『末枯れの花守』/菅浩江 ◎

今まで菅浩江さんの作品と言えば、〈人〉と〈機械〉の遠い未来を描いた優しく切ない物語、というイメージだったのですが、本作『末枯れの花守』は全く違う世界観の物語でした。
でも、こういう和風の幻想世界ものも、大好きです。美しくも温かく切ない世界を、堪能しました!

思いが深まりすぎる者を「永遠の花としてやろう」と誘いに来る、2人の美姫・常世姫と永世姫。姫君たちから、その者を守らんと参じる青葉時実とその配下の十郎と五郎。彼らの攻防と、標的になった者の事情と、時実の主・日照間の悲しみの原因が、美しい花々が舞い散る中でゆるゆると語られる。
「朝顔」「曼殊沙華」「寒牡丹」「山百合」「老松」、5章それぞれ、姫君たちは〈人〉を彼らの思いを託した〈永遠の花〉にてやろう、と誘いをかける。

いやぁ、耽美でしたなぁ。
姫君たちの衣装の豪華なこと!!彼女らが弄ぶ、永遠の花を封じ込めた装束や家具や景色。
そして、甘言を弄して人を誘い込もうとするときの、艶やかな顔立ち。時実たちに意を阻まれたときの、美しいながらも鬼の如き形相。
相反して、徹底して怜悧な時実。
文章から立ち上がる噎せ返るような花の香りと、思いが深まりすぎてしまう人の業の深さが絡まり合って、濃厚すぎる情念が充ち満ちて、そして最後には時実によって清涼に払われる様子。

いかんいかん・・・、感傷的な書き方をしてしまいました。
どの物語も、姫君たちが誘いに行く人々の業の深さが尋常でないながらも、でもきっとこれぐらいの情は誰の中にも潜んでいそうで、読んでてちょっと抉られました。
いや、たぶん私みたいにぬぼーっと生きてる奴のところには、姫君たちはどんなに暇を持て余しても来ないと思いますが(笑)。
中でも「山百合」がちょっと趣向が違って非常に面白く、かつ抉られました(笑)。
山百合になった女は、しおらしくて損ばかりしてる女を自己演出してたという・・・ね。まあ、最初から「遠慮がちなふりして図々しい」ところがチラホラしてて、結構ウザさ全開でしたが。花がいくつも開いた状態になったら、全部ダダ漏れと言うのが、可笑しかったです。けど、こういう面って、持ってるよね?自分もね?・・・って言う意味で「アイタタタ」でした(笑)。

「寒牡丹」の真里美の自尊心の高さ、素晴らしかった。自分の実力を高く評価し、女王然としていた彼女の心の隙に忍び込もうとした姫君たちは、見事な返り討ちにあう。一時は揺らぎ、姫たちの世界に心奪われそうになった真里実に再度自尊心をよみがえらせたのは、彼女自身の気概であった。
キリキリと研ぎ澄まされた、美しき少女の実力と思いの強さに裏付けされた自尊心。なかなか、ここまでの少女は見られないと思いましたね。その意気や良し!きっと挫折することはあっても、彼女は女優として大成するでしょう。そんな物語も、読んでみたい気がしました。

最終章「老松」までで、ぽつぽつと小出しにされてきた、日照間とその妻・朧のこと。最終章で明らかになるのかと思ったら、結局何がどうなって、こんな風に姫君たちの揶揄の対象となり、時実や日照間の心に陰りを与えることになってしまったのか、ほとんど分かりませんでしたねぇ。
物語の中から推測するに、日照間はいわゆる「主神」なのだろうと思います。だとすると朧は「月」。
主命により主の妻を斬り殺し、その臓物を引きずり出したという時実。イザナギ・イザナミ神話とは違う、主神とその妻の物語?
・・・気になりますねぇ。菅さん、連作短編として、続きを書いてくれないかしら。

「老松」、ほんわりと温かく終わって良かったです。
「衣装褒め」で姫君たちを混乱させるフキおばあちゃん、さすが年の功(明らかに姫君たちの方が長命のはずですが)。
おばあちゃんを思って、必死に姫君たちの前に立ち、時実を訪ない真実を聞き出そうとする、気丈な孫娘・和歌子との優しく強い関係も素敵でした。
そして最後に登場する日照間・・・だけど、どうしても日照間の印象が薄い(笑)。
最終的にいいところを全部時実に譲っちゃったからですかねぇ。
少しだけ日照間と時実たちに明るさが射し、フキと和歌子がそっと現実に戻れたラストが、印象的でした。
フキおばあちゃんの話を読んでたら、黒飴が食べたくなりました(笑)。

そうそう。
姫君たちが江戸好み風で、時実たちはどちらかと言うと都風(平安だったり室町風だったり)と、時代がかかった状況であるにもかかわらず、誘われる「人」は今の私たちの時代の人、と言うのも、よかったです。
自分に近くて、仄見える情念も理解できて・・・、人の持つ欺瞞や残酷さが、美しい世界の中でも鮮明に描かれていたと感じました。

(2018.10.21 読了)


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この記事へのコメント

Todo23
2018年10月23日 08:42
この場を借りて、ご連絡。

このたび長年住み家としていたGeocityが閉鎖されることになり、私のHP「Todoの部屋」は以下に転居することに致しました。
転居先(作成済み):http://todo23.g1.xrea.com/
御面倒とは思いますが、「Todoの部屋」のリンク先URLの変更をお願いします。

なお、ブログ「Todo Diary~日記」と「Todo Diary~読書録」、BBS「TodoのBBS」は従来通りの運用です。

【今後の予定】
旧HPは10/31に閉鎖し、代わりに転居案内(2019/9/30まで自動的に新居に転送する画面です)を掲載します。

御面倒でしょうが、よろしくお願いします。
2018年10月23日 17:53
Todo23さん、ご連絡ありがとうございます。
リンク、張り替えておきますね♪
ウェブリブログの反映がまた遅いかもしれませんが・・・(^^;)。

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