『彼女の色に届くまで』/似鳥鶏 ◎

似鳥鶏さんは、アンソロジーでちょっと読んだことがあるぐらいで、ほぼ初読みな感じの作家さんです。
青春アートミステリーという紹介文の爽やかさに惹かれて〈読みたい本リスト〉入りしたこの『彼女の色に届くまで』、爽やかでいいですわ~。

将来はプロの画家になることを思い描いている画商の息子・緑川は高校で、天才的な画力を持った美少女・千坂桜と出会う。
美術室に飾られた絵画の損傷事件に巻き込まれた緑川のピンチを、鮮やかな推理で救った桜。
それをきっかけに仲良くなり、父の仕事を手伝いに行った美術館での絵画の損傷事件、2人で進学した芸大の絵画備品倉庫での学生の制作品焼失事件、そして卒業後勤め始めた父の画廊での商品消失事件など、いくつもの事件を解決させていく二人。

周りの人に「何を考えてるかわからない変な人」扱いされている桜は、絵に関することには天才的な才能をを持ち、それ以外の生活能力などはかなり欠落していて、緑川が面倒を見て(恋愛関係ではなく飼育係と称されるところが、ちょっと悲しい)いないと、日常生活に支障をきたすレベル。
美術室に入り浸っている緑川の友人・風戸も、高校生ながらボディビルドに集中しているがために、ちょっと変わった人物で、この3人が高校、大学(風戸は体育大学)、社会人(桜はプロの画家「若鳥味麗」・風戸はスポーツクラブのインストラクター)と成長していっても、変わらずお互いを尊重して仲良く過ごしているのが、とてもいいなぁと思いますねえ。

美術館での損壊事件の時に知り合った、高齢の女性画家・大薗菊子も年齢なんか超越しているかっこいい人で、そんな人に初見で認められる桜のすごさ、さりげなさを装って見せたスケッチブックをスルーされてしまう緑川、2人の実力の差(でも緑川だって芸大にストレート入学できる実力はあるのだ)はちょっと切ないです。
しかし、大薗先生の作ったトリックは、けっこう大掛かりですねぇ。そういうところも、大胆でカッコイイ。
後日「絵筆で描くのが体力的にきつくなってきたから、CG制作をしている」という制作方法の変化も、なんとも〈芸術に関する凄味〉を感じます。若い男の子が好き、ってのもなんか彼女の魅力の一端なんじゃないかという気すらしますね(笑)。

前述の4つの絵画の事件が、実は桜の過去に集約していくという構成が、見事。
その過去があるから、覆面画家「若鳥味麗」は緑川になって欲しい、自分は普通の人間になれるよう頑張る、と桜は言い、思わずそれを引き受けたくなるのだけどでも、何かが違うそうじゃないんだ・・・と違和感を感じる緑川。
プロの画家になりたい、とずっと考えてきた緑川にとってとても魅力的な申し出なのに、それを断って「若鳥味麗をプロデュースする」と宣言し、いろんな案を語り出したのは、絶対「悔し紛れ」とか「嫉妬」とか入ってなかったと思います。
今までずっと、絶対的な天才に憧れと競争心と悔しさと愛おしさが綯交ぜになった複雑な気持ちを抱いてた緑川が、スッキリとした気持ちになって、桜をどう売り出すかの策をノリノリで語り出すのが、読んでるこちらまでスッキリ爽快な気分になりました。
画家と画商が恋人同士なんて、そんな危うい関係は良くないと思いつつ、手を掴まれたら嬉しくなっちゃう緑くん(緑川)、可愛いじゃないですか。

「若鳥味麗」の今後の活躍、そしてそのプロデューサーの緑川、2人を取り巻く人たちがこれからも幸せであるといいな、と思いました。
人気が安定したら、2人には結婚してもらいたいですね、私的には(笑)。

(2020.10.12 読了)

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この記事へのコメント

2020年10月16日 19:36
こんばんは。
似鳥さん、ほぼ初読みだったんですね~^^
10年くらい前にブログの本のお友だちに「米澤さんが好きならきっと好きだと思いますよ」と似鳥さんをオススメされて、それから読むようになりました。多分出ている作品は全部読んでいるんじゃないかな…
この作品はちゃんと覚えていないのですが^^;
ミステリ要素がしっかりしていて、それでいて爽やかな恋愛模様もあって面白かった記憶が^^
多分水無月・Rさんも似鳥さんお好きだと思います~
2020年10月18日 19:36
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
似鳥さんの作品、おススメありがとうございます~。
ぜひほかの作品も読んでみたいと思います!
割と何でもそつなくこなしてる緑川(高校デビュー失敗しちゃってるけど)が、桜に対してだけはしどもどアタフタしてるのが可愛いと思いました。
最後に名プロデューサーに進化したのが、個人的にツボでした。