『チェーン・ピープル』/三崎亜記 〇

短編集だからって、気を抜いてちゃダメなんですよね、三崎亜記さんの作品は(^^;)。
ホント、世界観の設定ノートが見たいわ~。どうなってるんだろう。大きく理不尽なことは描かれていないのに、『チェーン・ピープル』のそれぞれの物語があるのは、やっぱり〈何かがズレている〉世界。ゾワゾワするわぁ~。

「正義の味方‐塗り替えられた「像」‐」
塗り替えられたのは、思い込みと像そのもの。
「似叙伝‐人の願いの境界線‐」
そうあってほしかったことを書くことで、顧客の満足を得る。
「チェーン・ピープル‐画一化された「個性」‐」
いつでもどこでも安心安定の〈人格〉を、たくさんの人が継承していたら?
「ナナツコク‐記憶の地図の行方‐」
ずっと受け継がれてきた、存在しない国の地図。
「ぬまっチ‐裸の道化師‐」
ゆるキャラの「中の人」が…中の人だけだったらどうなるの。
「応援‐「頑張れ!」の呪縛‐」
「応援」と書いて「おいつめ」と読む。世の中のの恐ろしさ。

タイトルと表紙を見て、「チェーンメール」みたいな悪意の連鎖的な物語なのかな?と思っていたら、違いました。チェーン店の方ね。
でもどの物語にも、そこはかとなく悪意が紛れ込んでいるようで、読んでてゾワゾワしましたね。え?この世界、これでいいの??みたいな。

全ての物語を語るのは、ルポライターらしき人物。依頼されたものではなく個人的な取材であるため、このライターの〈私〉の主観で掘り下げられるこの6つの「人物像」は、フラットな視線で描かれているように見えます。
実際、読んでいるときは「作中ドキュメント」だと思っていたのですが、あとでふと「でもこれって何も検証されてない、この〈私〉が書いてるだけのことだよな・・・」と気付いて、少しだけ狼狽しました。
私だって、一方的な情報だけで決めつけてるのでは?ということに気付かされて。
まあ、フィクションである小説の中の出来事を検証するも何もないって言ってしまえば、それまでなんですけどね。

という訳で、語り手ルポライター〈私〉の語るこれらの物語が、(物語上の)事実であるという前提がないとレビューもへったくれもないので、まあ、その前提で行きますね(^^;)。
いやぁ、どの物語もなんとも居心地が悪いというか、落ち着かないですね。
正義の味方も、見方を変えれば、悪扱いになる。ていうか、ああいう特撮ヒーローの「人類を守るために最小限ではあるけど出してしまった被害」については、「これ、誰が補償するんだろう…」というちょっと捻くれた想いを抱いていたので、こういう塗り替えってありそうだよなぁ、と思ってしまいました。
最後に「正義の味方像」が赤と銀色に落書き?されたというのを読んで、あっちゃ~そこまで持ってっちゃうか~と苦笑してしまったんですけど、某〇谷プロにはこのストーリー、ハナシは通ってるんでしょうか(笑)。

「チェーン・ピープル」なんですけど、なんでこの「平田昌三」という人物が選ばれたんですかねぇ。いや、温厚で誠実そうで、いい人そうではありますが。平々凡々な「彼」がなぜ選ばれ、そして何度も危機を乗り越え、新しい癖まで付け足され、300人もの継承者を抱える団体となったのか?いう疑問に加え、この団体の運営費用はどこから出てるのか?、というのは私的には非常に気になるところですよ(笑)。
まあ、私には「平田昌三として生きる」なんて無理だな~、女だからとか、そういうの置いといても(笑)。

「ぬまっチ」、中の人の徹底ぶりにニヤニヤしてたら、市長とのつながりのあたりから妙にキナ臭い感じに。あらまあ、もしそれがホントなら、なかなかに遠大で巧妙な計画ですな~。ここまで仕組んだ計略なら、うまいこと行ってもいいんじゃないかとか思っちゃいますね。なんか、有権者のために働いてくれて、私欲とかなさそう。なんて思っちゃうのは、私が単純すぎるんでしょうかね(笑)。

「応援」は怖かった~。ていうか、現実の私たちの世界にもありそう。フェイクや誤認が含まれる情報だけで、とある人物を攻撃する「不特定多数」を笠に着て暴走する人々。自分が信じる「悪」をやり玉に挙げ、攻撃行動に走るその極端さ、読んでいて不愉快だけど、ネット社会という匿名性の中で、そういう事態は膨れ上がっていますもんね。私個人としては、なんでそこまで他人を攻撃したいのか?って、思ってしまいます。

他の三崎作品とのリンクは特に気づきませんでしたが、これらの物語があの世界の「小さな出来事の物語」だとすると、私が勝手に提唱している「三崎作品の世界では、人間は精神体に切り替わる過渡期にある」の時系列どこに当てはまるのかしら、なんて思ってしまいます。いや、ホント私が勝手に思ってるだけなんですけどね。本作ではあまり、精神的な力とかは描かれてないから、初期の方かしら…とか。ははは。

(2018.07.17 読了)

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この記事へのコメント

Todo23
2018年07月24日 07:20
相変わらず、ちょっとズレた世界は面白かったのですが、個人的には三崎さんらしい「滅びの美学」的なところが無く、またいつもよりかなり風刺的、教訓的なのが気になりました。
2018年07月27日 17:30
Todo23さん、ありがとうございます(^^)。
そうですねぇ、今作ではあまり〈喪失〉が深くは描かれてなかったですね。
三崎さんの描く〈失われるものに対する郷愁〉や〈それでも生きていく切なさ〉の美しさが好きなので、今作はちょっと物足りない気がしました。

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