『怪談』/小池真理子 〇
あれぇ・・・?
『怪談』なんていうシンプルなタイトルだと、ゾワゾワ系のすっごく怖い話かと勝手に思ってまして、ちょっと、肩透かしでした。
私、小池真理子さんは、あまり読んだことが無いのですが、たぶんドロドロの恋愛ものの方が好きかも・・・。
〈怪談〉と言えば〈怪談〉だけど、ぞっとするようなホラーではなく、説明しがたい不思議な現象が起こって…という感じ。
登場人物たちも、その現象を怖がっているというよりは、状況に流されて受け入れてしまっていて、怖いというより、仕方なかったり、案外それを喜んでたり。
オチもあんまりきちんとついてなくて「え?…それで、どうしたの?」というツッコミを入れてしまう作品が多かったです。
ああ、そうだ。「彼岸と此岸の境目」は茫洋として、いつの間にか「息をするのも忘れてしまいそう」な感覚を登場人物たちが感じているにもかかわらず、読んでいる私ははっきりと覚醒していて、ひどく冷静に物語を読んでたようにおもいます。
珍しく、物語と自分の間に、はっきりと距離が取れていました。こういう読み方をしたのは、久しぶりかも。
「座敷」が、一番ゾワゾワしたかな。病死した夫の、その弟と再婚した友人。古くて広い屋敷に住む彼女は、前の夫の気配に怯え続けている。その家に泊まった主人公は、夜中に屋敷内をさまよい、とある一室にたどり着いてしまう。…そこにいたのは。割とスタンダードに怖かったです。
逆に「同居人」は、山の中で暮らす老画家が、時折出没する子供の存在に心癒されながら生活してたら…最後に出てきた髪の長い女は、結局何者だったのでしょうねぇ。画家は「子供の母親」だと思ってたようですが、じーっと俯いて正座しているだけというのは、何を言いたかっのかしたかったのかわからなくて、怖いというより「…なんやねん」という感じでした。
「カーディガン」の、カーディガンの本来持ち主は主人公とどういう関係なのか全く関係ないのか、何故持ち主の母親は主人公を受け入れてあまつさえ「いずれはあなたが着る」と言うのか、主人公は不審に思いながらもどうしてその家に通い続けてしまうのか、色々説明不足でツッコミどころが多く、何一つ明らかにならないまま終わってしまうところが、不完全燃焼でした。
「還る」の、ストーリーはよかったです。もう相当な年齢になっている語り手の女性、時々ふと現れる男、その男の正体を知って、自分の死後を思う女性。ただ、それを語る相手が平板すぎて、ちょっと残念。人物構成もないような相手に語るぐらいなら、ずっと独り言でもよかったような気が・・・。
とまあ、なんだか不平が多くなったのはきっと、物語に入り込めなかったからでしょう。
でも、読むのが苦痛だったわけではなく、主人公たちと同様に物語の展開に流されるがままだったようです。
(2017.09.30 読了)
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