『影王の都』/羽角曜 〇

砂漠のどこかに時々出現するという、〈影の都〉。そこに唯一人君臨する〈影王〉は時折、人を呼び寄せるという。
第一回創元ファンタジイ新人賞・選考委員特別賞受賞作、『影王の都』(受賞時タイトルは「砂の歌 影の聖域」)。
羽角曜さんの新人とは思えない煌びやかで幻想的な描写に、非常に惹き込まれました。

影王に呼ばれたイーラとヴィワン、砂漠を目指すリアノと喋る髑髏、リアノの兄ガレルーンの物語がそれぞれに展開し、最終章に向かって一つの輪にまとまっていく。
イーラにしろリアノにしろ、たおやかな年若い女性が、自分の置かれた状況に折れることなく自らを強く持って道を切り拓いていく様子が、とても心地よかったですね。2人ともとても聡明だし。

ガレルーンが一番苦労してたような気がしますね(笑)。
故郷を離れ、港町の有力商人の屋敷で男娼を経て秘書になり、喋る髑髏の不思議に触れて砂漠の国に飛ばされ、一緒に飛ばされた少年が王の子になりすまそうとしたり、妹の消息を知っている男と遭遇したり、その男を追って抜け出そうとして命を失ったり・・・。
しかも、ラストシーンでガレルーンに直接の救済はなかったわけで。
ただ、直接はなかったけど違う展開になったのだから、たぶん救われたんだろうとは思うんですけど。

砂漠とファンタジーという幻想的な舞台に、喋る髑髏というコミカルな存在を加えて、軽快に物語が進んでいき、〈影王〉が生まれるに至ったストーリーのキーワードが意外なところから現れては、惑わされました。物語のそれぞれの繋がりが変だな…と思っていたら、最終章で壮大な種明かしが。
異世界ファンタジーが更に異世界を含むとなると、説明がちになってしまいますね。
ちょっと最終章が説明文的で走りすぎた感はあるけど、とても面白かったです。

それと、文章から浮かび上がる情景の美しさが、非常に確かなもので、びっくりしましたね。
幻想的な景色、端麗な人物たちの葛藤や決意、新人賞作品から単行本への手直しはあったとしても、デビュー作とは思えないレベルでした。
この作家さんなら、もっと耽美な物語も書けるんじゃないかしら。期待してしまいますね。

(2018.03.11 読了)

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