『屍鬼』~第4部「傷ついた祈り」/小野不由美 ◎

『屍鬼』は、第4部「傷ついた祈り」に入り、物語は大きく移り変わっていく。
村の中で「屍鬼」の存在を認識しているハンター、寺の若御院・静信と医者・敏夫が、「屍鬼」に襲われた。
静信は、自ら乗り込んで。敏夫は、陥れられて。「屍鬼」に対する姿勢の違う2人が、ますます離れていく。村は、どうなるのか。

静信は、「屍鬼」の首魁である沙子のもとを訪れ、自分は「屍鬼」を否定できない、だから、共にいると告げる。今まで以上に静信の描く、カインとアベルの原罪をモチーフにした小説(独白)が、ストーリーに絡んでくる。「屍鬼」は何故、受け入れられないのか、そしてそれを悲しみとするのか。

敏夫は、「屍鬼」に襲われたことを利用して、逆にその存在を村中に暴く。

そこから、「屍鬼」狩りが、始まった。

村中で、屍鬼を狩り始める。それは、陰惨な作業であった。狩らなければ、殺される。狩り尽くさなければ、また屍鬼は現れる。しかも、その屍鬼のほとんどは、元・村人、知人であり隣人であり血族であった。それでも、狩らねば、人間が襲われる。

屍鬼の首魁・沙子も、苦しんでいた。襲わずに済むなら、襲いたくなかった。自分が生きるために、仕方なかった。人間社会から切り離された存在、屍鬼であっても、安心できる場所、帰属できる社会が欲しかった。行き続けたい、そう思うことは許されないことなのか。

屍鬼と人間の攻防は、昼間に動くことが出来ない屍鬼に不利であった。心臓に杭を刺され、日の光に焼け爛れた「屍鬼」の「遺体」が増えていく。物語の最初に村から切り離された地域「山入」にある、屍鬼の集落へ村人達が狩りに向かう。
一人の女性の深い恨み心から、「山入」に火がつけられる。物語の冒頭の火事。乾燥した空気と水のない環境、火は一気に広がる。屍鬼の遺体、外場村の全てを飲み込んで。

生き残った住人は、村外に脱出することが出来た。だが、「外場村」は崩壊した。

静信は「起き上がる」ことなく、「人狼」となった。沙子と村を脱出し、最後の作品である『屍鬼』を発表し、姿を消す。
~~もちろん、静信の書いた『屍鬼』は、「カインの原罪をモチーフに、楽園を追われた兄に屍鬼となって付き従う弟」の物語のほうである。「楽園」は「流刑地」だったのだ。「楽園」で与えられていた神の恩寵は、神が人を信じないことによる、形だけのものであった。兄は弟であり、自らを殺めた罪で追放されたのだ。~~と。

第4部は、怖くはなかった。哀しかった。屍鬼は、元は人だった。人は社会を作る。だが、屍鬼はその性質故に、社会に属せない。その社会である「外場村」は崩壊した。人は、屍鬼との戦いに勝ったのか。村を状態に引き戻すことは出来なかった。
どうすることも出来なかった。それは、最初から、どうにもならないことだったのだから。

感想・・・、書けてませんね。上のあらすじなのか呟きなのか分からない駄文に、水無月・Rの感想が入り混じってます。
あえて言えば、「スゴイ本読んじゃったよ~」ですね。怖くて、哀しい。村の中で若御院と呼ばれ尊敬を集めつつも、世の中と相容れることの出来なかった、自らの内に闇を持つ静信の語る「静信の『屍鬼』」。そして作中現実の「屍鬼」。
読むのは、かなり大変(なんせ2段組な上に、頁数がとてつもなく多い)ですが、読み応えは、かなりあります。大変、よい作品でした。

(2007.3.20 読了)

屍鬼〈下〉

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