『感染遊戯』/誉田哲也 ◎

誉田哲也さんの〈姫川玲子〉シリーズの、スピンオフである本作『感染遊戯』
とある会社員殺人事件の捜査本部に乗り込んだガンテツこと勝俣は、姫川の持つその資料を一見し、「15年もよく逃げ回ったものだ」と言い放つ。
「(元)官僚傷害或いは殺人」という共通のキーワードを持った、彼の15年前の事件の回想と現在関わる捜査が交錯する。

短編3つと中編1つという構成ながら、共通のキーワードや捜査するガンテツたちの感じる印象などから、独立した別々の物語ではないのではないか・・・と思っているうちに、やはり物語は一つに収束する。
官僚というシステムが悪をのさばらせ、助長する。それを制裁したい者たちに情報を提供する、サイトの管理人。
サイト管理人が最後に行った行動が、惨劇の引き金となる最後の展開には、やりきれない気持ちになりました。自らの処遇を、運命に委ねたのか。殺人を教唆した罪を、同じ手法で自分にも処罰を与えたというのか。

姫川はほとんど出てこず、ガンテツの強引な捜査がずっと描かれていくので、ちょっと息苦しくなってくるのだけど(少々違法な捜査も辞さないから)、それでもガンテツなりの事件を追う真剣さは、熱い。
ラスト、姫川の元部下・葉山をめぐってやり合うガンテツと姫川の会話の軽妙さに、救われました。この駆け引き、最終的には姫川が勝つんだろうけど、是非つぶさに読んでみたいものです(笑)。葉山の気持ちはどうなんだろう。

そういえば「倉田」という名前を読んで、なんとなく引っかかるな・・・と思ったら、『シンメトリー』の「過ぎた正義」に出てきた人物でした。よく覚えてたなぁ、私・・・。

姫川シリーズの登場人物って、それぞれに危うさを持っている気がします。事件の被疑者はもちろん、当の姫川然り、ガンテツ然り、葉山、倉田然り。警察という正義の組織であるべき組織に所属する者であっても、いや・・・だからこそでしょうか。
警察という組織も清いものではなく、自己保身や利権の醜さを持っているし、その中で何とか正義を貫こうとするならば、真っ直ぐなだけではなくしたたかさや闇をもっていなくては、渡っていけないものなのかもしれません。
そんな彼らの挑む事件を、もっと読んでいきたいと思いました。

(2020.05.06 読了)

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