『おまかせハウスの人々』/菅浩江 〇

あらまあ、私的〈いつもの菅浩江さん(〈ひと〉と〈機械〉の狭間で揺れ動く物語)〉とも、先日読んだ『ゆらぎの森のシエラ』ともちょっと違う印象でしたね。
本作『おまかせハウスの人々』は、割とライトに「ちょっと未来の日本(?)で機械文化が進んだら」という世界を描いた短編集です。
ライトなSFだけど、人の悲哀もしっかり描かれ、ホッとしたりゾッとしたり。なかなか面白かったです。

「純也の事例」
AIの成長を促進するための里親制度で、純也を育てている夕香。
「麦笛西行」
空気を読むことが苦手な嘉継は、とある機器に頼っていた。
「ナノマシン・ソリチュード」
病気治療のために、ナノマシンを体内に入れている小枝子。
「フード病」
義母の死は、私の料理を食べていたから?聡子の悩みを救ってくれたのは、娘の一言。
「鮮やかなあの色を」
離人症状に悩む祐加子は、友人から分けてもらった薬を飲むが。
「おまかせハウスの人々」
家事の一切を全自動でしてくれる住宅に住むモニターたちから、聞き取り調査をするのが仕事の博也。

どの物語も、ちょっと先の日本で、機械が便利になった世界を描いている・・・はずなのだが、便利であると断言するのが少々難しい事態になっていたりする。
あ、冒頭でワタクシ、〈ひと〉と〈機械〉の狭間で揺れ動く物語系ではないって書いたんですけど、揺れ動いてました。本書で揺れ動いてるのは主に人間で、いつも私が菅作品に感じている情緒的なものというより、人間の悲しさ可笑し逞しさが描かれてる感じです。
もちろん、この短編集に情緒が全くないというわけではないです。機械文化そのものより、それに対する人間に焦点が当てられているという感じ。
こういう視点も、好きですね。

それぞれの物語に、それぞれの魅力があったのですが、私に一番響いたのは、「純也の事例」ですね。
子育て経験があるから、夕香の迷いも悩みもわかる部分があるし、〈純也はAI〉ということへの対処の悩みも、なんとなくわかります。そして、別れることの辛さ、別れずにすむことがわかった時の喜びと安堵も。
そして、夕香が〈依存すること〉への怖さも、少しだけ。
AIの普遍化はきっと、私たちの暮らす世界でも必要とされることになると思います。その時、この物語が脚光を浴びるかもしれません。その時のこの物語への評価は、どんなことになるんでしょうね。怖いような、楽しみなような…。

「おまかせハウスの人々」は、単純に「いいなぁ・・・」って思ってしまいました(笑)。私も、おまかせハウスに住んでみたいわ~。家事しなくていいんだったら、何をしようかしら(笑)。読書にあてまくるかなぁ、その時間。いいなぁ。
おまかせハウスの聞き取り調査員・博也の「家族」の秘密、なんとなく想像がついちゃったんですけど、生身のレンタルだったのね。私はこっちも、AIとかバーチャルかと思ってました。
う~ん、私の頭が固いのかもしれないんですけど、生身のレンタルはちょっと…微妙だなぁ。偏見かしら。

人と機械文化の喜悲劇。温かさを持った、淋しさと安堵。
やっぱり、菅さんの作品はいいなぁ・・・と感じました。

(2021.05.21 読了)





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