人がいるというのは、心地がいいものですな。

とにかく、面白かったです。学生時代にちょっとかじったあの時代の文学の裏側に、こんな物語があったとしたら。あのころにこの物語を読めてたら、もっと勉強熱心になれたかも(笑)。

しかし、おあいの作る料理がおいしそうです。朝井さんて、料理の描写がうまいですねぇ。丁寧にだしを取って、調味料の加減もしっかりと心配りしたおあいの料理、私も食べてみたいです。
鯛も捌けるんですよね~、すごいなぁ。捌くだけなら多分出来るけど、皮や骨に身を大量に持って行かれて、食べるトコなくなる、私なら(笑)。

おあいの目から見た、町人の暮らしのあれこれ、養子に出た弟との再会、西鶴とその弟子や仲間とのやり取りの軽妙さ、好きになる間もなかった辰彌との気持ちの揺れ動き、丁寧に生きたものだけが語りえる物語でした。

(2015.10.27 読了)

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この記事へのコメント

2015年10月29日 13:00
私も最初は西鶴に対して「こんな人が家族だったら大変だろうなぁ」と思っていました。でも、読んでいくと家族に対する深い愛情とか、色々と分かってきて、最後はとっても好きになっていました。おあいと西鶴の関係が好きだなぁと思い増した。
そして、お料理が本当に美味しそうでしたね~。読みながらお腹が空きました(笑)
2015年10月29日 17:17
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
西鶴への感情は、おあいにシンクロしてましたね。派手好きだけど、本当に娘のことを思っての言動が、とても暖かいと思いました。

そう、お腹空きますよね(笑)。
素朴で丁寧なお料理、だれか私に作って(^_^;)。

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  • 阿蘭陀西鶴(朝井まかて)

    Excerpt: 「好色一代男」「世間胸算用」などの浮世草子で知られる井原西鶴。そんな西鶴を彼の盲目の娘の視点で描いた物語。 Weblog: Bookworm racked: 2015-10-29 12:37