『うつくしい繭』/櫻木みわ 〇

書評か何かでSFとファンタジーの融合みたいな紹介をされていた、櫻木みわさんの『うつくしい繭』
現実的な物語の中に、不思議な出来事がいつの間にか浸透し、軽やかな文章からその世界の光景の美しさ、陽光の眩しさと大気の熱と湿度が感じられました。
なんと、本作がデビュー作とのことですよ。それで、この描写力。これからが楽しみな作家さんですねぇ!

「苦い花と甘い花」
東ティモールで「声」が聞こえる少女が下した決断。
「うつくしい繭」
裏切りにあい傷ついていた私は、ラオスの奥地で特別な施術をする施設で働き始める。
「マグネティック・ジャーニー」
兄を救う薬剤を求めて、導かれるように南インドを訪れる。
「夏光結晶」
九州・南西諸島出身の友達と、その故郷で不思議な貝と出会った。

どの物語の主人公も、それぞれに傷ついた女性たちで(「苦い花と甘い花」は少女だけど)、状況に流されるように物語の舞台に上がるけれど、自らの決断でそれぞれのラストを迎える様子が、読んでいて心強かったです。
ちょっと「苦い花と甘い花」に関しては、やめておけばよかったのに…とは思いましたが。彼女はこれからをどう切り開いていくのだろう、ということは気になりましたね。

「夏光結晶」が、一番好きです。
不思議な貝を見つけて食べ、体内から吐き出された珠を他者が口に含めば、その人の記憶や意識を体験することが出来る・・・という設定。
ミサキとみほ子の性格が全然違うのに、惹かれ合い仲良くなっていく様子も読んでいて心地いい。
そして二人で味わった、170年以上前の医学者・貝類研究者の記憶や感激の鮮やかさ。
2人の珠を持ち去ってしまったシエラは、どうするんでしょうねぇ。もともとの彼の目的とは違う行動になってしまったけれど・・・。
南西諸島の暑い夏、噎せ返るような空気、洞のある海の涼やかさ、透明な美しさ、そして原始に近い彼女たちが体験した記憶、鮮やかにキラキラした描写が素晴らしかったです。

・・・なんですけどねぇ。
どうも、物語の構成的に、私に合わなかったんですよねぇ。
描写はリアルでいて美しいし、読み易く会話も自然でいい文章なんですけど、どうも物語の最後が物足りなかったのですよ。
「きっちり彼女たちのすべてを書ききってほしい」とまでは思ってないんですが、もうちょっと欲しかった。
多分、〈物語のそののち〉を妄想するには、少し情報が足りなかったのでしょう。
まあ、私的には、ってことですけど。

(2020.01.25 読了)

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