『AX』/伊坂幸太郎 ◎

伊坂幸太郎さんの〈殺し屋シリーズ〉第3弾。
本作『AX』の主人公は、一流の殺し屋だが、殺し屋稼業をを引退したくて仕方ない男・兜(かぶと)。
兜は妻の不機嫌をいたく恐れており、高校生の息子にまで心配され呆れられるレベルの恐妻家なのだが・・・。

殺伐とした殺し屋稼業、量産される死体と度重なる死闘。
・・・だけど、読了後のこの胸の暖かさは何だろう。
伊坂さんの〈殺し屋シリーズ〉って、〈殺し屋〉という酸鼻極まりない職業の者たちを描いているのに、その殺し屋たちが妙に人間味あふれて魅力的で、本作の兜も、妻に気を使って気を使ってなんでそこまで?って思っちゃうくらいだし、息子に対する愛情とぎごちなさ(でもちゃんと息子には通じてる)なんか、ホント普通のお父さんなんですよねぇ。
息子が生まれたころからずっと、手術(仲介者の医者による隠語で、殺しの依頼とその処理)を止めたいと言い続けて、「退院(殺し屋稼業を引退)するにはお金が必要です」と言われ、仕方なく殺しを引き受ける日々。

彼が引き受けた手術、彼をつけ狙う同業者との死闘、妻の不機嫌を回避するための情けない彼の言動、家族のために仕事(裏稼業の方)と日常の板挟み、様々な出来事が積み重なるなかで、より「引退」を意識する兜だが、今までに多くの人の人生を断ち切って来たことの罪悪感もちゃんと覚えている。自分一人が安穏と引退することは出来ないかもしれない、という覚悟もある。
だけど、家族を思えば引退したし、しかし家族に危害が加わることは避けたし・・・・と苦渋の中で、彼が迎えた結末。
そして10年後、兜の息子・克巳は、家の近くでも父の職場の近くでもない病院の診察券と父の残した一本の鍵を発見し、〈父の自死〉を探り始め、とある部屋にたどり着く。
そこで、兜は10年越しの復讐を果たし、家族を守り切る。

傍目には恐妻家、本人としては愛妻家(ただし恐れてることは自覚あり)の殺し屋だった、兜。彼の幕引きには、家族への愛にあふれていた。準備は「絵にかいた餅」になってしまったと彼は言っていたけれど、まさか10年経ってそれが発動し、その後の処理をしてくれるクリーニング屋も彼の家族の近くにいたなんて、やっぱり伊坂さんだなぁ!あちこちにちりばめられた伏線が、一挙に回収されていくラストは、本当に読んでてドキドキしました。
医者に色々話してしまった克巳に、危ないよ~!と思ってたけど、ちゃんとそれもきちんと収まるべきラストのための一歩だったし、クリーニング屋もかつて兜とのやり取りに恩義を感じていた男だったし、うまくこの男が登場してくれたことで、物事は上手く始末が付いたのだし・・・。

兜が大事にしまっておいたもの。「妻の機嫌に上手く対処するための記録ノート」「鍵」「キッズパークのチラシ」。
「キッズパークのチラシ」は何だろう?と思ってたら、一番最後に出てきました。そういう出会いだったんだぁ。
既に殺し屋稼業に身を染めていた兜に、「悪い人には見えない」「いいお父さんになれそう」と言い放った女性。
兜の受けた温かい衝撃は、きっと我々普通の人間には想像できるものじゃないでしょうねぇ。そりゃあ、大切になっちゃいますよね。
お母さんが兜の恐妻ぶりに全く気付かず「あの人のんびりしてたから」って言った瞬間は、「この人神経ぶっといというか、鈍感だな~」と呆れましたが、しょっぱなにこうやって気持ちをぐっと掴んじゃったんだもん、仕方ないですね(笑)。

きっと克巳も、いいお父さんになるんだろうなぁ。
ほっこりとした気持ちで、読了できました。
・・・あれ?殺し屋の話だったよね(笑)。

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(2019.01.06 読了)

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この記事へのコメント

苗坊
2019年01月06日 21:44
こんばんは^^
主人公が殺し屋の話とは思えないほどのほのぼの感でしたよね。兜の人柄が素敵すぎて、だからこそ中盤の展開は驚くと同時に悲しかったです。
でも、息子がちゃんと遺志を継いでくれてよかったです(不可抗力ではありますが)。良いお父さんになりますよね~きっと^^
2019年01月07日 15:17
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
何とも伊坂さんらしいラストでしたね!
一流の殺し屋でも、家族を思えば「普通のおじさん」。その叔父さんがカッコよくて、素敵でした。

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