『嘘と人形』/岩井志麻子 〇

一体、私が読んでいるのは、「誰の物語」なんだろうか。物語の目的は?
・・・と、漂流し続けていました、最後の最後まで。
岩井志麻子さんの〈豹コスプレ〉がインパクト大の表紙の単行本、『嘘と人形』

たしかに一時、豹のコスプレしてましたねぇ、岩井さん(今はしてないですよね?たぶん)。
昔、『ぼっけえ、きょうてえ』を読んで「なんちゅう怖い土俗怪談物を書く人なんだ・・・」と震え、『雨月物語』では怖ろしくもあさましい、情念の満ちた語りに引き込まれた作家さんなんですが。
作風とキャラにだいぶ違いがある方だな、とは思ってたんですよ。
そしたら、本作ではキャラの方に寄せて来た・・・と見せかけ、実は読者を遭難させるという(笑)。

冒頭から、〈豹コスプレをした作家・岩井志麻子〉がTVにでているのを、語り手の女が眺めている。
彼女の姉は、頭を切り落とされてその頭は豹のぬいぐるみ人形(ガオちゃん)の頭の中に縫い込まれたという、理猟奇的な殺され方をしたという。
嘘つきで利己的な姉とはかなりの年月音信不通であったが、姉はネットで拙い作品を発表するインチキ芸術家として活動していたようである。
・・・というはずの話が、章を追うにつれ、その妹の元にガオちゃんの表紙のノートが送りつけられ、それに触発された彼女が姉のHPを継承し、そうこうするうちに何故か身辺があやしくなってきて、いつの間にかさらわれていて、全裸で頭に何かをかぶせられた状態で拘束され、TVの岩井志麻子に声をかけられていて・・・。
ところが、章が切り替わると、語り手はインチキ芸術家の離婚していなかった夫に替わっている。彼は、前述は妻だった殺された女の手記だという。妻には妹などおらず、すべては彼女のでっち上げで、最終的には自分こそが芸術家だという。
そうかと思えば、新たな章では「ガオちゃん殺人事件」という書籍に対する告訴文から始まり、その原告は「殺された女の実の妹」で、この書籍を書いたのは岩井志麻子であろう、と高らかに非難している。

で、そこで物語が終わっちゃうんですよ。
・・・え?あれ?一体、私は何を読まされてたんだ・・・?
岩井さ~ん!!このストーリーの主軸はどこにあったんですかぁ~?!!
どう突っ込めばいいんですかぁぁ~!!
・・・見事なまでに、遭難(笑)。救助の手、ナシ。

物語中に出てくるガオちゃん人形、実在するモノなんでしょうか?
私、何故かずーっと「モンチッチ」の豹バージョンで、見えてました。確か、モンチッチのパクリ商品なのか公式商品なのかわからないけど、人魚バージョンも見たことがあるような気がします。

作中に出てくる岩井志麻子ご本人が妙に現実感がなくて、この作品の中の岩井志麻子はフィクションなんだろうか、作者本人はどこまでこの話をリアルに寄せたつもりなんだろうか、いや全くの作り話の中にあえて自分を出してみたのだろうか・・・?と、表紙の豹コスプレ・志麻子を見ながら、相変わらず遭難したままの私。
・・・いやはや、何だったんだろう、この作品(笑)。

(2020.08.13 読了)

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