『サムライ・ダイアリー ~鸚鵡籠中記異聞~』 天野純希 〇

実在の尾張藩士・朝日文左衛門が26年間書き続けた日記の「秘本」が綴られる『サムライ・ダイアリー ~鸚鵡籠中記異聞~』
表本は実在してて、当時の世相・風俗を知る貴重な資料なのだそうですが、こんな異本があったら、こっちの方が世の中には受けたでしょうね(笑)。
天野純希さんの描くダメダメ藩士・文左衛門の日々が、なんとも情けなくそれでいて「しょうがない人だ…」と思えてしまうという、肩の力の抜けた楽しい日記でした。

冒頭に『鸚鵡籠中記』の異本を探す若者たちが、とある女性を訪ねてきたところから、物語は始まります。
すぐに、若き日の文左衛門の日記が始まり、そして文左衛門の死後、その師から秘本はそのとある女性に託されたところで、物語は終わります。

しかしねぇ(笑)。文左衛門、ホントにダメダメ藩士なんですわ。
まあ、武士が暇を持て余す太平の世の中ってのは、いいことなんですけどね(^^;)。
武道を習っても上達せず、町中を歩けば鞘を残して刀を盗まれる、芝居見物に入れあげ(倹約令施行中の時代である)、格好をつけてもめごとに頭を突っ込んでは追い回され、酒を過ごしては失敗を繰り返す。
せっかく嫁に貰えた初恋の相手とも自分の過ちがきっかけで別れる羽目になり、次に貰った若い後妻とも関係が上手くいかない。
それでも、おおらかな性格が幸いしてか友人は多く、娘たちには(心配されつつも)慕われている。

文左衛門が書く秘本の方の日記が本書なのだけれど、まあ・・・ホントに何でもかんでも書いてある。
世の中の噂話、好きになった女の話、芝居見物に明け暮れる話、自分の酒の失敗話、幕府や藩政への愚痴・・・こんなこと書き残して大丈夫なのか、こっちが心配になるぐらい(笑)。
そして、自分に甘く酒にだらしがない。読んでる分には「何やってんだろね、この人…」で済むけど、こういう夫は、イヤだなぁ、私。

2人の嫁を最初は大事に思ってるのに、そのうち嫁たちは文左衛門がよそで遊んでいるのではと疑念を抱き、頑なな嫉妬の鬼と化す。文左衛門は家に居づらくなって外をフラフラするから、余計に嫁はキリキリする。そのうち、酔った勢いで家の女中に手を出し、孕ませてしまうところまで同じなのは、ちょっと学習能力がなさすぎじゃないかと思いますよ・・・?

それでも何とか事態が収まってしまうのは、文左衛門が有能な男だからではありません・・・(^^;)。
たまたま、いいアドバイスをくれる師や、事態をうまく呑み込んでくれる女たちがいるから。
そういう人間関係があるのは、ダメダメなりの人徳なんですかねぇ。確かに読んでて「何やってんだ」とか「ダメダメ藩士だなぁ」とは思っても、嫌いにはなれなかったですもんね。

言葉の端々に出てくる名古屋(尾張)弁が、ちょっと懐かしかったです。
まあ、今時はそんなに「みゃあみゃあ」言いませんけど(笑)。

(2019.05.21 読了)

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