『異形のものたち』/小池真理子 〇

『怪談』を読んだ時に「小池真理子さんならドロドロの恋愛ものの方が好きかも」とか言ってたにも関わらず、本作『異形のものたち』も、ホラー系です(^^;)。
書評や帯の惹句に仄昏いものを感じると、ついつい〈読みたい本リスト〉入りさせちゃうんですよねぇ、私(笑)。

『怪談』同様に、物語の人物たちは切実な恐ろしさを体験しているのに、読んでいる私はそれと距離があって、妙な感覚でした。
大抵私がホラーを読むと、〈私の後ろに何か蟠っている・・・、振り向いたらダメだ・・・〉とか〈しんしんと怖いんだよッ・・・!〉とか、そういう感じになるのですが、小池さんの描く「怖ろしい話」は何故か、ガラスの向こう側で起きている出来事のようで、リアルなのに私に迫って来ない。いえ、物語としては、とても良いのですけど。
小池作品と私の相性は、いいのかしら、悪いのかしら(笑)。

どの物語も、あまり怪異を信じないタイプの人が主人公。最初はそれらを否定する主人公たちは、いずれ受け入れざるを得なくなり、そしてその怪異に引きずり込まれる。何かが起こるラストもあれば、何も起こらないまま(ただし怪異は厳然として彼らを飲み込んでいる)終わる話もあり、オチのつかない居心地の悪さを感じたりもしました。

う~ん、どれが良かったのかなぁ・・・。
「面」の、農道を歩いていたら突然無音になり、向こうから白い着物の女が歩いてきて、すれ違う時にみたら般若の面をつけていた・・・というシチュエーションは、全くリアルじゃないのに、その一瞬の無音状態が想像できてしまって、怖かったですね。
なんとなく後回しにしてきたことや蔑ろにしてきたことのツケを、急に払わされた男の錯乱でカットアウトする物語。彼はこのあと、ずっと癒えることのない恐怖に支配され続けるような気がします。ああ、怖ろしい。

「ゾフィーの手袋」の、ゾフィーの執念は怖いというか、私だったら「この女の執念が尽きるまで付き合わなくちゃいけないのか…」と感じそう・・・と思ってしまったことが、怖かったです(笑)。つまりは「もう面倒くさいから、ゾフィーに夫を譲り渡して、私は平穏に生きたいわぁ」と思うんじゃないかと。うわぁ・・・色々マズいですね(笑)。
しかし、凄い執念ですよねぇ。心が病んでいたとはいえ、肉体関係どころか恋愛感情すら抱かれなかったのに執着して、帰国した男を追ってドイツから日本へ来て、帰国後に自死。更に相手が死んだあとは妻のもとに(男の家に)現れる。男への執着に重ねて、妻への嫌がらせも兼ねてたんでしょうねぇ・・・。
主人公は、最後に見つけてしまった白い手袋をどうするのかしら。
私だったら、焼いて灰にして、夫の墓の地面にでも埋めてしまうかも…。そしたら、付き纏われなくなる・・・かしら。それとも嫌がらせは続くのかしら。怖いのは、そっちの方だな・・・(笑)。

本作を読んでいると、彼岸と此岸はいつの間にか隔てるものを失って入り交じっていく様子をひどく冷静な気持ちで(それこそガラス越しに)
眺めているような、そんな感じがしたのでした。
異形のものたちは、そこでゆらゆらと揺れながら、存在していましたが。

(2020.01.29 読了)


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