『屍鬼』~第3部「幽鬼の宮」/小野不由美 ◎

「村は、死によって包囲されている。」小野不由美『屍鬼』第3部「幽鬼の宮」である。第3部に入り、村におこっている死に事の正体が明らかにされる。村は徐々に「屍鬼」に侵食されていく。伝染病ではない。「起き上がり」なのだ。

「屍鬼」の人を襲う手段、首魁が誰なのか、「屍鬼」の「起き上がり」の過程、何故外場村が「屍鬼」に選ばれたかが、次々と明らかになる。村の医者・敏夫は起き上がりを阻止する(「屍鬼」を完全に殺す)手段を模索する。寺の若御院・静信は「起き上がり」は生き返って来た者であると思うが故に、それを肯定できない。手をこまねいているうちに、村は「屍鬼」の手中に嵌まる。「屍鬼」たちは、外場村での増殖を周到に用意していた。

役場や駐在所の人員をすり替え、村人すら入れ替える。「屍鬼」の存在に気付き、それを狩ろうとする者(ハンター)たちを、陥れる。村の住人が次々と「屍鬼」に襲われ、既に外場村は、正常に機能しなくなっている。「屍鬼」による病院開設、葬儀社の営業開始。全ては、「屍鬼」が襲った人間達の「起き上がり」を簡単に把握し、仲間にするための手段。

「起き上がり」に気付き、「屍鬼」を狩ろうとした、工房の息子・夏野。夏野とともに「起き上がり」を確信した、昭。子供たちですら、容赦なく「屍鬼」の餌食となる。伝染病ではなく「起き上がり」であることにに気付き、何とか出来ないかと模索する医者・敏夫の妻も、「屍鬼」に襲われる。敏夫は、妻の「起き上がり」を画策し、そして、「起き上がった」妻で「屍鬼」の抹殺方法を試行錯誤する。それを知り、非難する静信。

静信の描く小説は、既に物語の中に入り込み、溶け込んでいる。既に、静信の独白といってもいい。静信は、自分が現実社会と相容れないことを感じている。自分は「人」であるのだから、「屍鬼」を排除、殲滅しなくてはいけない、と分かっているのに、それが出来ない。

うわぁ~、怖ッ!!どんどん村が飲み込まれていく。特に第3部は悲惨だ。「屍鬼」の正体が明らかになり、村の人々が次々と襲われていく。全く、救いは見当たらない。ハンターとして阻止抵抗を試みた子供たちが殺され、また「屍鬼」の感情があるが故の「人を襲って血を吸い、仲間にする」事への悔悟や悲しみが、満ち満ちている。

外界から閉ざされ、このまま村は「屍鬼」の支配下に置かれてしまうのか。
対「屍鬼」で最も有力なハンター、敏夫と静信の「屍鬼」に対する気持ちのすれ違い、静信の描く小説で語られる「弟を殺した兄」の分析と独白、物語は終焉に向けて、大きなうねりを生んでいく。

・・・最終部「傷ついた祈り」を読むのが、本当に、怖い。序章で「外場村壊滅」は語られているから、多分村は「屍鬼」に蹂躙され尽くし、そして「屍鬼」のものとなる。「人」は、「屍鬼」に勝てないのか。希望はないのだろうか。

(2007.3.18 読了)

屍鬼〈下〉

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