『スロウハイツの神様』(上)(下)/辻村深月 ◎

新進気鋭の脚本家・赤羽環の所有する〈スロウハイツ〉。シェアする住人は、クリエイターの卵たちと人気小説家・チヨダ・コーキとその編集者。
登場人物たち一人一人の物語がしっかりとあった上での、共同生活の日々。
辻村深月さん、素晴らしかったです。読み終わって、ほわぁぁって深い息を吐き出して、「あれも伏線だったのか」「あれはそういうことだったのか」と、色々なエピソードを思い出しました。
『スロウハイツの神様』、神様は…いましたねぇ。本当に、心が温まるラストでした!

上巻では、それぞれの過去と今、目指すクリエイティブ分野とその中でのその人の立ち位置などが語られ、スロウハイツの皆が、公輝(コウちゃん)を大事に思い、尊敬し、愛していることが丁寧に描かれていく。
そして、スロウハイツに加わった、ゴスロリ美少女・莉々亜。公輝の熱狂的なファンだというのだが、作り物感が強すぎて、不穏すぎる・・・。
下巻に入り、上巻ラストで立ち込めた暗雲が爆発する。住人達のそれぞれの状況を変え、疑心暗鬼を生み、創作へのプライドと苦しさが充満する。チヨダ・コーキの贋物騒動、環を脅かす漫画原作者の存在、様々な事態が発生し、混乱し、火花を散らし…。
環の過去が詳しく語られ、公輝の過去も語られ、物語が収束するとき、「物語のテーマは愛だ」というセリフが入る。
三十台に入った赤羽環の話、という二つ目のエピローグ、ホントに良かった・・・!

愛・・ですよねぇ、愛。うん、愛。
なんか、そんな単純な言葉を繰り返してしまいます。
上巻で「あれ?」と思った小さなエピソードが、下巻後半でどんどんパズルのピースとしてはまっていき、予想だにしなかった絵が仕上がっていく素晴らしさ。
環と妹の桃花のクリスマスケーキのエピソード。ケーキを売ってたコンビニ店員の正体に思い当たった途端、いろんな謎がぴたぴたとはまってきて、ああッそうか~!と。
だけど、ラスト近くまで「コーキの天使ちゃん」については、分からないままで、え?え?あ!!!そういうことか!の怒涛の納得の連続。
・・・辻村さん、凄すぎ。
ちょっとした引っ掛かり、気付くことないまま通り過ぎたエピソード、いくつもの伏線が隠されてて、それらが収束したら見えてくる、〈スロウハイツの神様〉。
優しくて、強くて弱くて、プライドが高くて。そして、愛していて。
読めてよかった、とても素晴らしい作品でした…!

なんか、殆どまともなこと書けてないのですが、何を書いたらいいのかわからないぐらい、素晴らしかったです。

しかし、アレですね。黒木さん、とんでもないプロデューサーだなぁと思いました。的確すぎて、オソロシイ。でも、チヨダ・コーキもそんな黒木さんを信用してるんですよねぇ。
ところで黒木さんは、公輝がある駅の待合室通いをしてたことには気づいてるんでしょうかね?気づいてないのはなんだかおかしいし、でもだとしたら待合室通いの意味はもちろん分かるだろうし、そうしたら莉々亜なんかブッ込んで来ないと思うんですけどねぇ。そこだけちょっと疑問。

あと、狩野が予想以上に重要人物。彼女はあの子だし。いやいやいや・・・。公輝との会話で「自分は酷いことも出来る」と言ってたのが、ちょっと引っかかってはいたけど、まさかそんな方向でだったとは…!酷いようなひどくないような・・・(^_^;)。

正義もスーも、それぞれの才能が開花しつつあるラストに安心しました。
〈スロウハイツ〉は〈ときわ荘〉・・・ですね、まさに。

そういえば『凍りのくじら』の芦沢光(理帆子)が、環の友人として出てきましたね!
実は私、同じ作者さんで作品同士で登場人物がリンクしているのが、すごく好きです。自分の好きな世界が、ちゃんと存在しているっていう感じがして。あの作品のこの人は、その時に描かれただけの人じゃなくて、描かれない時もちゃんと生活してて存在してる、その創作世界のリアリティというのでしょうか、それを感じられると、嬉しくなります。
そのつながりで言うと、「トーケイ動画」っていう、アニメの制作会社の名前にも「おお!!」って思いました。アレですよね、『ハケンアニメ!』に出てきましたよね~♪

辻村作品は、あちこちで登場人物がリンクしてるそうなので、楽しみです。

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【苗坊の徒然日記】 苗坊さんスロウハイツの神様 辻村深月

(2016.03.12 読了)

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この記事へのコメント

2016年03月15日 13:52
あれもこれも、そして、あれも!全部、伏線だったのかーっ!!と叫びだしたくなるくらい凄かったですねぇ。お陰で、一気にテンションが上がってしまいました(笑)
ホント素敵な作品でしたね!
・・・ハケンアニメ!とのリンクは気付かなかったです。ちょっと悔しいデス。。。
2016年03月15日 17:32
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
何てことなさそうなエピソードもしっかりラストで嵌まってくるという、素晴らしい伏線回収でしたねぇ!ホント、お見事でした♪
トーケイ動画の件は、たまたまデスよ(^_^;)。読んだの割と最近ですしね。
辻村さんはほとんど未読なので、これから先が楽しみです♪
苗坊
2018年07月12日 19:55
こんばんは!
ようやく読みました。
なんで早く読まなかったのかと後悔しました。
スロウハイツに神様はいましたね。
環とコーキの関係が分かった時、コーキの「お久しぶりです」の意味が分かった時、涙が出てきました。
この物語のテーマは確かに愛でした!
2018年07月13日 15:28
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
そうなんですよ、愛ですよね!
「お久しぶりです」の本当の意味、お互いがお互いの心の支えであったこと、ホントに素晴らしかった!
スロウハイツの住人それぞれに、明るい未来が見えてくるラストもよかったです。

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