『クリスマス・テロル』/佐藤友哉 〇

まさかの、著者・佐藤友哉氏ご本人による〈読者告発〉が物語中で行われようとは(笑)。
いやいや、参るわぁ。『クリスマス・テロル』という、物騒かつ何となくメルヘンなタイトルからは、想像できなかったですよ全く。
なんていうか、うん、攻めてるねぇ、佐藤さん。攻めてるけど、防衛線も張ってるし、告白も露悪もあるし、非常に混沌としてます。

衝動に突き動かされて家出を決行した少女・小林冬子がたどり着いたのは、3週間に1回しか船の来ない孤島。人口は500人程度。
とある男・熊谷に発見された冬子は、熊谷に与えられた仕事を要領よくこなせず、代わりに隣の小屋で生活する男の監視を命令される。
何故その男を監視するのか、その男は何者なのか、一切の質問には返答はないまま、何日も監視を続けた結果、突然男は姿を消し、島内は捜索で大騒ぎになり、冬子もその騒ぎのまま帰宅することとなる。
受験生だというのに家出からずっと心ここに在らずの冬子を、浩之・唯香という双子がそそのかし、3人で再度島を訪れ、冬子は姿を消した男の調査を始めるが・・・。

あ、こういう展開なら、「その男が何者か(←これは熊谷の弟・尚人と判明)」「尚人はどうやって密室状態から姿を消したのか」「何故、熊谷は尚人を見張らせていたのか」などが判明する過程において、冬子の精神的成長があって云々…となるのが王道だと思うのですが。そうならない。
透子は調査に駆け回るのだけど、尚人については結局わからないことだらけなところに、島で友達になった少女・岬の記憶障害や、熊谷と岬の年老いた母の行動の衝撃、尚人の行方の判明、岬の最期、密室の謎解き、監視の理由などがグルグルに渦巻く混戦状態に陥り、物語は何一つスッキリすることないまま、冬子の破壊行動で物語は終わりを迎える。
えっ、ちょっと待て・・・マジかよ!!そんな終わり方、びっくりですわ・・・。
続く「終章」ではなんと、著者・佐藤友哉本人が登場。「もう鏡家サーガは書けない」と宣言。そして、先ほどまで描かれていた物語にはあまり触れることないまま、自分のデビューから現状を語り出し、関係各位に謝辞を述べ、作家としての退場宣言までして終わってしまう。

これを「言い訳」とか「出版界批判」とか、そういう括り方も出来るわけで、真にそうであれば見苦しい話ですよね。
でもそうじゃない(もちろんそんなものを出版するほど、講談社も愚かではないし)。じゃあ何かというと、私の語彙や表現力ではなかなか難しいんですが。
幸いにして、文庫版の「解説」に再度ご本人が登場し、〈『クリスマス・テロル』その後〉を解説し始めてくれました。
『クリスマス・テロル』は作者の意図したテロルを完遂させ、そして、退場宣言したはずの佐藤友哉は華麗なる再生を遂げ、今も新たな物語を紡いでくれている。
『世界の終わりの終わり』で、自らの再生を物語化し、更にイカレたシリーズを生み出し、さらに終筆宣言したはずの〈鏡家サーガ〉も復活。

・・・お騒がせしといてこれかよ、とは思いません。まあ私の場合、この手の騒動すべてが終わってから、佐藤さんの作品を読み始めたようなものですけど。
この流れが全部あって、それでこその佐藤友哉さんなんだろうなと思ってます。イカレた物語、好きですし。

(2019.11.10 読了)


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