『鳥籠の小娘』/千早茜(絵:宇野亞喜良)〇 (絵本)

どういう作品か全く知らないまま、図書館で受け取って、絵本だったことに驚きました。
文章は千早茜さん、絵は宇野亞喜良さん、頭部の上半分が鳥籠になっている少女が印象的な表紙の『鳥籠の小娘』
さらりと読める教訓童話のようでいて、何かが引っ掛かる物語でした。

貧しい村で籠作りをしていた老婆がある日拾ってきた、白髪の娘。
娘は老婆から籠作りを学び、そして美しい鳥籠を作り始めるが、老婆は「ひとたび金で安楽を覚えれば戻れなくなる」と鳥籠を売ることを禁じる。
老婆が死期を迎え森に消えた後も、鳥籠を作り続ける娘。
欲に駆られて娘を監禁した村人たち、娘をたびたび訪れては彼女を唆そうとしては失敗してきた魔物。

娘の作る美しい鳥籠は実用的ではなく、〈空っぽであること〉に意味があったのではないでしょうか。
だからこそ、誰もが自分の見たいものだけを見ていた結果を引き受けることになったのではないかと思います。
それは、鳥籠の小娘も同じことだったかもしれません。

魔物ですら、「闇にしか生きられない」ということに囚われていた、ということがとても印象深かったです。
娘に「とても大きな鳥籠のなかにいるのね」と言われ、毛皮を脱ぎ捨てて娘の後を追っていった魔物は、どうなったのでしょう。
最後の挿絵では、目をつぶり倒れ掛かる娘にとびかかる少年の後ろ姿が描かれています。
・・・意味深ですよね。
「娘は、魔物に喰らわれた」とも「魔物は魔物であることを捨て、少年として娘と共に生きていく喜びで彼女に飛びついた」とも、或いは他の解釈も出来そうです。
この挿絵がなければ、「魔物は魔物の皮を脱ぎ、人となって娘と幸せに暮らしました」という最後の一文を、勝手に想像してしまいそうだったのですが。

私も、娘の鳥籠が欲しくなりました。
それは、装飾としてなのか、戒めとしてなのか。
私が本当に見たいものが、見えてくるような気がします。

(2021.08.09 読了)

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この記事へのコメント

苗坊
2021年08月09日 22:40
こんばんは。
絵本という形でしたが、とても内容が濃かったですね。
イラストもとても独特でこの世界観に引きこまれました。
読み終えた後にとても余韻の残る作品でした。
2021年08月10日 19:32
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
あれだけ薄い絵本の中に、人の美しさも醜さもふんだんに描かれていたと思います。
宇野さんのイラストも、独特で印象的でしたね。