『定年オヤジ改造計画』/垣谷美雨 〇

男尊女卑甚だしい男が定年退職後、嘱託の仕事もなくなり家のことも一切せず、一日中家にいる。
う~わ~、ちょっと想像しただけで、気が狂いそうになりますな。そりゃ、奥さんも夫源病になるわ~(-_-;)。
垣谷美雨さんの『定年オヤジ改造計画』は、読んでてむかっ腹立ちまくりで、いやあ、疲れた疲れた(笑)。
あ、読む方はサクサクと進みましたよ。このオヤジがどうやって変わっていくのか、気になりますもん。

・・・正直なこと言っちゃうと垣谷さんの作品って、私的には「そんなに都合よく行くもんかいな・・・」と思ってしまう部分があったりするんですよね。
物語の設定がリアルというか切実すぎて、ついつい自分の状況に当てはめて「私の状況じゃ、こんなにコトは上手く運ばないよ・・はぁ・・」とため息が出てしまうというか(ある意味スゴイ描写力ってことです)。
まあ、そりゃそうですよ、ヒトの状況なんて千差万別、それぞれなんだから致し方なし。
この物語は〈実践的な実用書〉じゃないですしね~。

『改造計画』とタイトルされてるけど、主人公を改造しようと誰かが計画を立てて実行していく話ではないです。
この作品のいいところは、主人公・庄司常雄の男尊女卑というか凝り固まった古い感覚が、それでも本人の「このままじゃイカンな」という自覚の元に、変わって行くところだと思います。
まあその意識改革があまりにも遅々として進まないので、むかっ腹が立つのですが(笑)。

まあ、とにかくこのオヤジの感覚の独りよがりなことよ。
一番むかっ腹が立ったのは、「女性は母性があるから子供のウンチは臭くない」ですよ。・・・はぁ?んなわけあるかぁぁ!!
臭いものは、誰だって臭いわ!!だけど、臭いからってウンチのおむつを替えなかったら、子供のおしりがかぶれるでしょうがよ。
まあ他にも、色々と「ふざけんな、クソオヤジ」とぎゃあぎゃあ言いたくなるようなことを山ほど言い出すこのオッサン・・・。
でも、こういうオヤジっているよねぇ。ここまで酷くなくても、似たような感覚の男って、まだいるよねぇ。
そして、どうせ言っても無駄だと思って、<諦めて黙っちゃう>女性も。私もそのうちの一人です。モメたりこっちの論理を理解させようとするのが面倒になってくるから。
あ・・・いかんいかん、私の状況の愚痴話を書いても仕方ないし誰も読みたくないわな、止めよう!(笑)。

話を内容に戻すと、三歳児神話とか母性神話とか、ザ・昭和な感覚でいるこのオヤジ、今は令和ですよ!って言いたいね。
誰も頼れない24時間365日ワンオペ育児、女性活躍とか言いながらそのフォローは家庭(結局は母親本人)に丸投げな政策、ダンナの収入だけじゃやっていけないから働きに出なきゃいけないのに家事を分担(手伝いなんかじゃないよ!分担ね!)しないで独身時代のままでいようとするダンナ、理解のない会社・社会・親類縁者・・・。
あのねぇ、男女協働ってのはね、一緒に働くためにお互いに(お互いによ!)相手を思いやって色々なことを分担しフォローしあうことなの!!

「嫁の麻衣が仕事から帰ってきてお茶の一つも出さない」と内心文句を言ってた常雄、ぶん殴ってやりたくなりましたね。
自分が半日子供の相手して疲れたなら、仕事してきたうえでこの後家事しながら子供の相手をしなきゃいけない大変さがわかったかと思いきや、全然わかってねぇな、このオヤジ!って。
そんな常雄だけど、麻衣の本音を聞いて驚き、自分が世の中の感覚より古いのか・・・と思うようになったり、孫の保育園の汚れ物を漬け置き洗いしたり、洗濯物を取り込んだりしてくれるようになって、すごいなぁ、よしよしこの調子!とだんだん応援する気持ちになって来ました。
それでも、ホント笑えるぐらい意識改革はなかなか進まなくて、最後の方までイライラさせられたりするんですが(笑)。

麻衣の「夫に殺意を覚えました」には、びっくり。ついつい出ちゃったんだろうな(笑)。
でも、そこまで追いつめられるぐらい、常雄の息子・和弘の家事育児無視&軽視の言動は、ひどい。
そしてそれをひどいと思い、息子を変えるためにも自分の中の洗脳をどうにかしなくては、って思えるようになった常雄(しかし本の厚み残り6分の1以下ですよ・・・もっと早く気付いて(笑))は、スゴイと思いましたよ。ただの頑固ジジイじゃなかった、ちゃんと人(息子の嫁や妻)の立場に立ってその辛さが分かるようになったってことですから。

1週間息子にワンオペ育児をさせるという荒療治を考え出したのは、なかなか剛毅だと思いましたね。
確かにそれは大事な「プロジェクト」だわ(笑)。
だけど、ちょっと怖いわ、私だったら。まだ3歳と1歳でしょ、何が起こるかわからないですもん。まあ、子供が寝ないとかずっと泣いてて大変とかいうことを聞かないとか、その程度のトラブルで済んだからいいですけど・・・。

ここから息子が急変して超優良育児パパになる訳じゃないし、常雄だってやっぱり一進一退するんだろうだけど、それでも確かな前進をしているというラストが、なんかホッとしました。
定年オヤジ(正直ウザい)が、孫育てジイジ(息子夫婦や妻にも気が遣えるようになった)へと成長した!って。

ちなみに。
コロナウイルス感染予防で「ステイホーム」だった期間、「在宅ワークになってずっと家に夫がいる」という状態になって絶望的になった奥さん方・・・、常雄の妻の十志子さんの気持ち、すごくわかるでしょうねぇ(笑)。うちは在宅ワークにはならなかったですけど、十志子さんの気持ちは痛いほどわかりますわ!!

(2020.06.05 読了)


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この記事へのコメント

2020年06月08日 15:33
昨年の今頃読みました。私にとっての初・垣谷作品。
あちこちで垣谷さんの名前を見かけるようになり、どうせ読むのなら「毒を食らわば・・」と、もっとも身につまされそうなタイトルの本作品を(笑)手にしたのです。

水無月・Rさんの思いっきり力の入った書評に圧倒され、定年オヤジの私としては如何にコメントしようかと…(笑)
幸いなことに私には「料理好き」という特性が有り、今のところ大丈夫なようですが・・。
2020年06月08日 18:23
todo23さん、ありがとうございます(^^)。
この作品が初・垣谷作品だなんて、なかなかチャレンジャーですね!

いやもう、垣谷さんの作品て身につまされたりリアルすぎて抉られまくったり、ついつい勢いでいろいろ書いてしまいました(笑)。

料理好きはいいですね!羨ましいです!
私自身があまり料理が好きじゃないし、ダンナに至っては、単身赴任時代に包丁を持っていかなかったぐらいの「料理面倒だからしない」人なので、ダンナ定年後を考えるとうんざりします~(笑)。