『インビジブルレイン』/誉田哲也 〇

誉田哲也さんの〈姫川玲子〉シリーズ第4作。
チンピラ惨殺事件を追う姫川たち。上層部からの指示に疑念を持ち、単独捜査を始めた姫川が出会った男の正体。
過去の警察の失態を隠蔽したい上層部、上司の進退と真実の公開とそのやり方に苦悩する姫川、『インビジブルレイン』は降り続ける。

チンピラ惨殺事の捜査を続けるうちに、玲子たち捜査一課のメンバーに「今後、捜査線上に〈柳井健斗〉という男の名前が挙がっても、追及してはならない」「この件は合同で捜査している捜査四課(いわゆるマル暴)には内密に」という指示が下る。

独自に〈柳井健斗〉について調べた姫川は、柳井が上司である捜査一課課長・和田がかつて関わった事件の被害者家族であることを知り、そして惨殺されたチンピラがその事件の真犯人だったのではないかという推測に至る。
その単独捜査の際、出会った男・牧田(槇田)は実は裏社会の男であり、柳井健斗と相互に取引があった・・・。
警察官と裏社会の者、互いの立場を知りつつも惹かれ合ってしまう、姫川と牧田。彼らが迎えた結末は、致し方なかった・・・とは思うのですが、とても残念ですねぇ。
そして、すべての真相(かつての事件での冤罪公表も含め)が明らかにされる記者会見。
読んでいて、胸が痛くなりました。真実は、明かされねばならない。過去の失態は、清算されねばならない。
たとえ、真摯に捜査を執り行う誠実な者であっても。
責任を逃れようとする上層部と、刺し違えてでも。

姫川も捜査一課から異動し、姫川班は解体。
今後のシリーズでは、所轄での姫川の活躍が描かれるのか、再び捜査一課へ戻り姫川班が結成されるのか、ドラマや映画を見ておらず、次作以降のこともあえて情報を入れていない私にはわかりません。
でも、どんな展開になったとしても、姫川は真っ直ぐに事件に立ち向かってくれるのだろうと、思っています。願っています。

警察組織の「身内の保身のための隠蔽体質」には、本当にいやな気分になりました。
確かに、警察という組織が「失敗をした」という事実は、糾弾もされるだろうし、警察不信につながり捜査にも支障を来しもするだろうとは思います。でも、市民と法を守るということを大前提に置いている組織がそんなことでは、何を信用し頼ったらいいのか。
和田や今泉の引責と覚悟、切なかったけれど、こういう幕引きがあったからこそ、今後もこのシリーズを読めるなぁ・・・と思いました。

さて本作で、姫川の恋愛が描かれました。
警察官とヤクザの、道ならぬ激情。互いに闇を持つ者として、激しく惹かれ合ってしまう二人。
読んでいるこちらとしては、その激しい恋情にきらめきを感じつつも、最悪の結末を予感してしまい、辛かったです。
とはいえ、この二人が真に結ばれたとして関係は成立(持続)しないでしょうし、牧田の死でカットアウトされたことで姫川に傷は残ったけれど、「それを胸に抱きつつも、やっぱり前を向いて進んでいく姫川」というヒロインとしての性格付けができるだろうことは、読者としては喜ばしい気が・・・酷いかな、私。
姫川には幸せになって欲しいという思いと、幸せに安閑とせず事件に立ち向かっていって欲しいという思いと、両方あります。姫川は恋愛と刑事という仕事が両立できるタイプじゃないと思うので、難しいでしょうけどねぇ。部下の菊田じゃ、ちょっと物足りない気がするんですよ。あの人弱腰すぎるし、そのくせいっちょ前に独占欲嫉妬満載で。まあ、いい人なんだけどね(^^;)。

本作で、姫川とコンビを組んだのは捜査四課の下井。
和田と親しい下井は姫川の単独捜査を許し、捜査会議では姫川の欠席フォローまでしてくれる。
マル暴の刑事というと、姫川のような女性刑事に対して嫌悪を抱いて邪魔ばかりするのかと思ったら、逆に背中を押してくれたりして、地味ながらカッコイイなと思いました(外見はニホンザルに似て煮しめたゴボウのようと形容されてますが(笑))。

(2019.08.6 読了)




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